「なんとなく気持ち悪い」は妊娠のサイン?妊娠超初期の症状9つを解説
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
産婦人科専門医

本記事では、産婦人科専門医の視点から、「なんとなく気持ち悪い」という感覚が妊娠のサインである可能性、そして妊娠超初期に現れる様々な症状について詳しく解説します。
生理前の体調不良との見分け方、妊娠検査薬を使用するタイミング、さらには妊娠を望む方・望まない方それぞれが取るべき行動まで、分かりやすくお伝えします。
目次
「なんとなく気持ち悪い」は妊娠のサイン?
「なんとなく気持ち悪い」は、妊娠超初期の兆候の一つかもしれません。
はっきりしない吐き気や胃のムカムカは、妊娠超初期によく見られる症状です。特に朝方や空腹時に感じやすく、いわゆる“つわり”の始まりとして現れることがあります。
これらの不調には、妊娠によって分泌が始まるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが関係しています。
hCGは、受精卵が子宮内膜に着床した後に分泌され、妊娠の維持に関わります。このホルモンが脳の嘔吐中枢を刺激したり、胃腸の動きを変化させたりすることで、吐き気や食欲不振を引き起こすと考えられています。
ただし、吐き気や胃の不快感は、妊娠以外でも起こりうる一般的な症状です。
ストレス・疲労・風邪・消化不良・乗り物酔いなど、さまざまな要因でも感じられるため、「なんとなく気持ち悪い」だけで妊娠を判断することはできません。
なお、「普段とは違う症状がいくつか重なっている」「生理予定日を過ぎている」などの場合は、妊娠検査薬の使用を検討し、婦人科を受診されることをおすすめします。
妊娠超初期とはいつのこと?
妊娠超初期とは、妊娠0週〜4週頃の時期を指すことが一般的です。
厚生労働省によると、妊娠期間を以下の3つに区分しています。
- 妊娠初期:〜13週6日
- 妊娠中期:14週0日〜27週6日
- 妊娠後期:28週0日~
「妊娠超初期」という言葉は、医学的な正式用語ではありません。
妊娠超初期とは、生理予定日あたりの、妊娠検査薬で陽性が出るかどうかというごく初期の時期を指す言葉として、一般的に使われています。
この時期は、まだ生理が遅れていないか、遅れ始めた頃です。身体に変化を感じても、妊娠とは気づきにくいことが多く、「なんとなく体調がいつもと違う」と感じる程度の方もいらっしゃいます。
妊娠超初期に体内で起きていること
妊娠超初期は、受精卵が子宮内膜に着床し、胎児の原型が作られ始める大切な時期です。
この時期、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら発育し、脳・神経・心臓・手足の芽など、主要な臓器のもととなる構造が急速に作られていきます。非常に繊細で重要な段階といえるでしょう。
また、妊娠を維持するためのホルモン(プロゲステロンやhCGなど)も急激に分泌され始め、身体にはさまざまな変化が現れ始めます。
人によってはこの時期に、
- 軽い吐き気
- 強い眠気
- 胸の張り
- 気分の浮き沈み(情緒不安定)
などを感じることがあります。
ただし、妊娠をはっきりと自覚できるのは、生理予定日を過ぎた妊娠4週〜5週頃に、妊娠検査薬で陽性反応が出たときがほとんどです。
※妊娠週数は、最後に生理が始まった日(最終月経日)を起点に「妊娠0週0日」として数えます。
そのため、実際に受精や着床が起こるのは妊娠2週〜3週頃であり、カレンダー上の週数と体内での実際の変化にはズレがある点にご注意ください。
妊娠超初期によく見られる症状一覧
妊娠超初期に現れる症状にはさまざまなものがあり、症状の現れ方や強さには大きな個人差があります。
こちらでは、妊娠超初期によく見られる代表的な症状について解説します。
吐き気・つわりのはじまり
妊娠超初期に最も多くの方が経験する症状の一つです。
「なんとなく気持ち悪い」といった軽い吐き気から始まり、進行すると嘔吐を伴うこともあります。
朝方に特に症状が強く出る「モーニングシックネス」が有名ですが、一日中続く方もいます。
食の好みや匂いの変化
今まで好きだったものが食べられなくなる、特定の匂いに敏感になる(炊飯の匂い、香水など)といった変化も多く見られます。
空腹時に気持ち悪くなることが多いですが、満腹時にも不快感を覚えることがあります。
強い眠気・だるさ・倦怠感
