想像妊娠の症状|妊娠との違いや妊娠検査薬の反応について解説
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
産婦人科専門医

本記事では、想像妊娠の原因や症状、妊娠との違いを詳しく解説し、妊娠検査薬の反応や適切な対処法についても分かりやすくご紹介します。
目次
想像妊娠とは
想像妊娠とは、実際には妊娠していなくても、妊娠初期のような身体の変化を感じる現象です。
医学的には「偽妊娠」とも呼ばれ、ホルモンバランスの変化や心理的要因が影響して発生する心身症状の一つと考えられています。
想像妊娠は、妊娠を強く望んでいる方だけでなく、妊娠への不安が強い場合にも起こることがあります。
また、想像妊娠では一時的に生理が止まることもありますが、妊娠とは異なり、しばらくすると通常の生理が再開されます。

想像妊娠の実例を教えてください。

以前、タイミング法を実践中の30代の患者さまがいらっしゃいました。生理予定日を過ぎても生理がこず、胸の張りもあり「妊娠したかも」と感じたそうです。妊娠検査薬を使用し、陰性。不安があり、念のため婦人科を受診されました。診察の結果、ホルモンバランスの影響で生理が遅れている可能性が高いと診断。その後、数日で生理が始まりました。想像妊娠は、妊娠を強く意識することで起こることがあり、決して珍しい現象ではありません。
想像妊娠が起こる原因4つ

想像妊娠は、妊娠を強く意識することで、ホルモンバランスや自律神経に変化が生じ、妊娠初期のような症状が現れることがあります。
なぜこのような現象が起こるのか、主な原因4つについて、詳しく解説します。
1.ホルモンバランスの変化
妊娠に関わるホルモン(プロゲステロンやエストロゲンなど)のバランスが乱れると、生理の遅れや胸の張り、つわりのような症状が現れることがあります。
特に、強いストレスを受けると、ホルモン分泌を調整する脳(視床下部・下垂体)が影響を受けやすくなり、生理不順や体調の変化につながることがあります。
2.心理的影響
妊娠を強く望んでいる方や、予期せぬ妊娠に対する強い不安を抱えている方は、無意識のうちに妊娠初期のような症状を感じることがあります。
これは、妊娠を意識することで脳(視床下部)がホルモン分泌を調整し、実際に身体に変化を引き起こすためと考えられています。
3.自律神経の乱れ
ストレスや睡眠不足、不規則な生活が続くと、自律神経が乱れ、ホルモンバランスにも影響を及ぼします。その結果、生理が遅れたり、妊娠初期症状に似た体調の変化が現れることがあります。
4.過去の妊娠経験
以前に妊娠・出産・流産を経験した方は、過去の妊娠時に感じた身体の変化が記憶として残っているため、ホルモンバランスのわずかな変化でも妊娠時の症状と似た感覚を覚えることがあります。
特に、生理が遅れたり、乳房の張りや軽い吐き気などがあると、妊娠の可能性を意識しやすくなる傾向があります。
想像妊娠の症状【セルフチェック】
想像妊娠の症状は、実際の妊娠初期症状とよく似ており、身体だけでなく精神面にも変化が現れることがあります。具体的には、以下のような症状が見られます。
- 生理がこない(遅れる)
- つわりのような吐き気や胃の不快感
- 乳房の張りや痛み
- お腹の膨張感や軽度の下腹部痛
- 頻尿や眠気の増加
- 気分の浮き沈みや不安定さ
- 妊娠への強い思い込み
これらの症状は、生理が遅れたことで「妊娠しているかもしれない」と意識することで、より強く感じることがあります。
特に、乳房の張りや吐き気、眠気などは、妊娠初期症状や生理前症状(PMS)とも非常によく似ているため、自己判断が難しくなります。
想像妊娠かどうかを確実に判断するには、妊娠検査薬を使用するだけでなく、婦人科での診察を受けることをおすすめします。
想像妊娠と妊娠の違い

