国際研究が示す「中絶薬の出血量・期間」
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
日本専門医機構認定産婦人科専門医
母体保護法指定医

近年、日本でも経口中絶薬が承認され、手術以外の選択肢として注目されるようになりました。
しかし、「中絶薬を使用したあとの出血はどの程度なのか」「痛みはどのくらいあるのか」といった点について、十分な情報が得られず、不安を感じている方もいらっしゃると思います。
本記事では、国際学術誌「Contraception」に掲載された研究をもとに、中絶薬に関連する出血について解説します。
あわせて、日本で行われている中絶の方法についても比較し、それぞれの特徴をわかりやすくご説明します。
※ひよりレディースクリニック福岡博多では、中絶薬のお取り扱いはございません。
目次
中絶薬の出血はどのくらい?国際研究のまとめ

まず初めに、今回ご紹介する研究の概要をお伝えします。
2026年、アメリカの Guttmacher Institute を中心とする研究グループ(University of Colorado Boulderとの共同研究)が、薬剤を用いた中絶(以下、中絶薬)後の出血に関する研究を体系的に整理した論文を発表しました。
この論文では、2000年から2025年までに世界各国で実施された111本の査読済み研究が分析されています。
対象となった研究は48カ国にわたり、アジア・ヨーロッパ・北米・アフリカ・中南米など、世界の主要地域を広くカバーしています。
研究の目的は、「中絶薬使用後の出血について、どのように体験し、どのように記録しているか」を整理し、これまでの研究の測定方法を体系的にまとめることでした。
研究者たちは、中絶薬に伴う出血について、主に次の5つの領域に注目しています。
- 出血が始まるまでの時間(time to onset)
- 出血の持続期間(duration)
- 出血量(volume)
- 出血に対する事前の期待(expectations)
- 出血の受容性・満足度(acceptability)
これらの指標を通じて、中絶薬に伴う出血の実際の経過だけでなく、研究参加者がどのようにその経験を受け止めているのかという視点からも分析が行われています。
※学術誌「Contraception」は、Elsevier社が発行する生殖医療・避妊・中絶に関する医学雑誌で、Society of Family Planning(SFP)の公式学術誌として位置づけられています。
中絶薬使用後の「出血」は正常な反応
中絶薬を使用した場合、出血は「副作用」ではなく、妊娠を終了させる過程で起こる正常な反応です。
中絶薬の作用によって子宮が収縮し、子宮内の内容物が体外へ排出される際に出血が起こります。
そのため、出血がみられること自体は、中絶の過程が進んでいることを示す自然な反応といえます。
一方で、出血がほとんどみられない場合には、中絶が完全に完了していない可能性や、子宮外妊娠などの異常妊娠が隠れている可能性もあります。
そのため、中絶薬を使用した後は、必ず医師の診察を受けて子宮の状態を確認することが重要です。
このように、出血自体は正常な反応ですが、どのくらいの量の出血が、どの程度の期間続くのかは患者さまによって大きく異なります。
この「出血の経過に大きな個人差があること」こそが、今回の研究が明らかにした重要なポイントの一つです。
出血はいつから始まるのか
本研究では、111本の研究のうち35本の研究が「出血が始まるまでの時間」を調査しています。
そのうち88.6%の研究では、出血開始までの時間を「時間単位」で測定しており、多くの研究で、ミソプロストール(2種類の中絶薬のうち2番目の薬)を服用してから数時間以内に出血が始まることが示されています。
ただし、出血が始まるタイミングには個人差があります。服用後すぐに出血が始まる方もいれば、数時間たってから始まる方もいます。
なお、研究によってデータの収集方法も異なります。
研究参加者の日記やアンケート、診察時の聞き取りなど、さまざまな方法が用いられていました。(※一部の研究では具体的な収集方法が明記されていませんでした。)
出血の持続期間
出血の「持続期間」は、111本の研究のうち89本(80.2%)で調査されており、今回分析された5つの領域の中で最も多く取り上げられているテーマでした。
これは、患者さまにとって「出血がいつまで続くのか」が大きな関心事であることを反映していると考えられます。
データの収集方法として多く用いられたのは、研究参加者自身が記録する症状日記やログカード(44.4%)でした。
これに続いて、アンケートや診察時の聞き取りによる方法が使われています。
結果の単位は「日数」で示されるものが最多(82.7%)でした。
ただし、研究ごとに測定期間の設定は異なります。例えば「2週間後のフォローアップで評価する」としながらも、実際には2週間を超えて出血が続いた研究参加者のデータが報告されている研究もありました。
このように、現時点の研究では「出血が何日続くのか」という問いに対する共通した結論は示されていません。
出血量の目安
出血量については65本(58.6%)の研究で測定が行われました。
最も多く使われた比較基準は「自分の通常の生理と比べてどうか」という主観的な評価で、23本の研究でこの方法が採用されていました。
具体的には、
- 生理より多い
- 生理と同程度
- 生理より少ない
といった段階的な評価が一般的でした。
ただし、この評価方法には限界があります。
生理の出血量は個人差が大きいため、「生理と同程度」という評価が示す実際の出血量は研究参加者によって大きく異なるためです。
また、タンポンを使用している場合は、ナプキンを使用している場合と比べて、出血量を把握しにくいという指摘もあります。
血の塊(血塊)は出るのか?