風邪をひいた時のような全身の倦怠感や、日中の強い眠気を感じることがあります。
これは、プロゲステロンという黄体ホルモンによる眠気作用や、胎児の成長にエネルギーが使われることが原因とされています。
普段の生活で簡単にこなせていた家事や仕事が億劫に感じられたり、少し身体を動かしただけで疲れてしまうこともよくあることです。
微熱
生理前の高温期が、生理予定日を過ぎても続くことがあります。
これは「基礎体温の高温期持続」と呼ばれ、妊娠の重要なサインの一つです。普段の平熱よりも0.3~0.5℃程度高い状態が続き、だるく感じることもあります。
「風邪かな?」と思っていても、なかなか治らない場合は、妊娠の可能性も考えられます。
胸の張り・乳首の違和感
生理前にも見られる症状ですが、妊娠の場合はより持続的で強く感じることがあります。
乳腺が発達し始めるため、胸が張って大きくなったように感じたり、下着が窮屈に感じられたりすることもあります。また、乳首が敏感になり、触れると痛みを感じたり、黒ずんでくることもあります。
着床出血
受精卵が子宮内膜に着床する際に、子宮内膜の一部が剥がれて起こる少量の出血です。
生理予定日頃に起こることが多く、生理と混同しやすいですが、生理よりも出血量が少なく、期間も1~2日で終わることがほとんどです。ただし、全ての妊婦さんに起こるわけではありません。
頻尿
妊娠初期から膀胱が子宮に圧迫されることや、血流量の増加により、尿の回数が増えることがあります。特に夜間にトイレに行く回数が増えると感じる方もいます。
おりものの変化
妊娠すると、ホルモンバランスの変化によりおりものの量が増えたり、色や粘度が変わったりすることがあります。
通常は透明~乳白色で、とろみがあることが多いです。悪臭があったり、かゆみを伴う場合は、感染症の可能性もあるため注意が必要です。
情緒不安定
ホルモンバランスの急激な変化は、精神面にも影響を及ぼします。普段よりもイライラしやすくなったり、些細なことで悲しくなったり、怒りっぽくなったりと、感情の起伏が激しくなることがあります。
わけもなく涙が出たり、不安を感じたりすることも珍しくありません。
これらの症状は、一つだけで妊娠を断定することはできませんが、複数の症状が組み合わさって現れる場合や、普段とは異なる身体の変化が続く場合は、妊娠の可能性を疑うきっかけとなります。
妊娠検査薬が反応するのはいつ?

市販の妊娠検査薬は、一般的に「生理予定日の1週間後」から使用できるとされています。
これは、妊娠が成立すると分泌されるhCGが、尿中で検出できるまでに一定の時間がかかるためです。
妊娠の成立は「受精卵が子宮内膜に着床すること」であり、この着床が完了して初めてhCGの分泌が始まります。そこから尿中で反応する濃度になるまで、数日〜1週間程度が必要とされているのです。
しかし、近年では、生理予定日当日やその数日前から使用可能な「早期妊娠検査薬」も販売されています。従来のものより感度が高く設計されており、「一日でも早く妊娠を知りたい」という方にとって便利なアイテムです。
ただし、便利さと引き換えに注意すべき点もあります。
フライング検査のリスク
市販の妊娠検査薬を、生理予定日よりも早いタイミングで使用することを、一般的に「フライング検査」と呼ぶことがあります。
この時期はまだhCGの分泌量が不安定なため、妊娠していても陰性と表示されてしまう“偽陰性”になることがあります。
その結果、精神的に落ち込んでしまったり、妊娠していないと誤解して不適切な対応をしてしまう可能性もあるため、検査薬は説明書に記載された適切な時期に使用することが大切です。
化学流産のリスク
仮に早期検査で陽性が出たとしても、その後に「化学流産(化学的流産)」が起こる場合もあります。
これは、受精卵が一度は着床してhCGが分泌されたものの、非常に早い段階で妊娠が継続できなくなるケースです。
このようなごく初期の変化は、通常の生理と見分けがつかないこともあり、ご本人が妊娠していたことに気づかないまま過ぎることもあります。
正しく検査するためのポイント
- 生理予定日の1週間後以降に検査すること
- 検査薬で陽性反応が出た場合は、必ず婦人科を受診して確定診断を受けること
検査薬はあくまでも「妊娠の可能性を調べるための補助ツール」です。
妊娠の確定や、子宮外妊娠などの異常の有無を判断するためには、婦人科での診察と超音波検査が必要です。
婦人科を受診すべきタイミングとは?
