1日だけ生理がきた...妊娠や病気の可能性と検査方法とは
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
産婦人科専門医

生理が1日だけで終わったら、「妊娠の兆候?」「何か病気のサイン?」と心配になることもあるかもしれません。本記事では、産婦人科専門医の視点から「1日だけの生理」の背景にある可能性と、婦人科での検査方法などについて解説します。
目次
1日だけで終わる生理…これって異常?
生理は、通常3〜7日ほど続くのが一般的です。
それが1日で終わってしまうと「いつもと違う…」「何か身体の異常?」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
生理期間は、体調やストレス、生活リズムの乱れなどによって一時的に変化することがあります。
そのため、生理が1日で終わったとしても、すぐに異常と判断する必要はありません。一時的な変化として経過を見るケースも多いです。
ただし、「1日で終わる生理」が繰り返し続く場合や、吐き気・腹痛・おりものの変化などの体調変化を伴う場合には、妊娠や婦人科系の疾患の可能性も考えられます。
そのようなときは、早めに婦人科を受診し、専門的な視点で確認することが大切です。
生理が1日で終わる原因

生理が1日で終わるときに考えられる主な原因は、次の4つです。
以下で、それぞれの原因について詳しく解説していきます。
1.一時的な体調の変化やストレスによる過短月経
「過短月経(かたんげっけい)」とは、生理の期間が通常よりも極端に短い状態を指します。
その中でも、1日で生理が終わってしまう最も一般的な原因として考えられるのが、一時的な体調の変化やストレスによるものです。
生理は、脳の視床下部と下垂体、そして卵巣が連携しながら、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンを調整することで成り立っています。
このホルモンの分泌バランスがわずかに乱れるだけでも、生理周期に影響が出るほど、非常に繊細な仕組みです。
強い精神的ストレス
仕事での大きなプレッシャー、人間関係の悩み、受験や引越しなどの環境の変化など、心に大きな負担がかかることで、脳からのホルモン分泌の指令がうまく伝わらなくなることがあります。
生活リズムの乱れ
不規則な食生活、睡眠時間の不足、昼夜逆転の生活などは、自律神経のバランスを崩し、結果としてホルモンバランスにも影響を及ぼします。
急激な体重変化
特に過度なダイエットによる急激な体重減少は、体脂肪率の低下を通じてホルモンバランスに直接的な影響を与え、生理が短くなったり、止まってしまったりする原因となります。
多くの場合、これらの要因が解消されれば、次の周期からは通常の生理に戻ることが期待できます。しかし、もしこのような状態が3か月以上繰り返される場合は、婦人科へご相談ください。
2.子宮内膜が薄くなっている
生理とは、受精卵が着床するためのベッドのような役割をもつ子宮内膜が、妊娠しなかった場合に剥がれ落ちて体外に排出される現象です。
そのため、もし何らかの原因で子宮内膜が十分に厚くならない状態であれば、剥がれ落ちる量も少なくなり、経血量が少ない・生理が1日で終わるといった変化が見られることがあります。
子宮内膜が薄くなる原因としては、以下のようなものが考えられます。
ホルモン剤の影響
低用量ピルやミニピル、ミレーナを使用している場合、子宮内膜の増殖を抑制する作用があるため、生理の経血量が減り、期間が短くなることがあります。
これは、避妊効果と同時に生理痛の軽減や過多月経の改善を目的としているため、異常ではありません。
年齢による卵巣機能の低下
30代後半から40代以降になると、卵巣機能が徐々に低下し始め、排卵が不規則になったり、女性ホルモンの分泌量が減少したりします。
これにより、子宮内膜が十分に厚くならず、経血量が減って生理期間が短くなることがあります。閉経に向かうプレ更年期(更年期移行期)のサインの一つとして現れることもあります。
子宮内膜が薄い状態が続くと、妊娠を希望する際に影響が出る可能性もありますので、気になる場合は一度婦人科を受診し、医師に相談してみましょう。
超音波検査で子宮内膜の厚さを確認することができます。
3.妊娠初期の着床出血
「あれ?生理が来たけど、1日で終わっちゃった…」
もしかしたら、その出血は生理ではなく「着床出血」かもしれません。
着床出血とは、妊娠の初期段階で起こる可能性のある出血で、生理と間違えられることがよくあります。
着床出血は、受精卵が子宮の内側の膜(子宮内膜)に根を下ろす際に起こる、ごく少量の出血のことです。イメージとしては、受精卵が子宮内膜に「潜り込む」際に、周囲の小さな血管が少し傷ついて出血するようなものです。
着床出血の主な特徴としては、以下が挙げられます。
出血の時期
生理予定日の数日前から予定日頃にかけて起こることが多く、ちょうど生理が始まる時期と重なるため、勘違いしやすいポイントです。
出血の量
一般的に、通常の生理と比べて出血量は非常に少なく、少量で終わることがほとんどです。
ナプキンがほとんど汚れない程度の「おりものに血が混じったようなもの」として認識されることもあります。
出血の色
