妊娠中に脇・デリケートゾーンが黒ずむのはなぜ?
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監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
日本専門医機構認定産婦人科専門医
母体保護法指定医

妊娠中にふと、「脇が黒くなってきた」「デリケートゾーンの色が濃くなった気がする」と感じたことはありませんか?
周囲には相談しづらく、一人で不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
妊娠中にみられる色素沈着の変化は、医学的にも説明できる自然な現象です。
近年ではeLife誌に掲載された研究において、女性ホルモンがメラニンをつくる細胞(メラノサイト)に作用する仕組みも明らかになってきました。
本記事では、これらの海外研究をもとに、妊娠中に脇やデリケートゾーンが黒ずむ理由と、産後のケア方法について、産婦人科専門医の視点から分かりやすくご説明いたします。
目次
妊娠中に脇・デリケートゾーンが黒ずむ理由
妊娠中に色素沈着が起こりやすくなる背景には、妊娠による女性ホルモンの変化が深く関わっています。
皮膚の色はメラノサイトが作る「メラニン」で決まる
皮膚の色は、表皮の基底層にある「メラノサイト」という細胞がつくるメラニンによって決まります。
メラノサイトが活性化すると、チロシナーゼなどの酵素が働いてメラニンが生成され、周囲の表皮細胞に受け渡されることで肌の色として見えるようになります。
日焼けによって肌が黒くなるのも、この仕組みによるものです。
本来メラニンは、紫外線から肌を守る大切な役割を担っています。
妊娠中はメラニン生成が活発になる

妊娠中は、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの環境が大きく変化します。
さらに、妊娠に伴うメラノサイト刺激ホルモン(MSH)などの内分泌の変化が加わることで、メラニンが増えやすい状態になります。
こうした変化は、早い方では妊娠初期から気づくこともあり、乳輪・デリケートゾーン・脇・お腹の中央の線(正中線)などに色の変化が現れます。
参考:American Family Physician(Common Skin Conditions During Pregnancy)
女性ホルモンとメラニンの関係
ただし「女性ホルモンがすべて同じようにメラニンを増やす」と単純に考えないことが大切です。
近年の海外研究によって、ホルモンごとに異なる作用があることが明らかになっています。
エストロゲンとプロゲステロンは逆方向に働く
eLife誌に掲載されたNataleらの研究(2016年)では、ヒトのメラノサイトに対して以下のような作用が示されました。
| エストロゲン | メラニン内のシグナル(cAMPなど)を活性化し、メラニン産生を増やす方向に働く |
|---|---|
| プロゲステロン | エストロゲンとは反対に、メラニン産生を抑える方向に働く |
つまり、これらのホルモンは同じ方向ではなく、バランスを取りながらメラニンの産生を調整していると考えられます。
この研究でさらに注目すべき点は、ホルモンの作用経路です。
従来考えられていた核内受容体ではなく、細胞膜にある受容体(膜結合型受容体)を介して作用することが示されました。
このことから、女性ホルモンは「なんとなく肌に影響する」のではなく、メラノサイトの働きを細胞レベルで精密に調整していることが明らかになっています。
ホルモンだけでなく、さまざまな要因が関係する
