ひよりレディースクリニック福岡博多は、外陰部のお悩みをご相談いただける婦人科です。
本記事では、外陰部のかゆみやできものの原因、検査方法、市販薬の使用について詳しく解説します。
目次

外陰部がかゆい原因6つ
外陰部のかゆみ・できものは、カンジダ膣炎やヘルペス感染症、アレルギー反応など、さまざまな原因によって生じる可能性があります。
外陰部のかゆみで考えられる6つの原因について、くわしく見ていきましょう。
1.カンジダ膣炎
カンジダ膣炎は、膣内に常在するカンジダ菌(真菌)が増殖して発症します。
カンジダ菌は、普段は免疫機能で抑制されていますが、免疫力の低下や抗生物質の使用、ストレス、妊娠、糖尿病などがきっかけで異常繁殖を起こします。
主な症状は、強いかゆみや灼熱感、白くカッテージチーズ状のおりものです。
治療には抗真菌薬を使用しますが、再発することが多いため、生活習慣の見直しが重要です。
日ごろから、下着の通気性を良くする・膣内を過度に洗浄しないといった予防策も取り入れて過ごしてみてください。
カンジダ膣炎について詳しく知る2.性病(性感染症・STD)
トリコモナス、クラミジア、淋病、ヘルペスなどの性感染症も、外陰部のかゆみを引き起こします。
特にヘルペス感染症は、水疱や潰瘍を伴い、痛みを感じることが特徴です。
クラミジアや淋病では、かゆみに加えて不正出血や膿のような分泌物が見られることがあります。
これらの感染症は、放置すると子宮や卵管などに炎症が広がり、不妊症の原因となる可能性があるため、早めの受診が重要です。
なお、性感染症の予防のためには、コンドームの使用が有効です。
性病について詳しく知る3.細菌性膣炎
細菌性膣炎は、膣内の細菌バランスが崩れることで生じます。
特に膣内の乳酸菌が減少すると発症しやすくなります。なお、過度な膣内洗浄や抗生物質の長期使用が原因となることもあります。
主な症状は、灰色がかったおりものと強い魚の生臭さ、そして外陰部のかゆみや灼熱感です。
細菌性膣炎の治療には抗菌薬が用いられますが、治療後も再発することがあるため、膣内のバランスを保つ生活習慣が大切です。
4.外陰部の湿疹や乾燥
外陰部の皮膚は非常に繊細で、乾燥や湿疹が原因でかゆみを引き起こすことがあります。
頻繁な膣内洗浄や石けんの使いすぎ、熱いお湯での洗浄などは、皮膚のバリア機能を弱めて乾燥を悪化させます。
また、長時間湿った状態でいることや蒸れも湿疹の原因となります。
保湿を心がけ、刺激の少ない製品を使用することで改善が期待できます。症状が続く場合は、皮膚科や婦人科で適切な治療を受けましょう。
5.接触性皮膚炎(アレルギー反応)
外陰部に使われる製品(石けん、洗剤、ナプキン、避妊具など)に含まれる成分が刺激となり、かゆみや赤み、腫れを引き起こすことがあります。
特に香料や防腐剤、殺菌剤が含まれる製品は、皮膚が敏感な方に影響を与えやすいです。
また、新しい製品を使い始めたタイミングで症状が出た場合、接触性皮膚炎の可能性が考えられます。
症状を緩和するには、刺激物を避け、症状がひどい場合は医師に相談してステロイド軟膏や抗ヒスタミン薬を使用します。
6.衣類や生活習慣の影響
通気性の悪い下着やタイトな衣服を長時間着用すると、外陰部が蒸れてかゆみや炎症を引き起こすことがあります。
特に、ナイロン製の下着であったり、運動後に着替えをしない場合、蒸れが悪化しやすくなります。
また、生理中のナプキンやパッドの交換頻度が少ない場合も、外陰部のトラブルを招く要因になります。
これらを防ぐためには、通気性の良い綿素材の下着を選ぶことや、清潔を心がけることが大切です。
外陰部のできもの6種類
外陰部にできものが現れると、不快感や痛みを伴うだけでなく、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。
