性行為後に生理は誘発されるのか?
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
産婦人科専門医

性行為後に生理が来ると、「性行為がきっかけで生理が誘発されたのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし、医学的には性行為によって生理が誘発される・早まるという明確な根拠はありません。ただし、性行為後に出血が見られることはあり、その原因はさまざまです。
本記事では、性行為後の生理や出血の原因5つ、婦人科受診の目安、検査の流れについて、詳しく解説します。
目次
性行為後の生理はいつ来るのか
生理のタイミングは、性行為の有無にかかわらず女性のホルモンバランスによって決まります。
一般的に生理周期は25~38日程度とされ、排卵日の約14日後に生理が始まります。
そのため、性行為をしたからといって、生理が早まったり遅くなったりすることは基本的にありません。
ただし、性行為による精神的ストレスや体調の変化がホルモンバランスに影響を与え、生理周期がずれる可能性はあります。
性行為後に生理が誘発される?
結論を述べると、性行為によって生理が誘発されることはありません。
生理は、子宮内膜が剥がれ落ちることで起こる現象です。この過程はホルモンによって調整されているため、性行為そのものがホルモンバランスに直接影響を与え、生理を引き起こすことはないのです。
性行為後に生理が来たと感じるケース
以下のような理由で、「性行為が生理を誘発したのでは?」と感じることがあります。
性行為による軽い出血
子宮頸部が刺激されたり、膣壁に小さな傷ができたりすることで出血が起こることがあります。
生理前のタイミングだった
たまたま生理直前に性行為をしたため、生理が早まったように感じることがあります。
ホルモンバランスの乱れ
ストレスや生活習慣の変化により、ホルモンバランスが乱れ、生理周期が変動することがあります。
性行為によって生理が誘発されることはありませんが、性行為後に出血することはあります。ここからは、性行為後の出血について、詳しく解説します。
性行為後に出血する原因5つ

性行為後に出血がみられる場合は、主に以下の5つの原因が考えられます。
1.排卵期出血
生理周期の中間期(排卵期)には、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が一時的に減少する影響で、軽い出血が生じることがあります。
この場合、性行為が出血の直接の原因ではなく、排卵に伴う自然な現象です。
排卵期出血の特徴
- 出血量はごく少量で、1~2日ほどで自然に収まる
- 色はピンク色や茶色っぽいことが多い
- おりものに血が混じる程度のこともある
排卵期出血自体は心配のない現象ですが、出血が長引く・繰り返し起こる場合は、ホルモンバランスの乱れの可能性もあるため、一度婦人科を受診すると安心です。
2.子宮頸部の炎症やポリープ
子宮頸部に炎症(子宮頸管炎)やポリープがあると、性行為の刺激で出血することがあります。特に子宮頸管ポリープは、少しの刺激でも出血しやすいため、繰り返し出血が起こることがあります。
子宮頸管炎の主な原因には、細菌やウイルスの感染(クラミジア・淋菌などの性感染症、細菌性膣炎)、子宮内の異常な分泌物の影響などが考えられます。
炎症が進行すると、おりものの異常や下腹部痛を伴うこともあります。
子宮頸管ポリープは良性のことがほとんどですが、放置すると出血が続くことがあるため、必要に応じて除去することが推奨されます。
3.膣や子宮頸部の傷
性行為中の摩擦や刺激によって、膣壁や子宮頸部に小さな傷ができ、出血することがあります。
特に、十分な潤いがない状態での性行為では、膣が傷つきやすくなります。
傷がつきやすい要因
- 潤滑不足(前戯が不十分、加齢による膣の乾燥など)
- 強い刺激や摩擦(長時間の性行為、無理な挿入など)
- 膣の炎症がある場合(カンジダや細菌性膣炎など)
軽度な傷であれば自然に治りますが、出血が続く場合や、ヒリヒリした痛み・違和感があるときは、婦人科へご相談ください。
4.性病(性感染症)
クラミジアや淋菌などの性感染症に感染すると、子宮頸部や膣に炎症が起こり、性行為の刺激で出血しやすくなることがあります。炎症が進行すると、以下のような症状を伴うことがあります。
- おりものの異常(黄緑色・泡状・悪臭を伴うなど)
- 下腹部の痛みや違和感
- 排尿時の痛みや不快感
性感染症は、無症状のことも多く、気づかないうちに進行する場合があります。
性行為後に出血が頻繁に起こる場合や、おりものの異常、痛みがある場合は、早めに婦人科で検査を受けましょう。
性病について詳しく知る5.着床出血
妊娠初期に起こる「着床出血」と、性行為後の出血を混同することがあります。
着床出血は、受精卵が子宮内膜に着床する際に起こる軽い出血のことです。通常、生理予定日の1週間前から生理予定日頃に見られ、持続時間は1~3日程度と短いことが特徴です。
着床出血の特徴
- 出血量は少なく、薄いピンク色や茶色
- 生理より短期間で終わる(1~3日程度)
- 生理痛のような強い痛みを伴わない
生理期間や色がいつもと違うと感じたときは、妊娠の可能性も考えられるため、市販の妊娠検査薬で確認してみましょう。

ミレーナがあると、性行為後に出血しやすいのですか?