妊娠検査薬で陽性反応が出たとき、あるいは妊娠の可能性を感じたとき、「いつ婦人科を受診すればいいのだろう」と迷う方も多いのではないでしょうか。
こちらでは、当院が推奨する婦人科受診のタイミングと、その目的についてご案内いたします。
妊娠検査薬で陽性反応が出た場合
生理予定日の1週間後以降に妊娠検査薬で陽性が出た場合、できるだけ早く婦人科を受診してください。
受診の目的
・妊娠検査薬はあくまで簡易検査であり、医師による診察(超音波検査など)によって妊娠を確定する必要があります。
・稀に、受精卵が子宮以外の場所(卵管など)に着床してしまう「子宮外妊娠(異所性妊娠)」が起こることがあります。子宮外妊娠は放置すると母体の命に関わる危険な状態となるため、早期の診断と治療が不可欠です。超音波検査で子宮内に胎嚢(たいのう:赤ちゃんが入る袋)が確認できるかどうかは非常に重要です。
・最終月経日と超音波検査の結果から、正確な妊娠週数を算出します。これは今後の健診スケジュールや出産予定日を決める上で基礎となります。
妊娠検査薬で陰性だった場合
妊娠検査薬で陰性が出ても、生理がこない・1か月以上無月経が続くときは、一度婦人科へご相談ください。
なお、検査薬の感度や使用時期によっては、偽陰性となっている可能性も考えられます。医師の診察や血液検査で、より確実に妊娠の有無を判断できます。
吐き気などで日常生活に支障をきたしている場合
つわりやその他の症状が日常生活に支障をきたしていると感じた場合は、無理せず産婦人科へご相談ください。
必要に応じて、つわりの症状を和らげるための生活指導や、吐き気止めなどの処方、点滴などの処置を受けられます。
妊娠初期のつわりは個人差が大きく、「これくらいで受診していいのかな」と迷う方も多いですが、無理せずご相談いただくことをおすすめします。
妊娠の継続に迷いや不安がある場合
妊娠の可能性がある中で、今後のこと(妊娠を継続するか否かなど)について、誰に相談したら良いか分からないと感じている方も、どうぞお一人で抱えこまずにご相談ください。
当院では、妊娠の継続や中断を含むさまざまなご相談に対して、中立的な立場から正確な情報をお伝えし、患者さま一人ひとりの状況にあったサポートを行っています。
いずれの場合も、自己判断で様子を見過ぎず、少しでも不安を感じたら早めに婦人科を受診することが大切です。
不安なときは婦人科へ
「なんとなく気持ち悪い」といった漠然とした吐き気は、妊娠超初期のサインの一つである可能性があります。
その他にも、だるさ・強い眠気・微熱・胸の張り・着床出血など、妊娠超初期にはさまざまな変化が現れることがあります。
ただし、こうした症状は生理前の体調の変化ともよく似ており、ご自身で妊娠かどうかを見極めるのは難しい場合が多いです。
「いつもと違う」と感じる身体の変化があったり、生理予定日を過ぎても出血がない場合は、市販の妊娠検査薬のご使用をおすすめします。
- 陽性反応が出た場合
- 陰性でも生理がこない状態が続く場合
- 吐き気や倦怠感などの症状が強く、日常生活に支障がある場合
このようなときは、迷わず婦人科を受診することが大切です。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、妊娠の確認、妊娠継続に関するご相談、中絶手術、将来に向けた避妊のご提案ができる婦人科です。
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