マイコプラズマは性病?心当たりないのに感染のケースも
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
産婦人科専門医

本記事では、マイコプラズマ性病と肺炎の違いを整理しながら、原因や症状、感染経路、放置によるリスク、そして受診や検査のタイミングについて詳しく解説します。
目次
マイコプラズマは性病なのか?
「マイコプラズマ」と聞くと、まず「肺炎」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
実際にマイコプラズマ肺炎は広く知られており、小児から成人まで幅広い年代でみられる呼吸器感染症です。
しかし、マイコプラズマにはいくつか種類があり、「肺炎」の原因となるものと「性病」の原因となるものは全くの別物です。
一般的なマイコプラズマ肺炎はマイコプラズマ・ニューモニエという菌が原因で、咳やくしゃみによる飛沫感染で広がります。このタイプは、性病とは全く関係がありません。
一方、性行為を介して感染するタイプのマイコプラズマも存在します。代表的なのはマイコプラズマ・ホミニスや、マイコプラズマ・ジェニタリウムで、これらは性感染症(STD)の原因菌のひとつとして近年注目されています。
同じ「マイコプラズマ」という名前を持つため混同されやすいですが、感染経路も症状も大きく異なるため、正しく理解することが大切です。
マイコプラズマ肺炎と性病の違い(比較表)
| マイコプラズマ肺炎 | マイコプラズマ性病 | |
|---|---|---|
| 主な原因菌 | マイコプラズマ・ニューモニエ | マイコプラズマ・ホミニス、マイコプラズマ・ジェニタリウム |
| 感染経路 | 飛沫感染(咳やくしゃみ)、接触感染 | 粘膜感染(性行為) |
| 主な病態 | 肺炎、気管支炎など(呼吸器症状) | 尿道炎、子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患など(性器・尿路症状) |
ここからは、婦人科でよく見られるマイコプラズマ性病について、症状や原因をさらに詳しく解説していきます。
マイコプラズマ性病の症状

マイコプラズマ性病は、性器や尿路に炎症を起こす性感染症の1つです。特徴的なのは、はっきりした自覚症状が出にくい場合もあることです。
気づかないうちに感染が長引き、後に不妊症や骨盤内炎症性疾患(PID)などの合併症につながる可能性があるため注意が必要です。
女性のマイコプラズマ性病の症状
女性では、子宮頸管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)の原因となることがあります。代表的な症状は次の通りです。
- おりものの異常:量が増える、色やにおいが変化する(黄色っぽい、水っぽいなど)
- 下腹部痛:鈍い痛みや違和感が続く
- 不正出血:性交時や月経以外に出血が見られる
- 排尿時の違和感:軽い痛みや頻尿など
これらの症状はクラミジアや淋病など他の性感染症とも似ており、自己判断が難しいのが特徴です。
男性のマイコプラズマ性病の症状
男性では、主に尿道炎として現れます。
- 尿道のかゆみや不快感
- 尿道からの分泌物
- 排尿時の違和感(排尿時痛)
淋菌やクラミジアによる尿道炎と症状が似ているため、検査による区別が不可欠です。
無症状でも感染が続くケースがある
マイコプラズマ性病の厄介な点のひとつは、無症状(不顕性感染)のまま長期間感染が続くことです。
症状がないからといって放置してしまうと、女性では不妊症や慢性的な骨盤内炎症、男性では精巣上体炎など、将来の健康や妊娠にかかわる重大な問題を引き起こす可能性があります。
マイコプラズマ性病の原因と感染経路
マイコプラズマ性病は、マイコプラズマ・ホミニスやマイコプラズマ・ジェニタリウムといった特定のマイコプラズマ菌が原因となります。
感染経路は主に性行為で、膣性交だけでなくアナルセックスやオーラルセックスなど、性器や粘膜が直接触れ合う行為によって広がります。
また、直接的な性交渉をしていなくても、感染者の膣分泌液や精液などの体液が、相手の粘膜(性器、咽頭、直腸など)に接触することで感染することがあります。
「心当たりがない」のに感染するケースも
マイコプラズマ性病は多くの場合、性行為を介して感染します。
しかし、中には「パートナー以外との性行為はないのに感染していた」「最後に性行為をしたのがずっと前なのに陽性だった」といったケースもあり、患者さまから「心当たりがない」とご相談いただくことがあります。
潜伏感染や無症状パートナーからの感染
潜伏期間が長い場合:感染してもすぐには症状が出ず、数週間〜数か月経ってから発症することがあります。そのため「いつ感染したのか分からない」と感じるケースが少なくありません。
無症状パートナーからの感染:症状が出ていないパートナーが保菌していることもあり、知らないうちに感染してしまう場合もあります。
もし検査でマイコプラズマ性病が確認された場合、パートナーが無症状でも感染している可能性が高いため、同時期に検査・治療を受けることが重要です。
受診を考えるべきタイミング