一方で、実際の妊娠中の黒ずみは、ホルモンだけで決まるものではありません。
妊娠中の皮膚では、以下のような複数の要因が影響します。
- 胎盤由来の因子
- 紫外線
- 摩擦(下着や衣類のこすれ)
- 体質やもともとの肌の色
そのため臨床的には、「妊娠によるホルモン変化を中心に、さまざまな要素が重なってメラニンが増えやすくなる」と理解するのが自然です。
研究で示されているメカニズムは重要ですが、それだけで妊娠中の黒ずみのすべてを説明できるわけではなく、複数の要因が重なって起こる変化として捉えることが大切です。
妊娠中の脇の黒ずみが気づかれやすい理由

妊娠中のさまざまな部位で色素沈着が進む中でも、「脇の黒ずみ」に最初に気づく方が多い傾向があります。
脇は日常生活の中で目に入りやすい
外陰部や大腿内側は、日常的にじっくり見る機会が少ない部位です。
一方で脇は、着替え・入浴・制汗剤の使用・ムダ毛のお手入れの際に自然と目に入ります。
そのため、わずかな色の変化にも気づきやすい部位といえます。
脇はもともと摩擦や刺激を受けやすい部位
脇はもともと摩擦や刺激を受けやすい部位でもあります。
- 腕の動きによるこすれ
- 下着・衣類との接触
- 自己処理による刺激
- 汗による蒸れ
こうした日常的な刺激が重なることで、色素沈着が目立ちやすくなります。
特に妊娠中はメラニンが増えやすい状態にあるため、こうした刺激によって変化がより強く現れやすくなります。
脇だけでなく、全身で起こっている変化
「脇が急に黒くなった」と感じると、その部分だけに変化が起きているように思われるかもしれません。
しかし実際には、脇だけが特別に変化しているわけではなく、妊娠中の身体全体に起こっている色の変化が、脇で先に自覚されていることも少なくありません。
そのため、脇の変化に気づいたときには、乳輪やデリケートゾーン、お腹の正中線、大腿内側などでも、同時に色素沈着が進んでいる可能性があります。
妊娠中の黒ずみは一か所だけのトラブルではなく、妊娠による全身的な皮膚の変化の一部として理解することが大切です。
妊娠で黒ずみやすい部位は脇だけではない
妊娠中の黒ずみは、脇だけに起こるわけではありません。代表的な部位として、以下が挙げられます。
妊娠中に黒ずみやすい代表的な部位
- デリケートゾーン(外陰部):下着やナプキンとの接触が多く、ホルモン変化の影響も受けやすい
- 乳輪・乳頭:妊娠・授乳への準備として変化が目立ちやすい部位
- 大腿内側:下着や衣類との摩擦を受けやすい
- お腹の中央にある線(正中線):ホルモンの影響で色が濃くなる部位
海外の皮膚科学の報告でも、乳輪や外陰部の色が濃くなることや、腹部に「正中線」と呼ばれる縦の色素線が現れることは、妊娠中によくみられる変化として示されています。
黒ずみが起こりやすい部位に共通する3つの特徴
これらの部位には、以下のような共通点があります。
- 妊娠によるホルモン変化の影響を受けやすい
- もともと色素が出やすい部位である
- 摩擦や蒸れなどの刺激を受けやすい
このように、部位ごとに理由は異なりますが、いずれも妊娠中に起こりやすい自然な変化です。
特にデリケートゾーンは見えにくく相談しづらい部位ですが、妊娠中の変化としては決して珍しいものではありません。
「自分だけではない」と知るだけでも、不安がやわらぐことがあります。
黒ずみと間違えやすい疾患にも注意
一方で、黒ずみだと思っていたものが、湿疹や感染症、炎症後色素沈着である場合もあります。
以下のような症状を伴う場合には、自己判断せず婦人科または皮膚科へご相談ください。
- かゆみや痛みがある
- ただれがある
- 異常なおりものがある
- 急に盛り上がってきた
妊娠中の黒ずみは産後に治る?
