生理で5センチ・10センチの血の塊が出る原因と受診の目安
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
産婦人科専門医

生理中に、レバーのような血の塊が出て驚くことがあります。
血の塊は、生理の経血量や体調によっては正常な範囲内のこともありますが、大きさや頻度によっては注意が必要なサインとなることもあります。
本記事では、生理で5センチ・10センチの血の塊が出る原因、受診の目安、婦人科での検査内容について、詳しく解説します。
目次
生理で血の塊が出る原因とは

生理中に血の塊が出ることは、多くの方が経験する現象です。
一方で、繰り返し大きな血の塊が出る場合や、出血量が極端に多い場合は、過多月経や子宮筋腫などの疾患が関係している可能性があります。
血の塊の大きさや頻度は、身体の健康状態を示す重要なサインとなることもあるため、ご自身の生理の状態を知ることが大切です。「きっと大丈夫」と自己判断せず、気になる場合は婦人科への相談をおすすめします。
ここからは、血の塊の大きさごとに、その原因について詳しく解説していきます。
生理で5センチの血の塊が出る原因
生理時に5センチ程度の血の塊が出る場合は、以下のような要因が考えられます。
経血量が多い
通常、子宮内で出血すると、体内のフィブリンというタンパク質が血液を固めないように働き、経血がスムーズに排出されます。
しかし、経血量が多いとフィブリンの作用が追いつかず、血液が固まりやすくなり、レバーのような血の塊として排出されることがあります。
子宮内膜が厚い
ホルモンバランスの乱れにより、子宮内膜が通常より厚くなっていると、大きな塊となって剥がれ落ちることがあります。
特に、子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があるとホルモンの影響を受けやすく、血の塊が出やすくなることがあります。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮内にできる良性の腫瘍です。筋腫の大きさや位置によっては、子宮の収縮が妨げられたり、経血の排出がスムーズに行われなくなったりするため、子宮内に血液が滞り、レバーのような血の塊として排出されることがあります。
特に、子宮内膜に近い「粘膜下筋腫」 がある場合、過多月経を引き起こしやすく、5センチ以上の大きな血の塊が出る原因となることもあります。
子宮筋腫はセルフチェックが難しく、気づかないうちに進行することもあるため、生理の異常が3か月以上続く場合は、一度婦人科で検査を受けることをおすすめします。
生理で10センチの血の塊が出る原因
10センチ以上の大きな血の塊が毎回出る場合は、通常の生理とは異なり、以下のような異常が隠れている可能性があります。
子宮筋腫や子宮腺筋症
子宮筋腫や子宮腺筋症があると、子宮の収縮が弱まり、経血がスムーズに排出されにくくなるため、大きな血の塊ができることがあります。
特に子宮腺筋症は、子宮の内膜に似た組織が子宮の筋層に入り込んでしまう病気です。これにより、子宮が厚くなりやすく、経血量が増えたり、強い生理痛を伴ったりすることが特徴です。
流産の可能性
妊娠初期に流産が起こると、大きな血の塊や組織片が排出されることがあります。
妊娠に気づかないまま流産となり、自然に排出されることも珍しくありません。強い腹痛や大量の出血がなければ、受診せずに経過をみることも可能ですが、体調の変化には十分注意が必要です。
一方で、妊娠を確認した後に出血や血の塊が見られると、不安を感じる方も多いかと思います。
すべての出血が流産につながるわけではありません。妊娠初期には、着床時の出血やホルモンの変化による影響で出血が起こることもあります。
ただし、出血が起こった場合は、妊娠を診断した婦人科を受診し、医師の判断を仰ぐことをおすすめします。
血液凝固異常
血液凝固異常が原因で生理に影響が出ることはまれですが、通常よりも血が固まりやすくなり、大きな血の塊が出ることがあります。
フォン・ヴィレブランド病、血友病類縁疾患、白血病、血小板減少性紫斑病などの血液凝固異常を伴う疾患がある場合、生理時の経血量が異常に多くなったり、大きな血の塊が頻繁に出ることがあります。
もし出血が止まりにくい、あざができやすいなどの症状がある場合は、血液の異常が関係している可能性があるため、婦人科や血液内科の受診をおすすめします。
経血量が極端に多い
単純に経血量が極端に多い場合でも、子宮内で血液が固まりやすくなり、大きな血の塊として排出されることがあります。
特に、経血量が通常よりも明らかに多い場合は、貧血のリスクが高まる可能性があるため、放置せずに早めに婦人科を受診することをおすすめします。
経血量が増える原因はさまざまですが、過多月経やホルモンバランスの乱れ、子宮の疾患などが関係していることもあります。一度医師の診察を受けておくと安心です。
生理の血の塊で病院に行く目安
生理中に血の塊が出ることは珍しくなく、ある程度の大きさの塊が出るのは正常なこともあります。しかし、血の塊の大きさや頻度、その他の症状によっては、何らかの異常が隠れていることもあります。
ここからは「婦人科を受診すべき症状」について詳しく解説します。
1.10センチ以上の大きな血の塊が毎回出る
- 1回だけでなく、3か月以上連続して10センチ以上の血の塊が出る
- 経血量が多く、多い日用のナプキンを1時間ごとに交換する必要がある
- 血の塊が多量に出続ける
考えられる疾患
子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープ・過多月経・血液凝固異常(まれ)
10センチ以上の大きな血の塊が続いている場合は、放置せずに婦人科で適切な検査を受けることが大切です。
2.生理の出血量が極端に多い
- 多い日用の生理用品が1~2時間ごとにあふれる
- 生理期間が7日以上続き、血の塊が頻繁に出る
- 貧血症状(めまい、立ちくらみ、息切れ、倦怠感)がある
考えられる疾患
子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜症・ホルモンバランスの乱れ・血液凝固異常(まれ)
過多月経が続くと、慢性的な貧血(鉄欠乏性貧血) に陥る可能性があります。生理による生活の質(QOL)が低下している場合も、治療の対象になりますので、我慢せずにご相談ください。
3.強い腹痛や貧血症状を伴う