外陰部のできものはさまざまな原因によって発生しますので、それぞれ治療法が異なります。以下では、代表的なできものの種類とその特徴について説明します。
1.バルトリン腺嚢胞
バルトリン腺嚢胞は、膣の左右にある分泌腺の開口部が塞がり、腺内に粘液が溜まることで発生します。
初期は無症状で気づきにくいですが、感染が進むと、腫れ・痛み・発熱を伴うことがあります。
バルトリン腺嚢胞の治療
症状が軽い場合は経過観察で済むこともありますが、膿瘍を形成すると抗生物質の使用や膿の排出が必要です。
再発が多い場合は、嚢胞を取り除く手術を検討します。
2.毛嚢炎・毛包炎
毛嚢炎や毛包炎は、陰毛の毛根部分に細菌(黄色ブドウ球菌など)が感染して起こる炎症です。
毛嚢炎・毛包炎の症状は、赤い小さな丘疹や膿が溜まった膿包が見られ、押すと痛みを感じることがあります。
ムダ毛の自己処理後や蒸れ、ナイロンタオルの使用が主な原因とされています。
毛嚢炎・毛包炎の治療
抗生物質を使用することで多くの場合は改善します。
再発を防ぐには、刺激を避けることや通気性の良い下着を着用するなど、日常のケアも大切です。
3.粉瘤(アテローム)
粉瘤は、皮膚の下に皮脂や古い角質が溜まり、袋状のしこりを形成する良性の腫瘍です。
強く押すと中から臭いの強い粘液が出ることがあり、感染すると炎症性粉瘤に進行することがあります。
粉瘤の治療
軽度の場合は抗生物質で対応できますが、悪化した場合は切開や膿の排出が必要です。
再発を防ぐためには、早期の適切な処置と患部の清潔が重要です。
4.性器ヘルペス
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)または2型(HSV-2)の感染による性感染症です。
初感染時には強い痛みや排尿障害、リンパ節の腫れ、発熱を伴います。外陰部には水ぶくれや潰瘍ができることがあります。
性器ヘルペスの治療
性器ヘルペスの治療には、抗ウイルス薬で症状を軽減する治療が行われますが、ウイルスを完全に排除することは難しく、再発リスクがあります。
再発時は早めに医師に相談し、適切な対処を行うことが重要です。
5.尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で発症する性感染症です。
外陰部や肛門周辺にイボ状の病変が現れ、カリフラワーのような形状をしています。痛みはありませんが、かゆみや違和感を伴うことがあります。
尖圭コンジローマの治療
尖圭コンジローマの治療には、塗り薬や冷凍凝固法、切除が用いられますが、再発が多いことが特徴です。なお、HPVワクチン接種にて予防が可能です。
HPVワクチンを詳しく知る6.尿道カルンクル
尿道カルンクルは、尿道の出口にできる良性の腫瘍で、更年期以降の女性に多く見られます。
主な症状は異物感や出血、かゆみです。下着に血が付着することで気づくことが多いですが、大きな場合や症状が進行すると痛みや排尿障害を伴うことがあります。
尿道カルンクルの治療
一般的にはステロイドの塗布で対応しますが、症状が重い場合は切除手術が行われることもあります。患部の清潔を保つことが予防につながります。
外陰部のかゆみ・できものの検査
外陰部の症状にはさまざまな原因があり、正確な診断のためには適切な検査が必要です。以下は、症状の原因を特定するために行われる主な検査です。
1.内診
外陰部や膣、子宮、卵巣の健康状態を確認するための基本的な検査です。
外陰部の視診から始まり、腟鏡を使用して腟内や子宮頸部を調べます。
痛みを伴うことはほとんどなく、軽い違和感を覚える程度です。異常が見つかった場合は、さらなる検査が必要になることがあります。
2.顕微鏡検査
内診の際に腟内から分泌物を採取し、顕微鏡で観察する検査です。
この検査では、細菌、真菌(カンジダ菌)、トリコモナス、淋菌などの感染症の有無を調べます。短時間で結果がわかるため、初期診断に適しています。
3.培養検査
採取した分泌物を培養し、細菌や淋菌などの微生物を特定する検査です。
