妊娠した時の基礎体温は通常とどう違う?高温期の特徴を解説
更新日:

監修者|橋田修医師
本記事は、ひよりレディースクリニック福岡博多の院長で、日本専門医機構認定産婦人科専門医・母体保護法指定医の橋田修医師が監修しています。(2026年9月時点)

基礎体温は、妊娠の可能性に気づくための大切な手がかりの一つです。
本記事では、妊娠した場合と妊娠していない場合で基礎体温がどのように異なるのか、高温期が何日続くと妊娠の可能性があるのか、基礎体温のグラフを確認する際のポイントなどについて、産婦人科専門医がわかりやすく解説します。
目次
妊娠したときは「高温期が長く続く」ことが特徴

妊娠した周期と妊娠していない周期の基礎体温を比べたとき、最も大きな違いとして現れるのが、排卵後の「高温期がいつまで続くか」という点です。
| 妊娠していない周期 | 高温期が12〜14日程度続いたあと、体温が下がり始め、生理が始まります。 |
|---|---|
| 妊娠した周期 | 生理予定日を過ぎても体温が下がらず、高温期が18日以上続くことがあります。 |
高温期が何日続くと妊娠の可能性が高い?
高温期が18日以上続き、生理も始まっていない場合は、妊娠の可能性を考える目安の一つになります。
ただし、高温期が18日以上続いているからといって、必ず妊娠しているとは限りません。
排卵日や高温期の開始日を正確に特定することは難しく、実際の日付と1〜2日程度ずれていることもあるためです。
高温期が続き、生理予定日を過ぎても生理が始まらない場合は、基礎体温だけで判断せず、適切な時期に妊娠検査薬を使用して確認しましょう。
| 高温期の日数 | 考えられる状態 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 1〜10日程度 | 排卵後の高温期が続いている段階 | この時点では、妊娠の有無を判断できません |
| 11〜14日程度 | 一般的な黄体期の長さに相当する時期 | 妊娠している場合と、していない場合の両方が考えられます |
| 15〜17日程度 | 長めですが、黄体期としてあり得る範囲 | 普段より長く続いている場合は、生理予定日と検査薬の使用時期を確認しましょう |
| 18日以上 | 通常の黄体期より長く続いている状態 | 生理が始まっていなければ、妊娠の可能性を考え、適切な時期に検査薬を使用しましょう |
「普段の高温期」と比較することも大切
高温期の長さには個人差があるため、一般的な日数だけで判断せず、過去数周期のご自身のグラフと見比べることも大切です。
確認したいのは、グラフが特定の形に当てはまっているかどうかではなく、「普段なら体温が下がる時期を過ぎても、高温期が続いているか」という点です。
たとえば、普段の高温期が12〜13日程度の方の場合、16日目になっても体温が高い状態であれば、いつもの周期とは異なる変化と考えられます。
一方、普段から高温期が15〜16日程度続く方の場合は、16日目の時点では、いつもの周期との違いが明確とはいえません。
「高温期が何日続いているか」だけでなく、「普段より何日長く続いているか」という視点を持つことで、ご自身の周期の変化に気づきやすくなります。
高温期の日数を数える際の注意点
高温期の日数は、「どの日を高温期1日目とするか」によって、1〜2日程度ずれることがあります。
基礎体温が低温期から高温期へ移り、その後も高い状態が続いた場合は、最初に体温が上がった日を高温期1日目として数えるのが一つの目安です。
ただし、基礎体温の上がり方には個人差があります。
排卵後に体温が大きく上昇する方もいれば、2〜3日ほどかけて緩やかに上昇する方もいます。
緩やかに上昇する場合は、高温期の開始日を1日単位で特定することが難しくなります。
また、基礎体温が上昇し始める日と、実際の排卵日が必ずしも一致するとは限りません。
基礎体温は、排卵が起こった可能性をあとから確認するための目安であり、排卵日を正確に特定できるものではありません。
そのため、「高温期17日目だから妊娠していない」「18日目になったから妊娠している」と、1日の違いだけで判断しないことが大切です。
なぜ妊娠すると高温期が続くのか

