PMSにお悩みの方へ|症状と対処法を解説
更新日:

監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
産婦人科専門医

ひよりレディースクリニック福岡博多は、PMS症状についてご相談いただける婦人科です。
本記事では、PMSの概要や始まる時期、症状のセルフチェック、ピルや漢方薬による対処法を徹底解説します。
目次
PMSとは
PMSとは、生理前に現れる心身の不調の総称です。医学的には「月経前症候群」と呼ばれます。
日本人女性の約70〜80%がPMSの症状を自覚しており、そのうち約5%の女性は日常生活に支障をきたすほどの重い症状を経験していると言われています。
参考:日本産科婦人科学会
PMSは、生理前に「心の症状」や「身体の症状」 が現れ、生理が始まると自然に軽快(または消失)するという特徴があります。症状の現れ方には個人差があり、同じ人でも月によって重さが変わることがあります。
PMSがつらいと感じる方は、 ご自身に合った対処法を見つけることが大切です。
PMSはいつから始まるのか
PMSの症状は、排卵後(黄体期)に始まり、生理の開始とともに軽快または消失することがほとんどです。
これは、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の変動によって引き起こされます。
具体的なホルモンの変動とPMSの影響を、以下の流れで解説します。
排卵期(生理開始から約14日後)
- エストロゲンとプロゲステロンが増加し始める
- 体調は比較的安定している
黄体期前半(排卵後3〜7日)
- ホルモンの分泌がピークを迎える
- 気分の波を感じても、症状はまだ軽い
黄体期後半(月経前3〜10日)
- 血液中のエストロゲンとプロゲステロンの値が急激に低下する
- 精神的、身体的なPMS症状が顕著になる
月経開始
- ホルモン変動が落ち着く
- PMS症状が軽快または消失する
PMS症状のセルフチェック
PMSの症状は心と身体の両方に影響を与えます。症状には個人差があり、月によって変動することもあります。
以下に当てはまるものがあるか、チェックしてみましょう。
心の症状
- イライラしやすくなる
- 気分が落ち込みやすく、抑うつ感が強くなる
- 集中力が低下する
- 些細なことで不安になる
- 睡眠の質が悪化する(不眠・過眠)
- 普段は気にならないことが、不快に感じることが増える
心の症状が生じる理由
PMSの時期には、脳内のセロトニン(幸せホルモン)が減少し、感情のコントロールが難しくなることが原因とされています。
また、ホルモンの変動が自律神経に影響を与え、不眠などの症状を引き起こすこともあります。
身体の症状
- のぼせ・ほてりを感じる
- 過食・偏食がある
- 吐き気やめまいがある
- 頭痛・腹痛・腰痛がひどくなる
- むくみが強く、体がだるい
- 乳房が張って痛みを感じる
- 便秘や下痢になりやすい
身体の症状が生じる理由
女性ホルモン(プロゲステロン)の変動により、体内の水分バランスが乱れるため、むくみやだるさが発生します。
また、消化器系の働きにも影響を与え、便秘や下痢が起こりやすくなります。
PMSがひどいとお悩みの方の特徴
PMSがひどくなると、身体的な症状だけでなく、気持ちの面でも大きな負担がかかり、強いストレスを感じやすくなります。
以下のような特徴に当てはまる方は、PMSが重症化している可能性があります。
1.日常生活に影響している
- 生理前になると情緒不安定になり、人間関係に支障が出る
- 頭痛・めまい・吐き気・強い倦怠感がひどく、日常生活がつらい
- 睡眠の質が極端に悪くなる(不眠・過眠)
- 普段気にならないことが気になり、些細なことで落ち込む
2.PMSに対する理解を得られず、孤独を感じている
- 親しい人に「性格の問題」と誤解される
- 「ただの甘え」だと思われ、相談しづらい
- 自分の気分の波に振り回され、自己嫌悪に陥る
3.PMS症状をコントロールできず、不安を抱えている
- 「どうしようもない」という無力感を抱えている
- 何を試しても効果を感じられず、不安になる
- PMSに関する情報が多すぎて、何を試せばいいのか分からない
上記の症状に当てはまる方は、ぜひ一度婦人科へご相談ください。適切な治療を受けることで、PMS症状の改善が期待できます。
PMSは30代からひどくなる?加齢による影響