定性的な研究(研究参加者へのインタビューなど)では、血の塊や組織の排出についての記述が多く見られました。
研究参加者自身の言葉として、「小さな塊が2〜3個出た」「塊が出てきた後に出血が落ち着いた」といった体験が報告されています。
一方で、数値データを用いた研究(定量研究)で血塊の経験を測定しているものは、111本のうち4本のみでした。
血塊の大きさ・数・頻度を数値として評価した研究はほとんどなく、「どの程度であれば正常といえるのか」を客観的に示したデータは、現時点では十分に蓄積されていないのが実情です。
なお、血塊の有無や大きさは、妊娠週数、子宮の状態、薬の投与方法などによっても変わります。
出血の感じ方には個人差がある理由

国際研究の分析からは、中絶薬使用後の出血の経過には大きな個人差があることが示されています。
こちらでは、その背景として考えられる主な要因について解説します。
生理との違い
国際研究では、中絶薬による出血は、たびたび「重い生理のようなもの」と説明されます。
しかし、実際にはいくつかの点で通常の生理とは異なります。
- 出血が断続的に続き、期間が長くなる場合がある(数日〜数週間)
- 腹痛(子宮収縮)が生理痛より強く出ることがある
- 血の塊や組織が排出されることがある
- 日によって出血量の変動が大きい
また、生理の出血量が人によって大きく異なるように、中絶薬使用後の出血についても、「この量が標準」といえる明確な基準は現時点では存在していません。
妊娠週数による違い
本研究では、111本の研究のうち93.7%が妊娠初期を対象としていました。
一般的に、妊娠週数が進むほど子宮は大きくなるため、中絶薬使用後の出血量や出血期間も増える傾向があるとされています。
日本では中絶薬の適応は妊娠9週未満に限られていますが、その範囲内でも、例えば妊娠5週と9週近くでは、子宮の状態や大きさが異なります。
そのため、週数が進んでいるほど出血が多くなったり、出血期間が長くなる可能性があることを理解しておくことが大切です。
体質や子宮の状態
出血の経過には、体質や子宮の状態も影響する可能性があります。
例えば、血液の凝固に関わる体質的な要因や、子宮筋腫・子宮内膜症などの婦人科疾患の既往、過去の妊娠・出産・中絶の経験などは、出血のパターンに影響することがあります。
研究論文でも、子宮筋腫・子宮内膜症・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの疾患を持つ研究参加者は、ライフステージや健康状態によって出血の経過が異なる可能性が指摘されています。
ただし、その影響については、まだ十分な研究が蓄積されているとはいえず、今後の検討が求められています。
このように、「中絶薬使用後の出血がどのように経過するのか」を事前に正確に予測することは、現時点の医学的知見でも容易ではありません。
これは、今回の研究でも指摘されている重要な課題のひとつです。
研究から見える「不安に感じるポイント」

今回ご紹介した論文では、定性的研究(研究参加者へのインタビューや体験談の分析)を通して、中絶薬を経験された方がどのような点に不安を感じたのかも整理されています。
想像より出血が多い
複数の研究では、「出血量が想像していたより多かった」「出血の量が予想以上で不安になった」といった体験が報告されています。
出血量が予想を大きく上回ると、「これは正常なのか?」「医療機関を受診するべきなのか?」という判断を迫られることになります。
適切な判断基準を事前に知らないまま出血に直面すると、精神的にも大きな不安につながることがあります。
※日本では安全確保の観点から、中絶薬は原則として入院可能な医療機関で使用することが求められています。
これは、特に2剤目のミソプロストール服用後に起こり得る腹痛や大量出血などの副作用に、迅速に対応できる体制を整えるためです。
研究では、出血が予想より多かった研究参加者ほど「次回また中絶薬を選ぶ」と答える割合が低くなる傾向も示されています。