マイコプラズマ性病は、症状の有無に関わらず、感染機会から24時間以上経過していれば検査が可能です。
感染していても無症状で進行することがあるため、「少しでも不安がある」と感じたら受診を検討することが大切です。
受診をおすすめするケース
- 性行為後におりものの異常、下腹部の違和感、排尿時の軽い痛みを感じた
- 「心当たりがないのに体調がすっきりしない」と思う場合
- 性交渉後から数日〜数週間以内に症状が出てきた場合
- パートナーに性感染症が見つかった、または性感染症が疑われる場合
のどの痛みや風邪に似た症状、下腹部痛や不正出血などは、他の病気の可能性も考えられるため自己判断が難しいです。
市販薬で改善しない場合は、早めに婦人科・泌尿器科などの専門医を受診してください。
マイコプラズマ性病の予防策は?
マイコプラズマ性病を完全に防ぐ方法はありませんが、感染リスクを下げるための予防策を取ることが大切です。
コンドームの正しい使用
最も基本的な予防は、性行為の際にコンドームを正しく使用することです。
膣性交だけでなく、アナルセックスやオーラルセックスの際にもコンドームを着用することが推奨されます。
コンドームを使用していても完全に防げるわけではありませんが、感染の可能性を大きく減らすことができます。
不特定多数との性交渉を避ける
複数のパートナーとの性交渉は、感染のリスクを高めます。
信頼できるパートナーとの関係を大切にし、不特定多数との性交渉を避けることも重要です。
定期的な検査を受ける
マイコプラズマ性病は無症状のまま感染が続くことがあります。
症状がなくても、性感染症のリスクがある行為をした場合は定期的に検査を受けることで、早期発見・早期治療につながります。
マイコプラズマを放置すると不妊・合併症のリスクも

マイコプラズマ性病は、自然治癒しない性感染症です。
症状が軽い、または全くない場合でも、放置すると見えないところで炎症が進行し、将来的な健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。
性行為の経験がある方は、違和感の有無にかかわらず、定期的な検査を推奨します。
女性のリスク
| 不妊症 | 慢性的な炎症により卵管が閉塞し、妊娠が難しくなる |
|---|---|
| 子宮外妊娠 | 卵管の障害によって受精卵が正しく子宮に移動できず、卵管内で着床する危険性が高まる |
| 骨盤内炎症性疾患(PID) | 炎症が子宮から卵管や卵巣に広がり、慢性的な下腹部痛や不妊につながる |
男性のリスク
| 精巣上体炎 | 精子の通り道に炎症が起き、精子の通過や質に悪影響を及ぼす |
|---|---|
| 不妊症 | 炎症が長引くことで精子の数や運動率が低下する可能性 |
マイコプラズマ性病の検査は婦人科で
ひよりレディースクリニック福岡博多は、マイコプラズマ性病の検査が可能な婦人科です。
マイコプラズマ性病の検査は、子宮頸部(子宮の入り口)の粘液や尿を採取し、原因菌の遺伝子を調べる核酸増幅検査(PCR法など)が一般的で、性器の奥に潜む菌を正確に確認するために内診台での検査が必要になることもあります。
万が一、検査で陽性と判定された場合でも、抗生物質の服用で治療が可能です。
治療中は性行為を控えることが再感染予防のために大切であり、完治を確認するために治療終了後に再検査を行うことも望まれます。
マイコプラズマ性病は自然治癒しないため、不安を感じた方はお早めに当院までご相談ください。
よくあるご質問
マイコプラズマ肺炎になったのですが、性病なのでしょうか?
いいえ、マイコプラズマ肺炎は性病ではありません。マイコプラズマ肺炎と、性感染症の原因となるマイコプラズマは、原因菌の種類も感染経路も全く異なる別の病気です。同じ「マイコプラズマ」という名前を持つために混同されやすいですが、肺炎と性病は全くの別物ですのでご安心ください。
マイコプラズマ性病は必ず症状が出ますか?
いいえ、必ず症状が出るとは限りません。特に女性では、自覚症状がほとんどない 無症状(不顕性感染) のケースが多く見られます。おりものの変化や下腹部の違和感が軽度で気づかれにくいこともあり、症状がないからといって安心はできません。少しでも不安がある場合や性感染症のリスクがある行為をした場合は、症状の有無にかかわらず検査を受けることが大切です。
パートナーが陽性の場合、私も検査を受けるべきですか?
はい、検査を受けていただくことを推奨します。マイコプラズマは性行為を通じて感染するため、パートナーが陽性だった場合には、症状の有無にかかわらずご自身も検査を受けることが大切です。もし片方だけが治療を受けても、もう一方が感染したままだと再びうつし合う「ピンポン感染」が起こり、完治が難しくなってしまいます。再感染を防ぎ、確実に治すためには、お二人での検査・治療が基本とお考えください。
マイコプラズマ性病の検査は痛いですか?
いいえ、強い痛みを伴う検査ではありません。女性の検査では、子宮の入り口(子宮頸部)を綿棒のような細い器具でやさしく拭い、粘液を採取する方法が一般的です。少しの刺激や軽い不快感を覚える方もいらっしゃいますが、検査は数十秒程度で終わり、痛みはほとんどありません。








