妊活は何から始めたらいい?男性女性の妊娠準備とは
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
産婦人科専門医

「妊活を始めたいけれど、何から始めたらいいのかわからない」
そのような方に向けて、本記事では、妊娠しやすい身体づくりや検査、生活習慣の整え方など、妊活の基本ステップをわかりやすく解説します。
目次
妊活とは?知っておきたい基本情報

妊活とは、「妊娠を望む男女が、妊娠しやすいように心と身体を整え、計画的に取り組む活動」のことです。
医学的な用語ではなく、一般の方の間で広まった造語ですが、妊娠を考えるうえで大切な考え方を表しています。
単に妊娠を“待つ”のではなく、妊娠に向けて自分たちの身体を見つめ直し、必要な準備を行うという能動的な行動が妊活の本質です。
妊娠は「女性だけの問題」ではない
妊娠は、女性の身体だけで成立するものではありません。
排卵された卵子と、男性側の精子が出会い、受精・着床することで初めて妊娠が成立します。
そのため、女性の身体の状態だけでなく、男性側の精子の質や生活習慣も大きく関わります。妊活は「男女が協力して取り組むもの」という視点がとても大切です。
ご自身の生理周期を知ることから

妊活の第一歩は、自分の身体のリズムを知ることです。
月経周期や排卵のタイミングを理解することで、妊娠の成立に関わるホルモンバランスや身体の変化を意識できるようになります。
基礎体温をつけたり、排卵検査薬やアプリを活用したりして、自分の周期を把握しておくとよいでしょう。
こうした「妊娠の仕組み」を理解したうえで、心身を妊娠しやすい状態に整えていくことが、妊活の基本です。
また、この妊活の準備期間は、自然妊娠を希望する方だけでなく、将来的に不妊治療を受ける可能性のある方にとっても重要です。
生活習慣の改善や、ブライダルチェックなどの基礎的な検査を通して自分の身体の状態を知っておくことは、治療をスムーズに進めるうえでの大切な土台となります。
焦らず、自分たちらしいペースで身体と向き合いながら、一歩ずつ進めていきましょう。
妊活はいつから始めるべき?
「妊娠したい」と思ったときが、妊活を始める最も自然なタイミングです。ただし、特に30代に入ったら、できるだけ早めに意識を向けることが大切です。
女性の身体は年齢とともに変化し、卵子の数や質は加齢によって徐々に低下していきます。
米国で行われた前向きコホート研究(Steiner & Jukic,Fertility and Sterility,2016)では、30〜44歳の女性を対象に自然妊娠までの期間を追跡した結果、35歳を過ぎるころから妊娠の成立率(fecundability)が有意に低下することが明らかになりました。
具体的には、30〜31歳の女性と比較して、
- 34〜35歳では妊娠率が約14%低下
- 36〜37歳では約19%低下
- 38〜39歳では約30%低下
- 40〜41歳では約半分(約53%低下)
- 42〜44歳では約6割(約59%低下)
という結果が示されています。
このように、35歳を超えると妊娠のしやすさは緩やかに下がり、40歳以降でその傾向がより顕著になることが科学的に確認されています。
また、卵子と同様に、男性側の精子も年齢や生活習慣の影響を受けます。
加齢によって精子の数や運動率が低下するほか、喫煙・肥満・ストレス・睡眠不足なども精子の質に悪影響を与えることが知られています。
なお、このような変化には個人差があるため、「まだ大丈夫」と自己判断せず、できるだけ早い段階でご自身の身体の状態を把握しておくことが大切です。
妊活は何から始める?基本の4ステップ
妊活を始めるときに大切なのは、「自分の身体を知ること」と「生活を整えること」です。焦らず、一つひとつのステップを確認しながら進めていきましょう。
1.生理周期・排卵日を把握する
妊娠は、女性の排卵のタイミングに合わせて性交渉を持つことで成立します。
つまり、妊活の第一歩は「妊娠の仕組みを理解し、自分の排卵日を知ること」です。
基礎体温を毎日記録することで、排卵の有無やホルモンバランスの変化を把握できます。
また、月経周期をアプリなどで管理するのもおすすめです。周期の規則性や排卵期の予測がしやすくなり、自然な形で妊娠のタイミングをとらえやすくなります。
2.ブライダルチェックを受ける
妊活の初期段階では、ご夫婦それぞれの「今の身体の状態」を知ることがとても重要です。
ブライダルチェックとは、妊娠や出産に影響を及ぼす可能性のある疾患(性感染症、子宮筋腫、子宮内膜症、ホルモン異常など)の有無を確認するための検査です。
特に女性は子宮や卵巣の健康状態、男性は精子の数や運動率などを確認することが、効率的な妊活の第一歩になります。
健康面の不安やリスクを早めに把握しておくことで、治療や生活改善をスムーズに進めることができます。
3.生活習慣を整える(睡眠・食事・ストレスケア)
質の良い卵子や精子を育てるためには、日々の生活習慣がとても大切です。
- 睡眠:良質な睡眠は、ホルモンバランスを整え、排卵や精子形成に良い影響を与えます。
- 食事:栄養バランスの取れた食生活を心がけ、ビタミン・ミネラル・たんぱく質を意識的に摂りましょう。
- ストレスケア:過度なストレスは自律神経やホルモンに影響し、排卵障害や精子の質低下につながることがあります。適度な運動やリラックスできる時間を大切にしましょう。
「健康な生活を整えること=妊娠しやすい身体づくり」です。
妊活期間は、自分の身体と丁寧に向き合う良い機会でもあります。
4.サプリ・栄養管理