サラサラとした鮮血であることもあれば、古くなった血が混じったような茶色っぽい色や、ピンクっぽい色であることもあります。ただし、生理のようなドロっとした経血ではないことが多いです。
出血期間
数時間で終わることもあれば、長くても1~2日程度で治まることが多いです。生理のように数日続くことは稀です。
ただし、着床出血は必ず起こるものではなく、経験しない方もたくさんいらっしゃいます。また、個人差が大きく、出血の様子だけで生理と区別することは難しい場合もあります。
「妊娠かも?」と心当たりのある場合は、生理予定日から1週間後に妊娠検査薬を使用してください。
陽性反応が出た場合は、早めに産婦人科を受診し、正確な診断を受けましょう。
4.子宮内のトラブルや婦人科疾患による出血
生理が1日で終わる状態には、まれに子宮や卵巣のトラブル、婦人科系の疾患が隠れていることもあります。
万が一に備えて、早めに原因を確認し、必要な治療を受けることが大切です。
考えられる主な疾患としては、以下が挙げられます。
子宮筋腫
子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、多くの女性にみられます。通常は生理の経血量が増えたり、生理痛がひどくなったりすることが多いですが、筋腫のできる場所や大きさによっては、生理不順や不正出血を引き起こし、結果的に「生理が1日で終わる」といった症状として現れることもあります。
子宮腺筋症
子宮内膜に似た組織が、子宮の筋肉の層に入り込んで増殖する病気です。
子宮が厚くなり、生理痛が非常に重くなったり、経血量が増えたりするのが主な症状ですが、病状によっては生理周期が乱れ、短い期間で終わる出血として現れることもあります。
子宮内膜症
子宮内膜に似た組織が、子宮以外の場所(卵巣、腹膜、腸など)で増殖する病気です。
生理のたびにその組織も増殖・剥離するため、激しい生理痛や性交時痛、不妊の原因となることがあります。月経周期が不規則になり、少量の出血が短期間で終わることもあります。
多嚢胞性卵巣症候群
ホルモンバランスの異常によって卵巣にたくさんの小さな嚢胞ができ、排卵が起こりにくくなる疾患です。
これにより、月経不順(生理がなかなか来ない、間隔が長い)や無月経の症状が出ることが多く、生理が来たとしても非常に量が少なく、短期間で終わってしまうことがあります。
甲状腺機能異常
甲状腺から分泌されるホルモンは、身体の代謝全般をコントロールしており、女性ホルモンのバランスにも大きな影響を与えます。
甲状腺機能亢進症(ホルモンが多い状態)や甲状腺機能低下症(ホルモンが少ない状態)のいずれも、生理不順や、経血量の変化(減少または増加)を引き起こす可能性があります。
排卵障害(無排卵月経など)
何らかの原因で排卵が正常に行われない「無排卵月経」の場合、子宮内膜が十分に成熟せず、出血量が少なくなったり、生理が短期間で終わったりすることがあります。
このような疾患は、1日で終わる生理以外にも、強い生理痛、慢性的な下腹部痛、生理以外の不正出血、めまい、貧血、疲労感など、他の症状を伴うことがあります。
もし、今回の1日だけの生理が今までになく、他に気になる症状が複数ある場合は、自己判断せずに、必ず婦人科を受診してください。
妊娠検査薬はいつ使う?タイミングと注意点

生理がすぐに終わってしまった・量が少なかったなど、いつもと違う場合は、妊娠の可能性も視野に入れて、市販の妊娠検査薬でセルフチェックをしてみましょう。
妊娠検査薬は手軽に確認できる便利なツールですが、正しいタイミングで使うことが大切です。
妊娠検査薬が反応する時期と仕組み
一般的には、生理予定日の1週間後以降に妊娠検査薬を行うことで、正確な判定が得られるとされています。
妊娠検査薬は、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの分泌をキャッチして、陽性・陰性を判定する仕組みです。
このhCGは、受精卵が子宮内膜に着床したあとから分泌され始め、体内で少しずつ増えていきます。
それ以前に使用しても、hCGがまだ十分に分泌されておらず、「妊娠しているのに陰性と出る(=偽陰性)」ことがあります。
正しく使うための3つのポイント
妊娠検査薬は、使い方やタイミングを誤ると正しい結果が得られないこともあるため、以下のポイントを意識することが大切です。
1.朝一番の尿で検査する
hCGは妊娠初期にはまだ濃度が低く、尿が薄まっていると正しく検出されない可能性があります。
特に検査時期が早い場合は、朝一番の尿で検査することで、より正確な結果が得られやすくなります。
2.必ず説明書を確認する
妊娠検査薬は、製品ごとに使用方法や判定時間、検出できるhCGの感度が異なります。
説明書を読まずに使用すると、判定時間を過ぎてから線が出た場合に「陽性」と誤解してしまったり、尿の量が不足して正確な結果が出なかったりすることも起こり得ます。
どんなにシンプルな構造に見えても、検査薬は医療用ツールの一つです。
正しい手順を守ることで、結果への信頼性が高まります。
3.「フライング検査」は避ける
妊娠が気になると、どうしても早く結果を知りたくなり、「生理予定日より前に検査する=フライング検査」をしてしまいたくなるものです。
しかし、生理予定日前はhCGの分泌がまだ十分でないことが多く、妊娠していても「陰性」と判定(偽陰性)されてしまうことがあります。
