クラミジアと淋病の違いとは
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
産婦人科専門医

本記事では、無症状のまま感染が広がることも多く、併発するケースも少なくない「クラミジア」と「淋病」について、原因となる菌の違い、検査方法、治療法、そして放置によるリスクまで、産婦人科専門医の視点からわかりやすく解説します。
目次
クラミジアと淋病の違いとは【比較表有】
クラミジア感染症と淋病(淋菌感染症)は、どちらも細菌によって引き起こされる性感染症です。
主に性器や咽頭(のど)、肛門・直腸などの粘膜に感染し、性行為を通じて広がります。以下に、クラミジアと淋病の特徴を比較表でまとめました。
クラミジア | 淋病 | |
---|---|---|
原因菌 | クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis) | 淋菌(Neisseria gonorrhoeae) |
感染部位 | 性器、喉、直腸など | |
特徴 | 感染者数の多い性感染症の一つで、特に若い世代に多く見られます。無症状のことが非常に多く、知らないうちに感染が広がってしまうリスクがあります。 | クラミジアと同様に感染者数が多いですが、クラミジアよりも症状が強く出る傾向があります。(無症状のケースもあります) 近年、薬剤耐性を持つ淋菌が増加しており、治療が難しくなるケースも報告されています。 |
症状の違いと共通点
クラミジアと淋病は、感染部位や性別によって症状が異なりますが、共通点も多く、そのために自己判断が難しい性感染症です。
以下で、それぞれの症状と、共通点について解説します。
クラミジアの症状(女性)
クラミジアは、子宮頸管への感染が最も多いですが、尿道、直腸、咽頭(のど)にも感染することがあります。クラミジアは、以下のような症状が挙げられます。
- おりものの増加や変化(水っぽい、黄色っぽいなど)
- 性交時の出血や不正出血
- 排尿時の痛み・違和感
- 下腹部の痛みや違和感
- 喉の痛みや違和感
ただし、これらの症状が一切出ない「無症状」のケースが非常に多く、気付かないまま感染を広げてしまうことがよくあります。
国立健康危機管理研究機構によると、妊婦検診において、正常妊婦の3〜5%がクラミジア感染を認めたとの報告があり、自覚症状のない感染者の多さが指摘されています。

無症状だと、自分では気付けないですよね...

そうなんです。実際に、ブライダルチェックを受けて初めてクラミジアに感染していたことが分かり、驚かれる方もいらっしゃいます。「まさか自分が」と思われるかもしれませんが、性交渉の機会がある方は、子宮頸がん検診などのタイミングで一緒に検査を受けておくと安心です。
淋病の症状(女性)
淋病も、子宮頸管や尿道への感染が多く、クラミジアと同様に直腸や喉にも感染します。
淋病の症状は、以下の通りです。
- 黄色や黄緑色の膿のような粘り気のあるおりものの増加
- 排尿時の強い痛み(焼けるような感覚)
- 不正出血や性交時の出血
- 下腹部の痛み
- 喉の痛みや腫れ、発熱
ただし、淋病も無症状で経過するケースがあり、特に女性では気付かれにくい傾向があります。
そのため、感染していても、気付かず長期間放置されてしまうことが珍しくありません。
クラミジアと淋病の共通点
クラミジアと淋病に共通する特徴は、「無症状であることが多い」ことと、「感染部位が似ている」という点です。
症状がない=感染していないとは限りません。
自覚症状がなくても、性交渉の機会がある方は、症状の有無にかかわらず定期検査を受けることを推奨します。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、無症状の方でも検査を受けていただけますので、お気軽にご相談ください。
クラミジアと淋病に同時感染することも

クラミジアと淋病は、どちらも性交渉によって感染する性感染症です。
そのため、一方に感染している場合、もう一方にも同時に感染している可能性(=重複感染)が高いことが知られています。
重複感染の場合は、以下のようなリスクが高まります。
- 症状が強くあらわれることがある
- 免疫力の低下や体調によっては治療が複雑になる可能性がある
- 骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こし、不妊や慢性的な下腹部痛につながることもある
このようなリスクを防ぐためにも、どちらかの性感染症が疑われる場合は、もう一方の検査もあわせて受けておくことが大切です。
放置するとどうなる?合併症と将来の影響
クラミジアや淋病は、適切な治療を受ければ完治する性感染症です。
しかし、無症状のまま放置されると、深刻な合併症を引き起こし、将来的な妊娠や出産に大きな影響を及ぼすことがあります。
以下で詳しく見ていきましょう。
女性の代表的な合併症
骨盤内炎症性疾患(PID:Pelvic Inflammatory Disease)
クラミジアや淋病の感染が、子宮頸管から子宮、卵管、卵巣へと広がることで発症する炎症性疾患です。
強い下腹部の痛みや発熱、不正出血、悪臭を伴うおりものなどの症状がみられますが、初期には症状が軽かったり、まったくない場合もあります。
この疾患を放置すると、以下のような重大な合併症につながることがあります。
不妊症 | 卵管に炎症が起きると、癒着や閉塞が生じて卵子の通り道がふさがれ、妊娠しにくくなることがあります。 |
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子宮外妊娠 (異所性妊娠) | 受精卵が卵管内など子宮以外の場所に着床してしまう状態で、卵管が損傷しているとそのリスクが高まります。緊急手術が必要になるケースもあります。 |
慢性骨盤痛 | 骨盤内に炎症が残ることで、下腹部の痛みが長期間続くことがあります。 |
肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)
骨盤内の炎症が肝臓の周囲にまで広がることで、右の肋骨の下(右季肋部)に痛みが出ることがあります。
発症頻度は高くありませんが、クラミジア感染が原因で生じる可能性のある合併症です。
妊娠・出産への影響とリスク
妊娠中にクラミジアや淋病に感染していると、母体だけでなく、赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、以下のようなリスクが高まることが知られています。
- 流産や早産のリスク
- 新生児結膜炎(淋菌性、クラミジア性)
- 新生児肺炎(クラミジア性)
感染に気づかないまま妊娠が進行すると、出産時に赤ちゃんへ感染が広がる可能性もあります。
そのため、妊娠を希望されている方や妊娠中の方は、できるだけ早い段階での検査・治療がとても大切です。
クラミジアと淋病の検査方法