妊娠したときに高温期が続くのは、基礎体温を上昇させる黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が維持されるためです。
基礎体温を上昇させるのは黄体ホルモン
排卵後、卵子を送り出したあとの卵胞は、「黄体」という組織に変化します。
この黄体から分泌される黄体ホルモンには、主に次の2つの働きがあります。
- 子宮内膜を、受精卵が着床しやすい状態に整える
- 脳の体温調節中枢に作用し、基礎体温を上昇させる
日本産婦人科医会「女性患者の検査・診断」では、黄体期には基礎体温が高温相となり、低温相と比べて0.3℃以上上昇することが多いと説明されています。
妊娠していない場合:黄体ホルモンが減少して体温が下がる
妊娠が成立しなかった場合、黄体は次第に小さくなって働きを終え、黄体ホルモンの分泌量も減少します。
それに伴って基礎体温が下がり、子宮内膜が剥がれて生理が始まります。
妊娠していない周期で、生理予定日前後に基礎体温が低下するのは、このような仕組みによるものです。
月経周期の長さは、排卵までの卵胞期に左右されるため、周期ごとに変動することがあります。
一方、排卵後の黄体期は、卵胞期と比べて長さが安定しやすい傾向があります。
そのため、「普段より高温期が長く続いているか」は、妊娠の可能性を考える手がかりの一つになります。
妊娠した場合:hCGが黄体の働きを維持する
受精卵が子宮内膜に着床すると、胎盤のもとになる組織から、hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)が分泌され始めます。
hCGには黄体の働きを維持する作用があるため、黄体ホルモンの分泌も続きます。
その結果、生理予定日を過ぎても基礎体温が下がりにくく、高温期が続きます。
なお、基礎体温を直接上昇させているのは、hCGではなく黄体ホルモンです。
hCGが黄体の働きを支え、その黄体から分泌される黄体ホルモンによって、高温期が維持されます。
妊娠時の基礎体温グラフに見られることがある特徴

インターネット上では、妊娠の兆候として、基礎体温グラフの特徴的な形が紹介されることがあります。
しかし、いずれも妊娠したすべての方に現れる変化ではなく、妊娠していない周期にも見られます。
特定のグラフの形だけで妊娠を判断することはできないため、医学的に分かっている範囲を踏まえて、慎重に受け止めることが大切です。
インプランテーションディップ(着床時期の一時的な体温低下)
インプランテーションディップとは、高温期の途中に1日程度だけ基礎体温が下がり、その後、再び高い状態へ戻る変化を指す言葉です。
着床時期について調べた研究では、妊娠が6週以上継続した例の84%で、排卵後8〜10日目に、着床の指標となる尿中hCGが初めて検出されました。
ただし、この研究は着床時期を尿中hCGから推定したものであり、着床時に基礎体温が下がることを示したものではありません。
インプランテーションディップが着床によって起こるという十分な医学的根拠は、現時点では確立されていません。
高温期の途中に一時的な体温低下が見られることは、妊娠していない周期にもあります。
また、妊娠していても、このような体温低下が見られない方は少なくありません。
高温期が二段階に上がるグラフ(いわゆる三相性)
排卵後に基礎体温が上昇し、高温期の途中から、さらにもう一段階高くなったように見えるグラフは、インターネット上で「三相性」と呼ばれることがあります。
妊娠の兆候として紹介されることがありますが、三相性は妊娠を判定するための医学的な基準ではありません。
妊娠していない周期でも三相性に見えることがあり、妊娠していても、低温期と高温期に分かれた通常の二相性のまま経過することがあります。
そのため、グラフが三相性になっていないからといって、妊娠の可能性を否定する必要はありません。
いつもより高温期の体温が高い
「今月はいつもより基礎体温が高い」「37℃を超えているから妊娠しているのでは」と考える方もいらっしゃいます。
しかし、基礎体温は、睡眠時間や測定時刻、飲酒、体調、発熱などの影響を受けます。
そのため、高温期の体温が普段より高いというだけでは、妊娠を判断する十分な材料にはなりません。
また、妊娠していても、基礎体温が37℃を超えないことがあります。
妊娠の可能性を判断するうえで、「37℃以上」という一律の基準はありません。
他の方や一般的な数値と比べるのではなく、ご自身の低温期よりも高い状態が続いているか、普段なら体温が下がる時期を過ぎても高温期が続いているかを確認しましょう。
産婦人科を受診するタイミング