焦る気持ちは自然なものですが、正確な判定には「生理予定日の1週間後以降」に検査を行うことが最も確実です。
不安が強い時は婦人科受診を
妊娠検査薬で陽性反応が出たときはもちろんですが、陰性であっても「妊娠の可能性が捨てきれない」「生理がいつもと違った」といった不安が残る場合は、自己判断に頼らず、早めに婦人科を受診されることをおすすめします。
妊娠かどうかだけでなく、ホルモンバランスの乱れや体調不良の背景に、ほかの婦人科的な要因が隠れていることもあります。
不安な気持ちがあるときこそ、安心できる環境でご自身の身体と向き合うことが大切です。ぜひお気軽にご相談ください。
婦人科で行う診察・検査方法
婦人科を受診される際、「どんな検査をするのか不安…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
こちらでは、一般的に行われる診察や検査の流れについてご紹介いたします。
問診
問診では、最終月経日、生理周期、今回の1日だけの生理の状況、痛みや不正出血の有無、これまでの病歴、現在服用しているお薬など、できるだけ詳しくお伺いします。
些細なことでも、遠慮せずにお話になってください。
経膣超音波検査
エコー機器を使って、子宮や卵巣の大きさ、形、内部の状態、腫瘍の有無などを詳しく確認します。
膣から細いプローブを挿入して行う方法で、痛みはほとんどありません。
超音波検査では、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの疾患の有無を確認できることが多いです。
血液検査
体内のホルモンバランスの状態や、貧血の有無、そして妊娠の有無(hCGホルモンの測定)などを詳しく調べます。
甲状腺機能の異常が疑われる場合は、甲状腺ホルモンの検査も行われます。
尿検査
妊娠反応の確認や、尿路感染症の有無などを調べるために行うことがあります。
これらの検査と診察の結果をもとに、一人ひとりに合った適切な治療法や、今後の経過観察についてわかりやすくご説明します。
わからないことやご不安な点があれば、どうぞ遠慮なくお申し出ください。お一人で悩まず、ぜひお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
1日だけ生理で、妊娠していない場合、他に何が原因として考えられますか?
妊娠検査薬が陰性で、妊娠の可能性がない場合、最も多い原因として考えられるのはホルモンバランスの一時的な乱れです。私たちの身体はデリケートで、日々のストレス、過労、睡眠不足、不規則な生活、急激な体重の変化(ダイエットやリバウンドなど)が、簡単に女性ホルモンの分泌に影響を与えます。その結果、生理周期が乱れたり、経血量が極端に少なくなったりすることがあります。また、ごく稀なケースではありますが、子宮や卵巣に何らかの異常(例えば、まだ発見されていない子宮筋腫や子宮内膜症など)が隠れている可能性も考えられます。もし不安が続くようであれば、一度婦人科を受診し、医師に相談することをおすすめします。
生理が1日で終わった後、どれくらい様子を見ればいいですか?
もし今回の「1日だけの生理」が単発のもので、他に気になる症状(強い痛み、不正出血、めまいなど)が無ければ、次回の生理が正常に来るかどうか、しばらく様子を見ても良いでしょう。しかし、もしこのような現象が3か月以上繰り返される場合や、生理以外の不正出血が頻繁に起こる、下腹部に強い痛みが伴う、おりものの異常があるなど、他の気になる症状が一つでも伴う場合は、自己判断せずにできるだけ早く医療機関を受診することをおすすめします。早期に原因を特定することで、適切な対処が可能になります。
妊娠検査薬で陰性だったのに、妊娠していることはありますか?
はい、その可能性はゼロではありません。妊娠検査薬は、尿中のhCGホルモンの濃度が一定レベルに達することで陽性反応を示します。そのため、もし検査薬の使用時期が早すぎる場合などは、まだhCGホルモンの量が十分でなかったり、尿が薄まっていたりすると、たとえ妊娠していても「陰性」と表示されてしまうことがあります。また、ごく稀に、検査薬の不良や使用方法の誤りなども考えられます。もし陰性だったにもかかわらず、妊娠の心当たりが強く、吐き気やだるさなどの体調の変化が続く場合は、数日後に再度検査薬を試してみるか、より確実な診断のためにも、迷わず産婦人科を受診して血液検査でhCGホルモンの値を測ってもらうことをおすすめします。
産後の生理が1日だけで終わりました。大丈夫でしょうか?
産後に初めての生理が再開した際、「1日だけで終わってしまった」「出血がすぐに止まってしまった」というケースは少なくありません。ホルモンバランスがまだ整っていないことが原因であることが多く、一時的な変化である場合がほとんどです。産後の身体は、妊娠前とは異なるホルモン状態や子宮環境にあります。そのため、生理の量や期間、周期が不安定になることは珍しくありません。特に、授乳中は「プロラクチン」というホルモンの影響で排卵が抑制され、生理が不規則になりやすくなります。産後の生理について不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。身体の回復には個人差がありますので、ご自身のペースを大切にしましょう。