想像妊娠は、妊娠初期の症状や生理前症状とよく似ているため、自己判断が難しいことがあります。以下の3つのポイントを確認すると、妊娠の可能性をより正確に判断する手がかりになります。
妊娠検査薬の結果
妊娠と想像妊娠を見分ける方法の一つとして、妊娠検査薬を使用することが挙げられます。
妊娠している場合
妊娠すると、受精卵が子宮に着床することでhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。妊娠検査薬は、このhCGに反応し、陽性を示します。
検査のタイミングが早すぎると、hCGの量が十分でないため、陰性になることがあります。
生理予定日の1週間後以降に検査をすることで、より確実な結果が得られます。
想像妊娠の場合
想像妊娠の場合は、hCGが分泌されないため、基本的に妊娠検査薬は陰性になります。
ただし、蒸発線や判定ミスによって誤って陽性と見えることがあるため、再検査をするか、婦人科で診察を受けると安心です。
【注意点】
妊娠していなくても、hCGを分泌する疾患(絨毛性疾患、卵巣腫瘍など)によって、妊娠検査薬が陽性になることがあります。
妊娠の可能性が低いにもかかわらず陽性反応が出た場合は、一度婦人科で詳しい検査を受けることをおすすめします。
超音波検査の結果
妊娠しているかどうかを正確に判断するには、婦人科での超音波検査が有効です。
妊娠している場合
妊娠5~6週目になると、超音波検査で子宮内に胎嚢(赤ちゃんが入る袋)が確認できるようになります。
さらに週数が進むと、胎児の心拍が確認でき、妊娠が確定します。
想像妊娠の場合
想像妊娠の場合は、超音波検査で子宮内に胎嚢は確認されません。
生理が遅れている場合、ストレスや生活習慣の変化が影響し、一時的に排卵が遅れたり、生理不順が起こることがあります。ほとんどの場合、時間が経つと生理が再開します。
婦人科の受診タイミング
生理予定日から1週間以上経過したら、まず妊娠検査薬を試しましょう。陽性が出た場合は、婦人科での超音波検査にて胎嚢が確認できる可能性が高まります。
妊娠検査薬で陰性が出た場合でも、生理がこない・1か月以上無月経が続くときは、一度婦人科へご相談ください。
ホルモンバランスの乱れや、何らかの疾患が原因となることもあるため、医師の診察や検査を受けると安心です。
生理の有無
生理が来るかどうかは、妊娠と想像妊娠を見分ける重要なポイントの一つです。
妊娠している場合
通常、妊娠すると生理は止まります。
しかし、ごく初期の段階では、着床出血と呼ばれる少量の出血が見られることがあります。着床出血は、生理とは異なり、数日で自然におさまることが特徴です。
想像妊娠の場合
想像妊娠では、ホルモンバランスの変化によって、一時的に生理が遅れることがあります。
ストレスや心理的な要因がホルモンの分泌に影響を及ぼし、月経周期が乱れることがあるためです。
しかし、妊娠が成立していない場合、通常は数日から数週間以内に生理が再開します。
生理不順との違い
生理不順とは、生理周期が大きく乱れる状態を指します。
- 周期が24日以内または39日以上の不規則な生理
- 3か月以上生理が来ない(無月経)
- 極端に量が少ない、または非常に多い
上記のような生理不順が続く場合は、排卵が正常に起こっているかを確認するためにも、一度婦人科で相談することをおすすめします。
妊娠を希望している方は、排卵の有無を確認することで、妊娠しやすいタイミングの把握や治療の選択肢を考えることができます。
想像妊娠が起こる割合について
想像妊娠が起こる割合について、現時点で明確な統計データはありません。
しかし、妊娠を強く望んでいる方や、妊娠に対する不安が大きい方に比較的多くみられる現象とされており、特にホルモンバランスが変化しやすい20〜40代の女性に発生しやすい傾向があります。
想像妊娠は決して珍しいものではなく、どなたにも起こり得る現象です。
そのため、「自分だけでは?」と不安に思う必要はありません。もし気になる症状が続く場合は、一度婦人科を受診し、ご自身の身体の状態を確認すると安心です。
想像妊娠でも妊娠検査薬が陽性になる?
一般的に、想像妊娠では妊娠検査薬が陽性になることはありません。
妊娠検査薬は、妊娠時に分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)に反応して陽性を示します。
しかし、想像妊娠ではhCGが分泌されないため、基本的に陰性になります。
妊娠していなくても陽性が出るケース
妊娠の可能性が低い場合でも、以下のような理由で妊娠検査薬が陽性を示すことがあります。
化学的妊娠
受精はしたものの、着床が安定せず、ごく初期の段階で妊娠が継続しなかった状態を指します。
この場合、一時的にhCGが分泌されるため、妊娠検査薬が陽性を示すことがありますが、数日後に再検査すると陰性になることがほとんどです。
hCGを分泌する疾患
一部の婦人科疾患では、妊娠していなくてもhCGが分泌されることがあり、妊娠検査薬が陽性になることがあります。
具体的には、絨毛性疾患(胞状奇胎など)や卵巣腫瘍が関与するケースがあります。
検査薬の使用ミス
判定時間の誤り:妊娠検査薬は、指定された時間内に結果を確認する必要があります。判定時間を過ぎると、蒸発線と呼ばれる薄いラインが現れることがあり、これを陽性と誤認してしまうことがあります。
尿の濃度が影響する場合:朝一番の尿はhCG濃度が高いため、正確な判定がしやすいですが、水分を多く摂取した後の尿では判定が不安定になることがあります。