日々の食事が基本ですが、妊活中には特に葉酸をはじめとする栄養素を意識して摂取することが推奨されています。
葉酸は、妊娠初期の赤ちゃんの神経管閉鎖障害の予防に関わる大切な栄養素であり、妊娠前からの摂取が勧められています。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、妊活中や妊娠を希望される方に向けて、Baby&Meシリーズの女性用・男性用マルチビタミンや、膣内フローラ・腸内環境の改善を目的としたプロバイオティクス(プロバイオティクスⅢ、ユテラ)をご紹介しています。
身体の内側から整えることが、健やかな妊娠への第一歩となります。
サプリを見る妊娠しやすい身体づくりのポイント

妊娠しやすい身体とは、血流が良く、ホルモンバランスが整っている状態を指します。
卵巣や子宮が十分に機能し、排卵・受精・着床といった妊娠の過程がスムーズに行われるためには、身体全体の循環とホルモンの調和が欠かせません。
血流を良くする
骨盤内の血流が良いと、卵巣や子宮に栄養や酸素がしっかり届き、卵子の成熟や子宮内膜の状態を良好に保つことができます。
反対に、冷えや運動不足、長時間の同じ姿勢(デスクワークなど)は血行を妨げ、妊娠に必要な臓器の働きを低下させることがあります。
身体を冷やさない工夫として、入浴で身体を温める・薄着を避ける・温かい飲み物を選ぶなど、日常の小さな習慣を見直すことも効果的です。
また、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を取り入れることで、血流改善だけでなくストレス緩和にもつながります。
基礎体温とホルモンバランス
基礎体温を毎日測定し、グラフにすると、低温期と高温期の二相に分かれることが確認できます。
この二相性が保たれていることは、排卵があり、黄体ホルモンがしっかり分泌されているサインです。
一方で、グラフが不規則だったり、高温期が短い場合には、ホルモンの分泌や排卵機能に乱れがある可能性があります。
ホルモンバランスを整えるためには、睡眠・食事・ストレス管理といった生活習慣を整えることが基本です。
特に睡眠不足や過度なストレスは、排卵や月経周期の乱れにつながることがあるため注意が必要です。
自分の身体と向き合う時間を大切に
妊娠しやすい身体をつくることは、単に「妊娠のための準備」ではなく、自分自身の健康を整えることでもあります。
焦らず、身体の変化に耳を傾けながら、日々できることから取り組むことが、結果として妊娠への近道になります。
男性の妊活準備も大切
妊娠の成立には、女性の卵子と同じように、男性の精子が欠かせません。
妊活は、女性だけが頑張るものではなく、夫婦で一緒に取り組むことで初めて実を結びやすくなります。
男性もブライダルチェックを受けるべき
妊娠を望むカップルのうち、約半数で男性側にも何らかの要因が関わっているといわれています。精子の数や運動率、形態異常率などは、健康状態や生活習慣の影響を強く受けます。
そのため、女性の検査と並行して、男性も精液検査を含むブライダルチェックを受けることをおすすめします。
精子の質と生活習慣の関係
精子は約70〜80日かけて新しく作られるといわれており、日々の生活習慣がその質に直接影響します。
つまり、今日からの行動が2〜3か月後の精子の状態に反映されるということです。
禁煙・節酒
喫煙は精子のDNAを傷つけ、運動率や数の低下を招くことが報告されています。飲酒も過度になると同様に影響します。
熱を避ける
精巣は体温よりやや低い温度で正常に機能します。長時間のサウナや熱いお風呂、ノートパソコンを膝上で使用する習慣は避けましょう。
栄養と運動
抗酸化作用のあるビタミンC・E、亜鉛、コエンザイムQ10などを含む食事を心がけ、軽い運動で血流を促すことも有効です。
夫婦で取り組むことが妊娠率を高める
妊娠は、女性の努力だけで成り立つものではありません。
お互いの身体を理解し、協力しながら生活を整えることが、結果的に最も効率的で前向きな妊活につながります。
パートナーとの対話を大切にしながら、一緒に健康な身体づくりを進めていきましょう。
妊活を始めてから妊娠までの目安
妊娠は、人によってスピードや経過が大きく異なります。焦らず、自分たちのペースで取り組むことが何より大切です。
平均的な妊娠の期間とデータ
一般的に、健康な男女が避妊をせずに性交渉を持った場合、1年以内に約80%、2年以内に約90%の方が妊娠に至るといわれています。
ただし、これはあくまで「平均的な目安」であり、年齢・生活習慣・健康状態などによって個人差があります。
女性は加齢とともに卵子の質が徐々に低下し、35歳を超えると妊娠率は下がり、流産率が上がることが報告されています。
一方で、20代や30代前半であっても、月経や子宮卵巣のトラブル、ホルモンバランスの乱れがある場合には、自然妊娠が難しくなるケースもあります。