いいえ、通常ミレーナを挿入していても、性行為後に出血しやすくなることはありません。ただし、もし出血が続く場合はミレーナの位置がずれていたり、他の要因が考えられます。その場合は、一度受診していただくと安心です。
性行為後の出血で病院に行く目安
性行為後の出血が一度きりで軽い場合は、様子を見ても問題ないことが多いですが、以下のような場合は婦人科を受診することをおすすめします。
- 性行為後の出血が繰り返し起こる
- 出血量が多く、生理期間以外で生理のような出血が続く
- おりものに異常(悪臭、膿のような状態)がある
- 性交痛や下腹部痛がある
- 妊娠の可能性があるのに出血している
特に、性感染症や子宮の異常が疑われる場合は、早めに検査を受けることが重要です。
いつもと違うと感じたら、お一人で悩まずに、当院までお気軽にご相談ください。
婦人科での検査の流れ
Step1
問診
主に、出血の開始時期、色や量、生理周期の変化、避妊の有無、下腹部痛やおりものの異常などをお聞きします。もし、出血以外にも気になる症状(痛みや違和感など)があれば、どんなことでもお申し出ください。
Step2
診察・検査
医師が問診の内容をもとに、必要な診察や検査を行います。主な検査には、以下のようなものがあります。
・視診(外陰部・膣・子宮頸部の状態を確認)
・超音波検査(エコー検査)
・性感染症検査(クラミジア・淋菌などの感染を確認)
・子宮頸がん検査(細胞診)Step3
診断・治療
検査結果をもとに、医師が出血の原因をご説明し、適切な治療をご提案します。
軽い炎症には抗炎症剤、感染症が確認された場合は適切な薬を処方します。子宮頸管ポリープがある場合は、外来で簡単に除去できることもあります。また、緊急性のある異常が見つかった場合は、速やかに適切な治療を行い、早期対応を進めます。Step4
フォローアップ
診察後も症状の経過を確認し、必要に応じて追加の検査や治療を行います。症状が改善しない場合や、不安があるときはお気軽にご相談ください。
また、定期的な婦人科検診はとても大切です。特に、子宮頸がん検査や性感染症検査は、早期発見・早期治療につながります。
性行為後の生理に関するご相談は婦人科へ
ひよりレディースクリニック福岡博多では、性行為後の出血や生理に関するご相談を承っています。
婦人科の受診が初めての方や、不安を感じている方も、安心して受診いただけるよう、一人ひとりの状況に寄り添いながら丁寧に診察いたします。
性行為後の出血や生理について気になることがありましたら、お一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。
性行為後の出血でよくあるご質問
性行為後にすぐ生理が来た場合、妊娠の可能性はありますか?
いいえ、通常、性行為後に生理が来た場合は妊娠の可能性は低いです。ただし、出血が生理ではなく、不正出血や着床出血の可能性も考えられます。もし、今回の出血がいつもと違うと感じたり不安がある場合は、まず妊娠検査薬で確認することをおすすめします。
性行為後に少し出血しましたが、病院に行くべきですか?
性行為後に一度だけ軽い出血があり、その後異常がなければ、様子を見ても問題ないことが多いです。しかし、出血が繰り返し起こる場合や、痛み、異常なおりもの(悪臭や膿のような状態)を伴う場合は、婦人科へご相談ください。
性行為後の出血は、生理とどう見分ければ良いですか?
生理と性行為後の出血は、出血の量、持続時間、色の違いで見分けることができます。生理は通常3~7日間続き、2日目頃に出血量が増えます。経血の色は鮮血から徐々に茶色へ変化し、粘り気があるのが特徴です。一方、性行為後の出血は少量で、数時間~1日程度で収まることがほとんどです。血の色は鮮血やピンク色が多く、経血のような粘り気はありません。いつもと違う出血が続く場合は、念のため婦人科を受診しましょう。
性行為後の出血が続く場合、どんな病気の可能性がありますか?
性行為後の出血が続く場合、子宮頸部の異常や感染症、ホルモンバランスの乱れが原因として考えられます。 出血が1週間以上続く、量が増える、痛みを伴う場合は、お早めに婦人科を受診してください。
性行為後に生理が遅れたのですが、何が原因ですか?
性行為後に生理が遅れる場合、ホルモンバランスの乱れや妊娠の可能性が考えられますが、ストレスや体調の変化が影響することもあります。生理予定日を1週間以上過ぎても生理が来ない場合は、妊娠検査薬で確認するか、婦人科にご相談ください。