これは、事前にどの程度の出血が起こり得るのかを理解しておくことの重要性を示しています。
出血が長く続く
「出血が長く続いているが正常なのか」「いつ止まるのか分からない」といった疑問は、インターネット上でも多く見られます。
研究でも、出血が長く続くことへの不安が研究参加者の体験として報告されています。
出血が長く続くと、仕事・育児・学業など、日常生活への影響も大きくなります。
また、「いつ止まるのかわからない」という状況が続くことは、精神的な疲労にもつながります。
そのため、出血がどのくらい続く可能性があるのかを事前に共有しておくことは、患者さまの安心につながる重要な要素と考えられます。
本当に中絶できたのか不安
「出血が少なかったため、中絶がうまくいっていないのではないか」と心配した研究参加者の声も、複数の研究で報告されています。
一方で、出血が少なかったことで「思っていたよりも負担が少なかった」と感じ、安堵する方もいます。
このように、実際の出血量と、患者さまが事前に思い描く経過との間にはズレが生じることがあり、それが不安や誤解につながる場合があります。
また、今回の研究では、出血に関して「中絶前に期待値を確認し、中絶後に実際の体験と比較した」研究は、111本のうちわずか6本にとどまっています。
期待値全体を扱った研究は32本ありましたが、事前・事後の比較まで行ったものは少なく、インフォームドコンセントの重要性が改めて示されています。
日本の初期中絶手術の方法

ここまで、中絶薬による出血について、国際研究の結果をもとに解説してきました。
では、日本では現在どのような中絶方法が選択できるのでしょうか。
日本では、主に次の3つの方法で初期中絶が行われています。それぞれの特徴を見ていきましょう。
中絶薬(経口中絶薬)
2023年4月に日本で承認された 「メフィーゴパック」 は、ミフェプリストンとミソプロストールという2種類の薬を段階的に服用する方法です。
日本の中絶薬の対象は、妊娠9週0日(63日)未満とされています。
※ひよりレディースクリニック福岡博多では、中絶薬のお取り扱いはありません。
特徴
- 手術による器具操作が不要
- 麻酔を使用しない
- 出血や腹痛の出方に大きな個人差がある
- 出血は数日〜数週間続く可能性がある
- 薬の効果が不十分な場合、追加処置が必要になることがある
- 日本では現在、指定医療機関でのみ処方・服用が可能
費用の目安
自由診療で10〜15万円前後(施設により異なります)
吸引法(MVA・EVA)
吸引法は、細い管(カニューレ)を子宮内に挿入し、陰圧をかけて子宮内容物を吸引する方法です。
WHO(世界保健機関)が安全な中絶方法として推奨している術式であり、当院でも採用しています。
吸引法には、手動真空吸引法(MVA) と 電動真空吸引法(EVA) があり、どちらも安全性の高い方法として世界的に広く行われています。
※ひよりレディースクリニック福岡博多では、吸引法(MVA・EVA)による初期中絶手術を行っています。
特徴
- 麻酔下で処置を行うため、手術中の痛みはほとんどない
- 処置時間は10分程度と比較的短時間
- 術後の出血は、生理程度の出血が数日〜2週間前後続くことがある
- 術後の超音波検査で、処置が完了していることを医師が確認できる
- 中絶薬と比べて不完全中絶が起こる可能性は低い
自由診療で10〜15万円前後(施設により異なります)
掻爬法(ソウハ法)
掻爬法は、古くから行われてきた中絶手術の方法で、器具(キュレット)を用いて子宮内の内容物をかき出す術式です。
現在、WHO(世界保健機関)は、掻爬法よりも吸引法(MVA・EVA)を安全な方法として推奨しており、安全性や身体的負担の観点から、世界的には吸引法へ移行する流れが進んでいます。
そのため、ひよりレディースクリニック福岡博多では掻爬法を行わず、より安全性が高いとされる吸引法を採用しています。
中絶薬と中絶手術、どちらがいい?