妊活を考え始めたら、まずは検査を
自己流の妊活を続ける前に、まずは婦人科にて検査を受けてみてはいかがでしょうか。特に以下のような方は、早めの受診が安心です。
- 35歳以上で半年以上妊娠に至らない
- 月経周期が不規則・排卵が不明確
- 婦人科疾患(子宮筋腫、子宮内膜症など)の既往がある
- ご夫婦のどちらかに健康面で不安がある
検査によって原因やリスクを早期に把握できれば、最適な方法で妊娠に近づくための計画を立てられます。
「早く検査を受ける=焦っている」ということではなく、「自分の身体を知り、安心して妊活を進めるための準備」と言えます。
専門クリニックでのサポートも選択肢に
基礎体温や排卵日の把握、タイミング法などを行っても妊娠に至らない場合や、より早く結果を得たい方は、不妊治療専門のクリニックで相談してみましょう。
治療には、排卵をサポートするタイミング法や人工授精、体外受精など、段階的な選択肢があります。
医師と相談しながら、自分たちに合った方法で進めていくことが、妊娠への最短ルートです。
ブライダルチェックは婦人科で
ひよりレディースクリニック福岡博多では、男女ともにブライダルチェックを受けていただくことを推奨しています。
妊活にあたっては、どちらか一方だけに原因があるとは限りません。お二人が同じタイミングで検査を受けることで、現状を正確に把握でき、より効率的に妊活を進めることができます。
当院では、女性のホルモン検査や子宮・卵巣の超音波検査、性感染症検査などに加え、男性の精液検査も行っています。検査結果をもとに、医師が今後の妊活の進め方や生活習慣の見直しについて丁寧にご説明いたします。
「どこで何から始めればいいか分からない」という方も、まずはご相談ください。お二人のこれからを支える第一歩として、安心して妊活を始められるようサポートいたします。
妊活に関するよくあるご質問
タイミング法は何回目で妊娠するのが一般的ですか?
タイミング法を続けた場合、半年で約20〜30%、1年で約40〜50%の方が妊娠に至るといわれています。ただし、これはあくまで統計的な目安であり、年齢や卵巣機能、精子の状態、排卵の規則性などによって個人差が大きいのが実際です。特に、35歳を過ぎると妊娠の可能性は少しずつ下がる傾向がありますが、焦らずに取り組むことも大切です。半年〜1年を目安に結果が得られない場合は、医師と相談のうえで、人工授精や体外受精など次のステップを検討していきましょう。
妊活で一番いいタイミングはいつですか?
妊娠しやすいタイミングは、排卵日の1〜2日前に性交渉を持つことです。精子は女性の体内で約2〜3日生きるのに対し、卵子の寿命は排卵後およそ24時間以内と短いため、排卵の前に精子が体内にいる状態が理想的です。そのため、排卵日の2〜3日前から当日までの間が、最も妊娠の可能性が高まる時期といわれています。ただし、あくまで目安ですので、無理のない範囲でパートナーとリラックスして取り組むことも大切です。
生理が終わって何日目から妊活したらいいですか?
妊活を意識した性交渉は、排卵の可能性がある時期に行うことが基本です。排卵日は月経周期の長さによって異なりますが、たとえば28日周期の方であれば、生理開始日からおよそ14日後が排卵日の目安になります。ただし、個人差や月ごとの変動もあるため、あくまで目安として考えましょう。精子は女性の体内で約2〜3日生存するため、排卵日より少し早めにタイミングを取っておくことで、排卵に備えた理想的な状態をつくることができます。
30代で妊娠するには、どのくらいの期間がかかりますか?
30代前半の健康なご夫婦であれば、1年以内に約80%の方が妊娠に至るといわれています。ただし、35歳を過ぎるころから卵子の質が徐々に低下し、妊娠率はゆるやかに下がっていきます。そのため、30代後半以降で1年経っても妊娠に至らない場合や、35歳以上で半年経っても妊娠しない場合は、お早めに専門のクリニックで検査を受けることをおすすめします。検査を受けることは、いきなり不妊治療を始めるという意味ではありません。むしろ、妊娠を希望した段階でお二人の身体の状態を確認しておくことが、安心して妊活を進めるための第一歩となります。
1人目は自然妊娠で2人目を希望してますが、なかなか授かりません。
はい、1人目のお子さんを出産していても、2人目が思うように授からない「二人目不妊」というケースがあります。1人目を自然妊娠された方でも、年齢を重ねることで卵子の質が変化したり、ホルモンバランスや排卵のリズムが変わったりすることがあります。また、出産や授乳を経たことで、子宮や卵管の状態が変化している場合もあります。そのため、1年ほど妊活に取り組んでも妊娠に至らない場合は、一度婦人科で検査を受けることをおすすめします。