妊娠検査薬の結果が陽性だった場合は、自己判断せずに婦人科を受診することをおすすめします。
超音波検査や血液検査を行うことで、妊娠の有無をより正確に判断できます。
想像妊娠の対処法
想像妊娠は、心理的な影響やホルモンバランスの変化によって引き起こされることが多いため、まずは想像妊娠がどのように起こるのかを理解し、適切に対応することが大切です。
正しい情報を知る
妊娠に関する正しい知識を持つことは、想像妊娠かどうかを適切に判断するために重要です。
想像妊娠のメカニズムを理解し、妊娠検査薬の正しい使用方法を知ることで、不安を減らし、誤った判断を避けることができます。
- 妊娠の仕組みを理解する
- 想像妊娠が起こる原因を知る
- 妊娠検査薬の使用時期と正しい使い方を守る
- 他の要因(生理不順・ホルモン異常)が影響しているか確認する
ストレスを軽減する
ストレスや不安は、視床下部(ホルモン分泌を調整する脳の部位)に影響を与え、ホルモンバランスの乱れを引き起こします。
これにより、生理不順や排卵の遅れが生じ、想像妊娠の症状が現れやすくなることがあります。
特に、以下のようなストレス要因がある場合、想像妊娠を引き起こしやすい傾向があります。
- 妊娠を強く望んでいる(妊活・不妊治療中など)
- 予期せぬ妊娠の可能性に対する不安がある
- 仕事や人間関係による強いストレスがある
- 睡眠不足や生活リズムの乱れが続いている
ストレスがホルモンバランスに与える影響を最小限にするために、以下の方法を意識しましょう。
ストレスを軽減する方法
軽い運動を習慣化する:ウォーキング・ヨガ・ストレッチなど、血流を促す運動が特に効果的です。
入浴で自律神経を整える:38〜40℃のぬるめのお湯にゆっくり浸かると、リラックス効果が高まります。
生活リズムを一定に保つ:特に「就寝・起床時間を統一する」ことで、ホルモン分泌が安定しやすいです。
婦人科を受診する
想像妊娠かどうか判断に迷う場合は、婦人科で診察を受けることで、より正確に妊娠の有無を確認できます。婦人科では、以下の方法で確実な診断を行います。
超音波検査 | 子宮内に胎嚢があるかを確認し、妊娠の有無を判断 |
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血液検査 | 妊娠ホルモン(hCG)の数値を測定し、妊娠の有無を明確に |
ホルモン検査 | 生理不順やホルモンバランスの乱れが原因になっていないかを調べる |
想像妊娠の症状が続く場合や、生理が長期間こない場合は、他の婦人科疾患が隠れている可能性もあるため、早めの受診をおすすめします。
妊娠に関するご相談は婦人科へ
想像妊娠は、誰にでも起こり得る現象です。
妊娠を希望する方の中には、タイミングを意識したり、生殖医療を受けたりするケースもあるでしょう。
近年は、人工授精や体外受精などの選択肢が広がっていますが、妊娠のタイミングは個々の身体の状態によって異なり、必ずしも思い通りになるとは限りません。
焦りや不安を抱えすぎず、リラックスできる時間を作ることや、必要に応じてセカンドオピニオンを検討するのも一つの方法です。
一方で、「予期せぬ妊娠かもしれない」と不安を感じている場合は、まずはお一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、診察や検査を通じて、妊娠に関する不安やお悩みに寄り添い、お一人おひとりに合った対応を行っています。
また、ライフスタイルに合わせた適切な避妊方法についてのご相談も承っております。
想像妊娠のよくあるご質問
想像妊娠とは何ですか?
想像妊娠とは、妊娠していないにもかかわらず、妊娠初期のような症状が現れる状態を指します。ホルモンバランスの変化や心理的な影響が関与し、生理の遅れ、吐き気、乳房の張りなどの症状が出ることがあります。
想像妊娠の症状はどのくらい続きますか?
想像妊娠の症状の持続期間には個人差がありますが、数日から数週間程度で生理が再開し、症状が自然に消えることがほとんどです。ただし、長期間症状が続く場合は、ホルモンの乱れや他の婦人科疾患の可能性もあるため、一度婦人科を受診すると安心です。
想像妊娠で生理がこなくなるのはなぜですか?
ストレスや心理的な影響が視床下部(脳のホルモン分泌を調整する部位)に作用し、ホルモンバランスが乱れることで排卵が遅れ、生理が遅れることがあります。
想像妊娠の症状と妊娠初期の症状はどう違いますか?
想像妊娠と妊娠初期は、生理の遅れや吐き気、乳房の張りなどの症状がよく似ています。そのため、自己判断は難しい場合があります。確実に判断するには、妊娠検査薬を使用し、必要に応じて超音波検査を受けることが大切です。
想像妊娠しやすい人の特徴はありますか?
想像妊娠の症状が出やすいのは、妊娠を強く望んでいる方や、不妊治療を受けている方によく見られます。一方で、避妊の失敗を心配して、予期せぬ妊娠に対する強い不安を抱えている場合も、想像妊娠が起こることがあります。さらに、日常的なストレスやホルモンバランスの乱れが続くと、心身に負担がかかり、想像妊娠を引き起こす要因となることもあります。
想像妊娠を防ぐ方法はありますか?
完全に防ぐ方法はありませんが、妊娠に関する正しい知識を持ち、過度なストレスを避けることが重要です。また、適度な運動やリラックスできる時間を作ることで、ホルモンバランスを整えることができます。