- 生理痛が普段よりも強く、鎮痛剤を飲んでも効かない
- 冷や汗が出るほどの激しい下腹部痛を伴う
- めまい、動悸、息切れ、倦怠感を伴う
考えられる疾患
子宮内膜症・子宮腺筋症・重度の子宮筋腫・流産の可能性
特に、貧血症状を伴う場合は注意が必要です。「立ちくらみがひどい」「動悸がする」などの症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
生理の血の塊が出るときの検査内容

婦人科では一般的に、生理の血の塊の原因を特定するために、問診や超音波検査、血液検査などを行います。ここからは、主な検査内容について解説します。
問診(生理の状態・症状を詳しく確認)
診察の前に、生理の状況や症状について、以下のように詳しくお伺いします。
- 生理の周期は安定しているか
(短すぎる・長すぎる・不規則) - 生理の出血量は多いか
(1時間ごとにナプキンを交換するレベルか) - 血の塊はどのくらいの頻度で出るか
(たまに・毎回・毎日など) - 血の塊の大きさ
(5センチ以上か、10センチを超えるか) - 生理痛の程度
(軽い・鎮痛剤で抑えられる・薬が効かないほど強い) - 貧血症状はあるか
(めまい・立ちくらみ・息切れ・倦怠感) - 妊娠の可能性はあるか
(妊娠していた場合、流産の可能性も考えられる)
内診・超音波検査(エコー検査)
内診では、子宮や卵巣の状態を直接確認し、腫れや異常がないかを診察します。
超音波検査では、子宮や卵巣の異常を詳しく調べるために、超音波検査が行われます。経腟エコーが難しい場合は、腹部エコーを使用することもあります。
- 子宮筋腫の有無
(特に粘膜下筋腫) - 子宮腺筋症
(子宮の筋層内に内膜組織が入り込む疾患) - 子宮内膜ポリープの有無
- 子宮内膜の厚み
(過多月経やホルモン異常の可能性) - 卵巣の状態
(多嚢胞性卵巣症候群や腫瘍の有無)
血液検査
血液検査では、以下の項目などを調べます。
- ヘモグロビン(Hb)の数値を測定し、鉄欠乏性貧血の有無を確認
- フェリチン(貯蔵鉄)の測定で、隠れ貧血がないか調べる
- エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量を測定し、ホルモンの乱れを確認
- プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量を測定し、排卵状態を確認
- 甲状腺ホルモン(TSH, FT4, FT3)を測り、甲状腺機能の異常の有無を確認
子宮内膜組織検査(必要な場合)
子宮内膜に異常がある場合や、子宮内膜ポリープや子宮体がんが疑われる場合に行われます。なお、子宮内膜組織検査は必要に応じて行われるため、すべての患者さまに実施するわけではありません。
生理の血の塊に関するご相談は婦人科へ
生理中に血の塊が出ることは珍しくありませんが、大きな血の塊が頻繁に出る、出血量が極端に多い、強い痛みを伴う場合は、子宮やホルモンバランスの変化が影響していることがあります。
適切な検査を受けることで原因を特定し、症状の改善につなげることができます。また、過多月経による貧血や体調不良を防ぐためにも、早めの受診が大切です。
「これくらいなら大丈夫」と無理をせず、気になる症状があれば、お早めにご相談ください。ひよりレディースクリニック福岡博多では、生理に関するお悩みに寄り添い、お一人おひとりに合った治療法をご提案いたします。
よくあるご質問
生理でレバーみたいな塊が出ます。
生理中にレバーのような血の塊が出ることは、珍しいことではありません。これは、経血の中に含まれる血液や子宮内膜の組織が固まったものです。ただし、5センチ以上の大きな血の塊が繰り返し出る場合や、生理の出血量が極端に多い、強い痛みを伴う場合は、婦人科系の病気が隠れている可能性がありますので、一度検査を受けておくと安心です。
生理中に血の塊が出るのは普通のことですか?
はい、生理中に血の塊が出ることは珍しくなく、正常な範囲で起こることも多いです。特に、経血量が多いと血液が子宮内で固まりやすくなるため、小さな血の塊が出ることはよくあります。ただし、5センチ以上の大きな血の塊が毎回出る場合は、婦人科系の疾患が関係している可能性もあります。ぜひお気軽にご相談ください。
10センチ以上の大きな血の塊が出たのですが、大丈夫ですか?
10センチ以上の大きな血の塊が出た場合は、通常の生理とは異なる可能性があるため、一度婦人科を受診することをおすすめします。考えられる原因として、子宮筋腫、子宮腺筋症、過多月経、血液凝固異常、流産などが挙げられます。特に、大量出血や強い腹痛を伴う場合は、早めの受診が大切です。貧血の症状がある場合も、放置せずにご相談ください。
生理中に血の塊が出ると妊娠しにくいですか?
生理中に血の塊が出ること自体が、直接的に不妊の原因になるわけではありません。しかし、血の塊が続く背景に婦人科系の病気がある場合、それが妊娠しにくさにつながる可能性はあります。例えば、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、ホルモンバランスの乱れなどがあると、受精卵の着床が難しくなることがあります。毎回の生理で血の塊が出る場合は、一度婦人科へご相談ください。