培養には数日から数週間かかることもありますが、感染症の原因菌を正確に特定できるため、適切な治療薬の選択が可能になります。
4.子宮頸がん・体がん検査(スメア検査)
子宮頸部から細胞を採取し、顕微鏡で異常を調べる検査です。
悪性腫瘍の早期発見に役立ち、必要に応じて子宮内膜の細胞を調べる体がん検査も行われます。定期的な検査は早期発見・治療に重要です。
子宮がん検診を詳しく知る5.血液・尿検査・生検
感染症が疑われる場合には血液や尿検査が行われます。
また、腫瘍や異常な組織が見られる場合には、生検を行い組織の詳細を調べます。生検については痛みを伴う場合がありますが、診断に不可欠な検査となります。
6.超音波検査
内診では確認できない子宮や卵巣の異常を調べるために行います。
腟内または腹部から超音波プローブを当てて内部の画像を取得し、子宮や卵巣の腫れ、嚢胞、子宮内膜の状態を評価します。
7.検査結果について
検査結果は、検査内容にもよりますが、通常2週間程度で結果がわかります。
当院では、検査結果を郵送でお送りすることも可能です。
もちろん、ご来院いただいての受け取りも可能ですので、ご都合の良い方法をお選びください。
検査当日に、結果の受け取り方法についてご希望をお伺いいたします。
外陰部のかゆみに市販薬は効くのか

ここ最近は、薬局でカンジダ治療薬やステロイド入りのクリームを購入することができるので、一部の外陰部のかゆみについては市販薬でも症状を緩和できるケースがあります。
ただし、市販薬にはデメリットがあります。
例えば、カンジダ治療薬は薬局で4,000円以上の価格で販売されています。
医療機関で診断を受けた場合、(症状があるときは)保険適用となるので、診察を含め2,000円程度で済むことが多いです。
なお、雑菌による感染には市販薬がないので、医療機関での治療が必要となります。
さらに、自己診断にはリスクがあります。
仮にカンジダと仮定して市販薬を塗ったとしても、実際には他の疾患の可能性もあります。
かゆみの原因をきちんと特定して、的確な治療を受けるためにも、症状が続く場合は医療機関で診察を受けることをおすすめします。
外陰部の異常は婦人科受診を
外陰部のかゆみ、できものなどの異常があるときには、早めに婦人科を受診しましょう。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、丁寧な診察と適切な検査を通じて原因を特定し、最適な治療法をご提案します。
外陰部のトラブルは、誰でも経験する可能性があり、決して恥ずかしいことではありません。ぜひお気軽にご相談ください。
外陰部の異常でよくあるご質問
おまたにしこりがあるのですが、病気ですか?
おまた(外陰部)にしこりができる主な原因として、良性腫瘍、皮膚疾患、性感染症などが挙げられます。しこりが大きくなる、痛みやかゆみを伴う、排泄に支障をきたす場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
陰部にニキビができました。受診すべきですか?
はい、急を要するケースではありませんが、症状が数日続く場合には受診を検討してください。陰部は毛穴が多く、蒸れやすい部位のため、細菌が繁殖しやすい環境です。なお、一見ニキビのように見えても、毛嚢炎や性感染症の可能性も考えられます。気になる場合は、早めに医療機関でご相談いただくことをおすすめします。
陰部の保湿にワセリンを塗っても問題ないですか?
はい、陰部の保湿にワセリンを使用することは一般的に問題ありません。ただし、ワセリンは保湿効果が高い一方で、過剰に塗ると蒸れやすくなる可能性があります。適量を清潔な手で塗布し、かゆみや赤みなどの異常を感じた場合はすぐに使用を中止して医療機関に相談してください。また、炎症などがある場合は、治療が必要なこともあるため、医師に確認するのが安心です。