普段と比べておりものの臭いが強く、「ズボンまで臭う」と感じる場合や、色や性状が異なるときは、細菌性膣炎やトリコモナス感染症などの疾患が疑われます。
本記事ではおりものの概要、11個の異常や検査方法、治療方法、セルフケア方法について、詳しく解説します。
目次

正常なおりものとは
おりものは、女性の身体の健康状態を示す大切なサインです。
通常は無臭、もしくはわずかに酸っぱいにおいがあり、乳白色や透明でサラサラとした液体であることが一般的です。
おりものの量や状態は、生理周期に応じて変化します。
例えば、排卵期(生理周期の中頃)には、子宮頸管から分泌される粘液が増え、おりものがサラサラとした状態になることがあります。
また、妊娠や、アフターピルの使用、性的興奮によっても、おりものの量や性質が変わることがあります。
閉経後は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することで、おりものの量が少なくなります。
異常なおりもの11種類を解説
おりものの臭い・色・状態が普段と異なる場合、それは病気や感染症などのサインかもしれません。
以下では、異常なおりものの特徴を「臭い」「色」「状態」の3つに分けて詳しく解説します。
臭いの異常
色の異常
性状の異常
おりものがズボンまで臭う
おりものがズボンまで臭うほど強い臭いを感じる場合、膣内や子宮に異常が起きている可能性があります。
代表的な原因 | 細菌性膣炎・トリコモナス感染症 |
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特に細菌性膣炎では、魚の腐敗臭のような強い臭いが特徴で、量も増えることがあります。
また、膣内に異物(タンポンなど)が残っている場合、腐敗によって異常な臭いが発生することもあります。
普段と比べて明らかに強い臭いが続く場合や、かゆみや痛みを伴う場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
おりものが生臭い
おりものが生臭いと感じる場合、まずは細菌性膣炎が疑われます。
細菌性膣炎は、膣内の正常な細菌バランスが崩れ、有害な細菌が増殖することで引き起こされます。臭いは、特に性行為後に強くなることがあります。
細菌性膣炎は放置すると症状が悪化し、骨盤内感染症などの合併症につながる可能性があるため、早めの治療が大切です。
おりものから腐敗臭
おりものから腐敗臭がする場合、膣内に異物が残っている可能性が考えられます。
タンポンや避妊具が取り残されていると、細菌が繁殖して異常な臭いを発することがあります。さらに、感染症が進行すると、膣炎や子宮内感染を引き起こすリスクもあります。
このような場合は、すぐに医療機関を受診し、遺残物の除去や適切な治療を受けることが重要です。
おりものが<黄色・黄緑>

おりものが黄色・黄緑の場合、細菌性膣炎やトリコモナス感染症の可能性があります。
特に、悪臭を伴ったり、分泌物が泡立つような状態の場合は、トリコモナス感染症が疑われます。
トリコモナス感染症は、性行為を通じて感染することが多く、かゆみや灼熱感を伴うことがあります。
トリコモナス感染症は、放っておいても自然治癒することはないので、黄色いおりものなどの異常を発見した際は、お早めに受診するようにしてください。
おりものが<茶色>
茶色のおりものは、古い血液が混じっているサインです。
生理の終わりかけや不正出血の可能性が考えられます。また、妊娠初期の着床出血でも茶色のおりものが見られることがあります。
ただし、これが頻繁に起きる場合や量が多い場合は、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮頸がんなどの疾患が隠れていることもあります。
特に妊娠中や生理以外のタイミングで茶色のおりものが続く場合は、すぐに医師の診察を受けましょう。
早期発見が症状改善の鍵となります。
おりものが<白い>