ひよりレディースクリニック福岡博多では、クラミジアおよび淋病の検査として、尿検査および膣分泌物(おりもの)検査を行っています。
感染の可能性がある部位に応じて、適切な検査方法をご提案いたします。
検査は短時間で終了し、痛みもほとんどなく、初めての方でも安心してお受けいただけます。
性交渉のあとに気になる症状がある方はもちろん、無症状で不安がある場合でも、ぜひお気軽にご相談ください。
症状があるかどうかに関わらず、早めの受診が安心につながります。
クラミジアと淋病の治療方法
クラミジアや淋病の検査で陽性となった場合は、抗生物質による治療を行います。
クラミジア感染症では、内服薬での治療が中心となり、1回の服用で効果が期待できる薬剤が使用されることもあります。
一方、淋病は近年、抗生物質に対する耐性菌の増加が報告されており、症状や感染の部位に応じて、注射や点滴による治療が選択されるケースもあります。
そのため、陽性が出た場合は、患者さまの状態に応じて適切な治療法を選択することが大切です。
なお、インターネット通販などで購入できる性病治療薬には、ご自身の体調や感染の種類に合わないものが含まれていることもあります。
誤った治療は症状を悪化させる可能性もあるため、自己判断で使用せず、必ず医療機関で適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
治療の注意点
医師の指示通りに薬を服用する
症状が改善したと感じても、指示された期間、薬を飲み切ることが重要です。途中でやめてしまうと、菌が完全に死滅せず、再発したり薬剤耐性菌を生み出す原因になったりします。
パートナーも一緒に検査・治療する
治療中にパートナーから再感染したり、無症状のパートナーが他の人に感染を広げたりするのを防ぐため、性行為のパートナーも同時に検査を受け、必要であれば治療を受けることが非常に重要です。
治療中は性行為を控える
治療期間中は、再感染を防ぎ、パートナーへの感染を広げないためにも、性行為は控えるようにしてください。
治癒確認検査を行う
治療後2〜3週間を目安に、治癒しているかを確認するための再検査(治癒確認検査)を受けることをお勧めします。
クラミジア・淋病の再発を防ぐには?
クラミジアや淋病は、適切な治療を受ければ完治できる性感染症です。
しかし、一度治ったからといって安心はできません。治癒後でも再び感染することがあり、特にパートナーとの関係やライフスタイルによっては再感染のリスクが高くなる場合もあります。
再発・再感染を防ぐためには、日々のちょっとした心がけがとても大切です。以下のポイントを意識してみましょう。
1.コンドームの正しい使用
性感染症を防ぐには、まずはコンドームを正しく使うことが基本です。
膣だけでなく、口や肛門を介して感染することもあるため、性行為の種類にかかわらず、毎回使用する習慣をつけましょう。
なお、ピルやミレーナなどの避妊方法を行っていても、性感染症の予防には効果がないため、コンドームの併用が大切です。
2.定期的な検査
性感染症は自覚症状がないまま進行することが多く、「症状がない=感染していない」とは限りません。
新しいパートナーとの性行為があったときや、不安な行為があった場合は、念のため検査を受けておくと安心です。
特に複数のパートナーがいる方は、年に1回以上の定期検査が推奨されます。
3.パートナーとのコミュニケーション
性感染症を防ぐためには、信頼できる関係性がとても大切です。
感染について話すのは勇気が要ることかもしれませんが、お互いの健康を守るためには必要なことです。
また、一緒に検査を受けることで、安心して関係を続けることができるだけでなく、信頼感を深めるきっかけにもなります。
4.治療後の注意
症状が落ち着いても、まだ完全に治ったとは限りません。
医師が「完治」と判断するまでは、性行為は控えることが大切です。
自己判断で再開してしまうと、パートナーに感染を広げたり、再発してしまう可能性があります。
安心して過ごすためにも、治療後は医師の指示にしっかりと従いましょう。
性病検査は婦人科へ
「なんとなく気になる症状がある」「症状はないけれど、もしかして感染しているかも…」といったご不安を感じている方も、どうぞお一人で抱え込まず、早めにご相談ください。
クラミジアや淋病は、早い段階で見つけて適切な治療を受けることで、将来の妊娠や健康への影響を最小限に抑えることができます。
反対に、放置してしまうと下腹部の痛みが続いたり、不妊などにつながるリスクもあるため、少しでも心配なことがあればご受診をおすすめします。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、患者さまのプライバシーを大切にしながら、安心してご相談いただける環境を整えています。
どんなことでもお気軽にご相談ください。