妊娠検査薬が陽性になったとき
妊娠検査薬が陽性になった場合は、産婦人科を受診しましょう。
妊娠検査薬で確認できるのは、尿中にhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)が含まれていることです。
妊娠が子宮内に成立しているか、順調に経過しているかまでは判断できません。
産婦人科では、超音波検査によって、子宮内に胎嚢が見えるかを確認します。
ただし、受診時期が早すぎると、妊娠していても胎嚢がまだ見えず、後日あらためて検査が必要になることがあります。
受診する時期に迷う場合は、最終月経が始まった日と、妊娠検査薬で陽性になった日を確認したうえで、医療機関へお問い合わせください。
関連記事:妊娠検査薬を使うタイミング
出血や強い下腹部の痛みがあるとき
妊娠検査薬が陽性で、出血や強い下腹部痛がある場合は、通常の予約日を待たずに医療機関へご相談ください。
特に、次のような症状がある場合は、子宮外妊娠(異所性妊娠)などの可能性も考える必要があります。
- 片側に偏った強い下腹部痛
- 出血量が多い
- 肩に痛みがある
- めまいやふらつきがある
- 意識が遠のく、または失神する
子宮外妊娠とは、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床する状態です。
多くは卵管に起こり、進行すると卵管が破裂して、腹腔内に出血することがあります。
強い痛みや大量の出血、めまい、失神などがある場合は、基礎体温を確認しながら様子を見るのではなく、速やかに救急医療機関を受診してください。
妊活を続けても妊娠に至らないとき
妊娠を希望し、避妊せずに性交渉を続けても妊娠に至らない場合は、年齢に応じて次の時期を目安に相談をご検討ください。
- 35歳未満の方:妊活を始めて1年程度
- 35歳以上の方:妊活を始めて6か月程度
- 40歳を超える方:妊活期間にかかわらず、早めの相談を検討
これらは、米国生殖医学会(ASRM)の委員会見解でも示されている目安です。
ただし、月経不順や無月経がある方、子宮内膜症など妊娠に影響する病気を指摘されている方、過去に卵巣や卵管の手術を受けた方などは、上記の期間を待たずにご相談ください。
基礎体温を記録している場合は、受診時に数周期分のグラフをお持ちいただくと、月経周期や排卵の傾向を確認する際の参考になります。
ただし、基礎体温を記録するために受診を遅らせる必要はありません。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、妊活を考え始めた方や妊活中の方に向けて、ブライダルチェックと各種オプション検査をご用意しております。
どの検査を受けたらよいか分からない場合も、どうぞお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
高温期17日目に生理が来ました。妊娠していないのでしょうか?
普段と同じ程度の量・期間の出血があり、基礎体温も低温期の水準まで下がった場合は、妊娠していない可能性が高いと考えられます。高温期の長さには個人差があり、妊娠していない周期でも17日程度続くことがあります。普段より高温期が数日長かったとしても、それだけでからだに異常があるとは限りません。ただし、出血量が普段より明らかに少ない、短期間で終わった、強い下腹部痛がある、妊娠検査薬で陽性が出ていたといった場合は、生理以外の出血である可能性があります。このような場合は、早めに産婦人科へご相談ください。
高温期の途中で1日だけ体温が下がりました。着床したのでしょうか?
高温期の途中で基礎体温が1日だけ下がっても、それだけで着床したかどうかを判断することはできません。このような一時的な体温低下は「インプランテーションディップ」と呼ばれることがありますが、着床との関係を示す十分な医学的根拠は、現時点では確立されていません。また、基礎体温は、睡眠時間や測定時刻、室温などの違いによっても変動します。そのため、体温が1日下がったことだけで、妊娠の可能性が高いとも低いとも判断できません。その後も高温期が続くかを確認し、適切な時期に妊娠検査薬を使用しましょう。
妊娠している場合、基礎体温はいつまで高いままですか?
妊娠すると、基礎体温は妊娠初期に高い状態が続き、妊娠12〜14週頃を目安に、ゆるやかに下がり始めることがあります。ただし、体温が下がり始める時期や変化の仕方には個人差があります。妊娠中に基礎体温が少し下がったとしても、その変化だけで妊娠の経過に問題があると判断することはできません。妊娠の経過は、基礎体温ではなく、超音波検査などの結果から確認します。妊娠が確認されたあとは、医師から指示されている場合を除き、基礎体温を測り続ける必要はありません。
高温期が続いているのに妊娠検査薬が陰性なのはなぜですか?
妊娠検査薬を使用する時期が早いと、妊娠していても尿中のhCGが十分に増えておらず、陰性になることがあります。また、排卵が予想より遅れていた場合や、高温期の開始日を実際より早く数えていた場合は、ご自身が考えているよりも早い時期に検査している可能性があります。まずは、お手持ちの妊娠検査薬の添付文書で、使用できる時期をご確認ください。陰性の判定から約1週間が経過しても生理が始まらない場合は、あらためて検査をするか、産婦人科へご相談ください。