白いおりものは正常な場合もありますが、カッテージチーズ状でかゆみを伴う場合は、カンジダ膣炎が疑われます。
カンジダ膣炎は、膣内でカンジダ菌が過剰に繁殖することで発生します。ストレスや免疫力の低下、抗生物質の使用などが原因となることが多いです。
軽症の場合は自然治癒することもありますが、症状を軽減するためには、清潔を保ちながらも過度な膣内洗浄は避け、医療機関で抗真菌薬の治療を受けることが大切です。
おりものが<ピンク色>
おりものがピンク色の場合は、血液が少量混ざっている可能性があります。
生理前後や排卵期、妊娠初期の着床出血などで生じる場合もありますが、不正出血の可能性もあります。
おりものが水っぽい・尿漏れみたい
尿漏れかのような水っぽいおりものが大量に見られる場合は、膣内感染症が考えられます。
また、骨盤底筋の衰えによる尿漏れ=おりものと勘違いされるケースもあります。
細菌性膣炎の場合でも、水っぽい分泌物が見られることがあります。
おりものが白いネバネバ
白いネバネバしたおりものは、正常な排卵期のおりものの可能性があります。
排卵期には子宮頸管粘液が増え、精子が子宮に入りやすい状態を作るため、透明または白っぽいネバネバしたおりものが見られます。
ただし、かゆみや臭いがある場合は、カンジダ膣炎などの感染症が原因の可能性があります。
おりものの量が多い
おりものの量が多い場合、排卵期や妊娠初期の影響かもしれません。
しかし、感染症(細菌性膣炎やトリコモナス感染症)や子宮筋腫が原因であることもあります。
急激な量の増加や異常な臭いを伴う場合は、身体が異常を知らせているサインと捉えて、婦人科を受診することがおすすめです。
おりもののかたまりがグミ状
おりもののかたまりがグミ状で見られる場合、カンジダ膣炎が疑われます。
カンジダ膣炎は、膣内での菌の増殖によって粘度の高い分泌物が発生するために起こります。また、かゆみや炎症を伴うことがよくあります。
抗真菌薬の使用で多くの場合改善しますので、お気軽にご相談ください。
おりもの異常の検査方法
おりものの検査方法は、膣内の分泌物を採取して顕微鏡で観察する「顕微鏡検査」や「培養検査」「PCR検査」が挙げられます。
顕微鏡検査 | 細菌やカビ(真菌)、トリコモナスなどの感染症の有無を調べることができます。 |
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培養検査 | 分泌物を培養して病原菌を特定し、適切な治療法を見つけることが可能です。 |
PCR検査 | 検査したいウイルスの遺伝子を専用の薬液を用いて増幅させ検出させる検査方法です。子宮頸部を拭って検体を採取し、検査を行います。感染してから発症する数日前より検出可能とされています。 |
その他、必要に応じて「pH測定」や「染色検査」が行われる場合もあります。
どちらの場合でも、おりもの検査自体は痛みがなく、短時間で完了します。
異常なおりものの治療方法
異常なおりものの症状が中等度から重度の場合は、薬による治療を行います。
1.かゆみの緩和
ヒドロコルチゾンなどのコルチコステロイドクリームや、抗ヒスタミン薬が有効です。
2.感染症の治療
細菌性腟症や真菌感染症、トリコモナス腟炎と診断された場合、抗菌薬や抗真菌薬が必要です。
これらは内服薬や腟内に挿入する薬として使用されます。
いずれにしても、まずは医療機関を受診して、医師の診察を受けることが大切です。
おりもの対策|セルフケア方法
正常なおりものであっても、場合によってはわずらわしさを感じることもあるでしょう。
おりものの症状を緩和するために日頃できるセルフケアをご紹介します。
洗浄方法
性器周辺は石けんを使わずにぬるま湯で優しく洗ってください。
どうしても洗浄が必要な場合は、刺激が少なくアレルギーを起こしにくい石けん(例: グリセリン石けんやデリケートゾーン専用石けん等)を使って洗い、しっかりすすぎ、十分に乾かしましょう。
清潔を保つ
下着は1日1回清潔なものに交換しましょう。
また、入浴やシャワーで清潔を保つことが症状緩和につながります。
冷却や温坐浴
性器周辺のヒリヒリ感やかゆみには、アイスパックで冷やしたり、ぬるま湯での坐浴が効果的です。
坐浴は、浅めのお湯を張った浴槽やたらいを使い、性器と肛門周辺だけを水につける方法です。
ぬるま湯を優しくかけるだけでも症状が和らぐことがあります。
おりものにお悩みの方へ
おりものの変化は、身体が発する大切なサインです。「いつもと違う」と感じたら、それは身体からのメッセージかもしれません。
おりものの色や臭い、量の変化は、感染症やホルモンバランスの乱れ、場合によっては重大な疾患の兆候であることもあります。
気になる症状がある場合は、ぜひ婦人科など医療機関を受診してください。
適切な検査と治療を受けることで、安心して日常生活を送れるようになります。また、普段から清潔を心がけ、ストレスや生活習慣を整えることも大切です。
ひよりレディースクリニック福岡博多は、おりものの検査・治療が可能な婦人科ですので、お気軽にご相談ください。
おりもののよくあるご質問
おりものがイカ臭いのにかゆみはなしです。受診すべきですか?
はい、イカ臭い場合は細菌性腟炎の可能性があります。かゆみがない場合でも、お早めに婦人科を受診することをおすすめします。
おりものがドバッと出るのは異常ですか?
おりものが突然多量に出る場合、女性ホルモンの影響や感染症が関与している可能性があります。排卵期や黄体期には、ホルモンの作用でおりものが増えるため、「ドバッと出る」と感じることがあります。しかし、細菌性膣炎やトリコモナス感染症などの感染症が原因である場合もあるため、異常な臭いやかゆみを伴う場合は注意が必要です。不安を感じる場合は、早めに婦人科を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。
話題の「妊活おりものシート」についてどう思いますか?
妊活おりものシートのような排卵日を予測するツールは、タイミング法を通院せずに実践したい方にとって、有用なアイテムの一つです。ただし、これらのツールはあくまで目安であり、正確な排卵日時を知るためには、婦人科で超音波検査を受けることが最も確実です。通院に対する心理的・時間的なハードルがある場合は、まずこのようなツールを活用し、必要に応じて医療機関での検査を併用することをお勧めします。