中絶方法の選択に「絶対的に正しい答え」はありません。
大切なのは、それぞれの特徴とご自身の状況を照らし合わせ、納得できる方法を選ぶことです。
こちらでは、中絶薬と吸引法による中絶手術の特徴を整理します。
| 中絶薬(経口) | 吸引法(初期中絶手術) | |
|---|---|---|
| 対象週数 | 〜9週未満(63日) | 〜11週6日 |
| 処置中の痛み | 腹痛あり(個人差が大きい) | 麻酔下でほとんどなし |
| 出血の期間 | 数日〜数週間(個人差大) | 数日〜2週間程度 |
| 出血量の見通し | 予測が難しい | おおよその見通しを説明できる |
| 経過の不確実性 | 比較的多い | 比較的少ない |
経口中絶薬が向いている方
- 手術や麻酔に強い不安や抵抗感がある方
- 妊娠初期(特に6〜7週未満)での対応を検討している方
- 出血や腹痛に大きな個人差があることを理解し、受け入れられる方
中絶手術が向いている方
- 「出血がいつまで続くかわからない」という不確実さを避けたい方
- 仕事・育児・学業など、日常生活を長く中断しにくい環境にある方
- 早期に「処置が完了したこと」を確認したい方
- 妊娠9週以降11週6日までの初期中絶を検討している方
当院の中絶薬への見解
今回ご紹介した国際研究では、中絶薬使用後の出血は個人差が大きく、出血の開始時期・持続期間・出血量を事前に正確に予測することは難しいと報告されています。
111本の研究を分析した結果でも、研究参加者自身が参加して作成された出血評価ツールは確認されませんでした。
このことから、中絶薬後の出血体験を患者さまの視点から体系的に捉える枠組みは、世界的にもまだ発展途上であると考えられています。
「出血がいつまで続くのかわからない」
「腹痛がどの程度になるのかわからない」
このように、経過の見通しが立ちにくい状況は、精神的・身体的な負担につながる可能性があります。
一方、吸引法による中絶手術は、麻酔下で約10分程度の処置で完了します。
術後はすぐに超音波検査で状態を確認できるため、「本当に終わったのか」「この出血は大丈夫なのか」といった不安が生じにくいことが大きな特徴です。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、患者さまの心身への負担をできるだけ少なくするという観点から、WHOが推奨する吸引法(MVA)による初期中絶手術をおすすめしています。
もちろん、中絶薬について詳しく知りたい方や、どちらがご自身に合っているか相談したい方も、どうぞお気軽にご相談ください。
丁寧にお話を伺い、患者さまにとって最善の選択肢を一緒に考えてまいります。
当院の中絶について中絶後の出血で受診すべきサイン

中絶後は一定期間、出血や腹痛が続くことがあります。
しかし、次のような症状がある場合は通常の経過とは異なる可能性があります。
中絶薬・中絶手術どちらの場合でも、以下の症状がみられた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
1時間にナプキン2枚以上の大量出血
夜用ナプキン(多い日用)が1時間で2枚以上完全に染まるような出血が、2時間以上続く場合は、大量出血の可能性があります。
めまい・立ちくらみ・冷や汗などを伴う場合は、緊急性が高い状態です。速やかに医療機関を受診するか、救急受診を検討してください。
※「1時間にナプキン2枚以上」という基準は、海外の研究やガイドラインでも大量出血の目安として広く用いられている指標です。
強い腹痛
中絶後は、子宮収縮による腹痛が数日程度続くことがあります。しかし、
- 市販の鎮痛薬でコントロールできない強い腹痛
- 時間とともに悪化していく腹痛
がある場合は、医療機関での診察が必要です。
特に、出血が少ないにもかかわらず強い腹痛がある場合は、子宮外妊娠(異所性妊娠)や不完全中絶、感染症などの可能性があるため、医療機関で確認する必要があります。
発熱
中絶後の早い段階で38度以上の発熱が続く場合は、子宮内感染(子宮内膜炎など)の合併症が起きている可能性があります。
寒気・悪寒・強い倦怠感を伴う場合は、特に注意が必要です。
抗菌薬による早期治療が重要となるため、放置せず速やかに医療機関を受診してください。
受診を急ぐサイン(目安・症状)
- 大量出血:1時間にナプキン2枚以上が2時間以上続く/めまい・冷や汗
- 強い腹痛:鎮痛剤で改善しない/悪化していく腹痛
- 発熱:38度以上が続く/寒気・倦怠感を伴う
- 出血が長引く:3〜4週間以上出血が続いている
- 出血が突然増える:一度落ち着いた出血が急に増えた
終わりに
今回ご紹介した2026年の国際研究(Cartwright et al., Contraception)では、111本の研究を精査した結果として、中絶薬使用後の出血について、まだ十分に解明されていない点が多いことが示されています。
出血がいつ始まり、どの程度の量が、どのくらいの期間続くのかは、研究データが蓄積されてきた現在でも個人差が大きく、事前に正確に予測することは難しいとされています。
中絶方法を選ぶ際には、それぞれの方法の特徴や経過の違いを理解したうえで、ご自身の状況や不安の程度に合わせて検討することが大切です。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、WHOが推奨する吸引法による中絶手術を採用しています。
患者さまの状況やご希望を丁寧にお聞きしながら、納得して手術を受けていただけるようサポートしています。お一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。