妊娠中の黒ずみは、出産後に少しずつ薄くなることが多いです。
海外の皮膚科学の報告でも、妊娠中に生じた肝斑(シミ)は多くのケースで産後に改善するとされており、また、お腹の中央に現れる線(正中線)も、出産後に徐々に薄くなることが知られています。
このように、妊娠中の色素沈着の多くは、ホルモンバランスが落ち着くことで、自然に軽快していく可能性があります。
黒ずみが長引きやすいケース
一方で、すべての方が完全に元の状態に戻るわけではありません。
黒ずみが長引きやすいのは、以下のようなケースです。
- 妊娠中に紫外線を多く浴びていた場合
- 摩擦や自己処理などの刺激が強かった場合
- もともと色素沈着しやすい体質がある場合
皮膚科学の知見では、メラニンは紫外線や可視光の影響を受けやすく、一度増えると残りやすい性質があるとされています。
そのため、顔以外の部位であっても、「メラニンが増えやすい状態」と「刺激」が重なると、色の変化が長引くことがあります。
産後すぐは焦らなくて大丈夫
また、産後すぐであっても、授乳中はホルモンバランスが完全に妊娠前の状態に戻っているわけではありません。
そのため、「なかなか戻らない」と感じても、焦る必要はありません。
数か月単位でゆっくりと変化していくことが多いため、少し時間をかけて様子を見ていくことが大切です。
黒ずみ治療の選択肢

黒ずみへの対応は、大きく分けて「日常ケア」と「医療機関での治療」に分かれます。
大切なのは「刺激を減らす日常ケア」
まず大切なのは、日常生活の中で肌への刺激を減らすことです。
脇や大腿内側、デリケートゾーンは摩擦の影響を受けやすい部位です。
そのため、以下のようなケアが推奨されます。
- 締め付けの強い下着や衣類を避ける
- 洗いすぎない・ゴシゴシこすらない
- 紫外線を避ける(日焼け止めの活用)
- 自己処理の頻度を減らし、肌に優しい方法を選ぶ
顔のシミほど意識されにくいですが、色素沈着は刺激によって悪化しやすい特徴があります。
「落とす」「削る」「白くする」といった強いケアを急ぎすぎないことが重要です。
医療機関での治療選択肢
産後に黒ずみが気になる場合に検討される、医療機関での治療選択肢は以下の通りです。
外用薬による治療
| ハイドロキノン | メラニン生成を抑える効果 |
|---|---|
| トレチノイン | 肌のターンオーバーを促進 |
| トラネキサム酸 | メラノサイトの活性化を抑制 |
医療機関での治療
- ピーリング
- レーザー治療
皮膚科学の知見では、これらの治療法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、肌質や色素沈着の深さによって適した方法が異なります。
また、妊娠中は使用を避けるべき成分も多く、授乳中も慎重な判断が必要です。
自己判断での使用は避ける
自己判断で海外製の美白クリームや強力な成分を含むスクラブなどを使用することは、肌トラブルの原因となる可能性があるため、おすすめできません。
特にデリケートゾーンは皮膚が薄く敏感なため、肌に合わない製品を使用すると、かえって色素沈着を悪化させてしまうことがあります。
妊娠中・授乳中のケアで注意すべきこと
妊娠中・授乳中は、使える薬や施術に制限が出ることがあります。
また、妊娠中の黒ずみの多くは生理的な変化であり、急いで治療しなくてもよいケースがほとんどです。
「攻めるケア」より「悪化させないケア」を
この時期は、「攻めるケア」よりも「悪化させないケア」を中心に考えることが大切です。具体的には、以下のような方法です。
- こすらない
- 刺激の少ない洗浄料を使う
- 乾燥を防ぐ
- サイズの合った下着を選ぶ
- 自己処理の刺激をできるだけ減らす
全身の紫外線対策を意識
妊娠中の色素沈着は、紫外線の影響で悪化しやすいことが知られています。
顔のシミほど意識されにくいですが、皮膚科学の報告でも、肝斑は日光によって悪化するため、広い範囲での紫外線対策が推奨されています。
脇やデリケートゾーンは直接日光を浴びにくい部位ではありますが、「全身の色素沈着が起こりやすい状態」という観点では、妊娠中の肌を守る意識は大切です。