30代になり、PMSがひどくなった気がします。

はい、「30代になってPMSがひどくなった」と受診される方は少なくありません。この年代の方は、ホルモンバランスの変化や生活習慣の影響を受けやすく、以前よりPMSの症状が悪化することがあります。その背景には、以下のような要因が関係しています。
ホルモンバランスの変化
加齢によってエストロゲンとプロゲステロンの分泌バランスが変化し、ホルモンの変動がより不安定になることがあります。その結果、PMSの症状が以前より強く出やすくなる傾向があります。
ストレスの影響が大きくなる
仕事や家庭の負担が増えることでストレスが蓄積しやすくなり、自律神経が乱れるようになります。
これにより、ホルモンバランスの乱れがさらに悪化し、PMSの症状が重くなるケースがあります。
生活習慣の変化
20代の頃と比べて、運動量の減少や睡眠の質の低下が影響を与えることがあります。
特に、運動不足や睡眠不足は、ホルモンや自律神経の働きを不安定にし、PMSを悪化させる可能性があります。
PMSは年齢とともに変化するため、ご自身に合ったケアを見つけることが大切です。次の章では、PMSの症状を軽減するための具体的な方法を詳しく解説します。
つらいPMSの対処法
PMSの症状を軽減するためには、ホルモンバランスを整えることや、症状に合わせた治療法を選ぶことが大切です。
特に、ピルや漢方薬は、PMSの改善に効果が期待できる代表的な治療法です。
PMSにはピルがおすすめ
低用量ピルやミニピルは、PMSの主な原因であるホルモンの変動を抑えることで、症状を軽減する効果が期待できます。
ピルのメリット
- PMSの症状をトータルで軽減
- 生理周期が安定し、生理前の体調管理がしやすくなる
- 生理痛の軽減にも効果的
ピルを服用するには、医師の処方が必要です。副作用のリスクや体質との相性もあるため、ご自身に合った種類を選ぶことが大切です。
PMSにおすすめの漢方薬
漢方薬は、体質や症状に合わせて選べるため、「ピルの副作用が気になる」「ホルモン治療以外で改善したい」という方に向いています。
PMSで処方される漢方薬の例
加味逍遥散 (かみしょうようさん) | イライラ・不安・抑うつなどの精神的な症状に |
---|---|
当帰芍薬散 (とうきしゃくやくさん) | 冷え・むくみ・貧血・頭痛に |
桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん) | 生理不順・のぼせ・生理痛が強い方に |
抑肝散 (よくかんさん) | 感情の起伏が激しく、怒りっぽくなる方に |
漢方薬のメリットと注意点
体質に合えば、副作用が少なく、PMSの根本的な改善につながる可能性がありますが、即効性は期待できません。そのため、継続的に服用することが大切です。
また、ご自身に合った漢方を選ぶことが重要なため、婦人科や漢方外来で医師に相談しながら決めると安心です。
ミレーナはPMSに効く?

ミレーナは、子宮内に挿入するホルモン放出型の避妊具ですが、生理症状の改善にも効果が期待できます。
ミレーナの効果
- 子宮内に直接ホルモンを放出し、ホルモン変動を抑える
- 生理の量が減り、生理痛が軽減される
- ピルのように飲み忘れの心配がない
ミレーナには「レボノルゲストレル」という黄体ホルモンが含まれており、これが子宮内膜に直接作用します。
その結果、子宮内膜が薄くなり、生理の量が減少し、生理痛が軽減されることがあります。また、受精卵の着床を防ぐことで、避妊効果も期待できます。
ただし、ミレーナはPMSの治療を主目的としたものではありません。
PMSの症状や重症度、患者さまのライフスタイルを総合的に考慮し、ミレーナが適しているかどうかを医師と相談することが大切です。
PMSは病院に行くべき?
PMSの症状は人それぞれですが、日常生活に支障をきたすほどつらい思いをされている方も少なくありません。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、日常生活の中で「これはPMSかも?」と感じたことがある方に、婦人科の受診をおすすめしています。
PMSは、適切な治療を受けることで症状を和らげ、より快適に過ごせる可能性があります。
また、「漢方薬を飲んだけど効果がなかった」「ピルで改善しなかった」 という方もいらっしゃいます。その場合は、薬の種類を変更することで症状が改善するケースもあります。
婦人科を受診するのは、少し勇気がいることかもしれませんが、PMSのつらさをお一人で抱え込む必要はありません。
当院では、PMSの症状を和らげ、少しでも快適に過ごせるようサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
PMSのよくあるご質問
PMSは婦人科と心療内科、どっちを受診すべきですか?
PMS(月経前症候群)は、一般的に婦人科での診察が推奨されます。ただし、イライラや抑うつ、不安感など精神的な症状が特に強い場合(PMDDの可能性がある場合)には、心療内科や精神科での治療が適していることもあります。どちらを受診すべきか迷われる場合は、まずは婦人科を受診することをおすすめします。
PMSの悩みで病院に相談してもいいのでしょうか。
はい、ぜひお気軽にご相談ください。「PMSかもしれないけれど、受診するほどではない」と我慢してしまう方は少なくありません。ですが、適切な治療を受けることで症状が和らぎ、日常生活が過ごしやすくなることがあります。実際に、「もっと早く相談すればよかった」と話す方も多くいらっしゃいます。お悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
PMSの治し方はありますか?
現時点では、PMSを完全になくす方法はありませんが、適切な治療やセルフケアによって症状を軽減し、上手に付き合っていくことが可能です。ホルモンバランスを整えるピルや漢方薬の服用、生活習慣の改善(食事・運動・ストレス管理) など、ご自身に合った方法を見つけることで、PMSのつらさを和らげることができます。
PMSは病気なのですか?
PMSは、医学的に「月経前症候群」と呼ばれますが、一般的な病気とは異なり、命にかかわるものではありません。「病気」と聞くと不安に感じるかもしれませんが、多くの女性が経験する生理的な症状の一つであり、適切なケアや治療によって症状を軽減できる可能性があります。
PMSとPMDDは何が違うのですか?
PMS(月経前症候群)は、生理前に心身の不調が現れる症状の総称です。一方、PMDD(月経前不快気分障害)は、PMSの中でも特に精神的な症状が重く、日常生活に大きな影響を及ぼす状態を指します。PMDDでは、抑うつ・強いイライラ・不安・情緒不安定などの精神症状が顕著で、仕事や人間関係に支障をきたすことがあります。 PMSの症状が特に精神面に強く表れ、生活に支障を感じる場合は、婦人科や心療内科での相談をおすすめします。