また、お腹の中央にある線(正中線)も、露出時には紫外線の影響で色が濃くなることがあります。
刺激の強いケアは逆効果になることも
「安全そう」に見える市販のスクラブやピーリング、デリケートゾーン専用の強い美白製品も、かえって刺激となり、黒ずみを悪化させてしまうことがあります。
妊娠中・授乳中は、成分の安全性だけでなく、皮膚のバリア機能を守ることも大切です。
見た目が気になる場合でも、まずは低刺激の保湿や摩擦対策から始め、それ以上のケアについては医師にご相談いただくのが安心です。
ひよりレディースクリニック福岡博多でのケア方法
妊娠中の黒ずみは、多くの場合、出産後に少しずつ落ち着いていきます。
そのため、妊娠中は無理に治療を進めるよりも、刺激を減らしながら経過を見ていくことが基本となります。
一方で、産後も黒ずみが気になる方や、脇やデリケートゾーンの見た目に強いストレスを感じている方には、状態に応じて医療機関でのケアを検討することもひとつの選択肢です。
当院のマヌカピールについて
ひよりレディースクリニック福岡博多では、デリケートゾーンを含む肌のくすみやざらつきが気になる方に向けて、マヌカピール(ミックスピールマヌカ)をご案内しています。
マヌカピールは、乳酸・グリコール酸・サリチル酸の3種類の酸に、抗菌・抗炎症作用があるとされるマヌカハニーを配合した、低刺激設計のピーリングです。
日本人の敏感な肌質にも合わせて調整されており、刺激が少なく、ダウンタイムもほとんどありません。
マヌカピールを詳しく知る妊娠中は施術を行っておりません
ただし、妊娠中の施術は行っておりませんので、ご検討の際は産後にご相談ください。
妊娠中は、見た目の改善を急ぐよりも、安全性を優先することが大切です。
授乳中の施術可否についても、状況に応じて医師が判断いたします。
産婦人科専門医による総合的なカウンセリング
産後に黒ずみが残っている場合でも、その原因が色素沈着だけとは限りません。
摩擦や炎症、乾燥、自己処理による刺激などが影響していることもあります。
そのため当院では、「施術を行うこと」だけでなく、現在の状態を丁寧に見極めたうえで、生活上の刺激対策も含めたケア方法をご提案しています。
産婦人科専門医によるカウンセリングは、ホルモンバランス・授乳状況・今後の妊娠予定なども踏まえた総合的な判断ができる点が特徴です。
気になる場合はお一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
妊娠中に脇やデリケートゾーンが黒ずむのは異常ですか?
いいえ、多くの場合、妊娠中によくみられる生理的な変化のひとつです。乳輪やデリケートゾーン、お腹の中央にある線(正中線)なども含め、妊娠中は色の変化が起こりやすくなります。ただし、かゆみや痛み、ただれ、急に盛り上がってきた場合などは、別の皮膚トラブルの可能性もあります。気になる症状がある場合は、婦人科または皮膚科への受診をご検討ください。
妊娠中の黒ずみは産後に戻りますか?
多くの場合、産後に少しずつ薄くなっていきます。ただし、紫外線や摩擦、体質などの影響によっては、完全に元通りにならないことや、変化が長引くこともあります。焦らず、数か月単位でゆっくりと変化を見ていくことが大切です。気になる場合は、産後のタイミングで医療機関へご相談ください。
黒ずみを予防する方法はありますか?
完全に防ぐことは難しいものの、日常のケアによって悪化を防ぐことは可能です。たとえば、摩擦を減らす、乾燥を防ぐ、自己処理の刺激を減らす、紫外線対策を行うといったケアは、悪化予防に役立ちます。無理に強いケアを行うよりも、肌に負担をかけないことを意識することが大切です。
妊娠中の黒ずみはいつ頃から始まりますか?
個人差はありますが、早い方では妊娠初期(12週頃まで)から変化を感じ始めることがあります。妊娠初期はホルモンの分泌が大きく変化する時期で、早い方では乳頭や乳輪が敏感になり、「少し色が濃くなってきたかも」と感じることがあります。その後、妊娠中期以降になると、こうした変化がよりはっきりと見られるようになることが一般的です。









