避妊インプラントとミレーナはどちらを選ぶべき?
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近年、「ピルを毎日飲み続けることに負担を感じる」「妊娠を希望するタイミングまで、より確実性の高い避妊方法を知りたい」といったご相談で来院される方が少しずつ増えています。
そのような方の選択肢として注目されているのが、「長期作用型可逆的避妊法」です。
英語ではLong-Acting Reversible Contraceptionと呼ばれ、略してLARCと表記されます。
LARCとは、一度処置を受けると長期間にわたって避妊効果が続き、妊娠を希望するタイミングで中止できる避妊方法のことです。
LARCの代表的な選択肢には、「避妊インプラント」と「ミレーナ」があります。
避妊インプラントやミレーナは、毎日の服薬管理が不要で、数年間にわたって避妊効果が持続する点が特徴です。
また、将来的に妊娠を希望する場合には、医師の処置で取り外すことができ、避妊を中止した後に妊娠を目指せる方法です。
本記事では、LARCの代表的な選択肢である「避妊インプラント」と「ミレーナ」について、2025年に発表された海外のメタアナリシスをもとに、避妊効果、副作用、不正出血、処置時の痛みなどの違いをわかりやすく解説します。
どちらが適しているかは、年齢、生理に関するお悩み、今後の妊娠希望のタイミング、身体の状態などによって異なります。
避妊方法を検討する際の参考としてご覧ください。
監修者|橋田修医師
ひよりレディースクリニック福岡博多院長
日本専門医機構認定産婦人科専門医
母体保護法指定医

目次
避妊インプラントとミレーナの基本
避妊インプラントとは

避妊インプラントは、長さ約4cm・直径約2mmの細いロッドを、上腕の皮膚の下に挿入する避妊方法です。
ロッドには、エトノゲストレルという黄体ホルモンが含まれています。
このホルモンが、少量ずつ持続的に放出されることで、主に排卵を抑え、妊娠を防ぐ働きをします。
また、子宮頸管の粘液を変化させ、精子が子宮内に入りにくい状態にする作用もあります。
避妊インプラントはエストロゲンを含まないため、エストロゲンを含む低用量ピルの服用が難しい方にとって、選択肢となります。
ミレーナとは

ミレーナは、T字型の小さな器具を子宮内に留置する避妊方法です。
ミレーナには、レボノルゲストレルという黄体ホルモンが含まれています。
このホルモンが子宮内で少量ずつ放出されることで、子宮内膜を薄く保ち、妊娠しにくい状態をつくります。
また、子宮頸管の粘液を変化させ、精子が子宮内に入りにくくする働きもあります。
また、ミレーナは避妊目的だけでなく、過多月経や月経困難症の治療として使用されることもあります。
医師が治療目的で必要と判断した場合には、保険適用となるケースがあります。
避妊効果だけでなく、月経量の多さや生理痛の改善も目指したい方にとっては、有用な選択肢です。
避妊インプラントとミレーナの比較一覧表
| 避妊インプラント | ミレーナ | |
|---|---|---|
| 挿入部位 | 上腕皮下 | 子宮内 |
| 含有ホルモン | エトノゲストレル | レボノルゲストレル |
| 効果の持続 | 最長3年 | 最長5年 |
| 主作用 | 排卵抑制・頸管粘液の変化 | 子宮内膜の増殖抑制・頸管粘液の変化 |
| 保険適用 | なし | 治療目的では保険適用となる |
| 挿入時の麻酔 | 局所麻酔 | 無麻酔または静脈麻酔 |
どちらも長期間にわたって避妊効果が期待でき、毎日の服薬が不要である点が共通しています。
一方で、ホルモンが全身に作用しやすいか、子宮内で局所的に作用しやすいか、処置部位が腕か子宮か、生理症状の治療も兼ねられるか、といった点に違いがあります。
海外論文から見る、避妊インプラントとミレーナの違い
研究の概要
2025年に学術誌『Archives of Gynecology and Obstetrics』に掲載されたシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、避妊インプラントと、ミレーナなどのレボノルゲストレル子宮内システム(LNG-IUS)を直接比較した研究が解析されました。
参考:Subdermal implants vs levonorgestrel intrauterine
この研究では、6件のランダム化比較試験、合計1,503名の女性のデータが統合されています。
複数の研究をまとめて解析することで、個別の研究だけでは見えにくい全体傾向を確認できる点が特徴です。
システマティックレビューとは、関連する研究を網羅的に集め、一定の基準で評価する研究手法です。
さらにメタアナリシスでは、複数の研究結果を統計的に統合します。
そのため、単独の研究よりも、全体傾向を把握しやすい研究方法とされています。
避妊インプラントで高く報告された項目
この論文では、ミレーナなどのLNG-IUSと比較して、避妊インプラントの方が統計学的に有意に高かった項目として、以下が報告されています。
- にきび
- 体重増加
- 副作用による器具の除去
- 治療への不満足度
避妊インプラントは、上腕の皮下に挿入したロッドからホルモンが少量ずつ放出され、血流に乗って全身へ作用します。
そのため、人によっては肌の変化、体重変化、出血パターンの変化などを自覚することがあります。
特に、これまでエストロゲンを含む低用量ピルを服用していて肌の状態が安定していた方では、避妊インプラントへ切り替えた後に、にきびなどの変化を感じる可能性があります。
ただし、これは「避妊インプラントが悪い」という意味ではありません。
大切なのは、事前に起こりうる変化を理解し、ご自身にとってどの副作用がどの程度気になるかを考えたうえで、医師と相談しながら選択することです。
有意差がなかった項目
一方で、次の項目については、全体解析では両者に統計学的な有意差は認められていません。
- 不正出血
- 無月経または出血頻度の低下
- 一定期間後も継続使用している割合
- 卵巣嚢胞の新規発生
- 「満足」「非常に満足」と回答した割合
つまり、長期的に使用できる避妊方法という点では、避妊インプラントとミレーナはいずれも選択肢となり得ます。
ただし、出血パターンの変化については、どちらの方法でも起こる可能性があります。
「有意差がない」という結果は、「不正出血が起こらない」という意味ではありません。
サブグループ解析でわかったこと
この論文では、全体解析だけでなく、使用されたインプラントの種類や、婦人科疾患の有無によるサブグループ解析も行われています。
ここで特に重要なのは、古い世代の避妊インプラントと、現在代表的に使用されるエトノゲストレル製剤では、出血パターンの結果が異なる可能性がある点です。
古い世代のNorplant-2を使用した研究では、避妊インプラント群で不規則出血が増え、無月経や出血頻度の低下が少ない傾向が示されました。
一方で、現在主流のエトノゲストレル製剤を使用した研究では、ミレーナとのあいだで不正出血に明らかな差は認められていません。
そのため、「避妊インプラントは必ず不正出血が多い」と単純に考えるのは正確ではありません。
どの製剤を用いたデータなのかを分けて見る必要があります。
卵巣嚢胞について
卵巣嚢胞については、全体解析では避妊インプラントとミレーナの間に有意差は認められませんでした。
ただし、子宮内膜症や子宮腺筋症のない健康な女性に限った解析では、避妊インプラントの方が新たな卵巣嚢胞の検出が少ない可能性が示されています。
この点は、「避妊インプラントは全身性の副作用が心配」という印象だけでは捉えきれない側面です。
避妊方法を選ぶ際には、一つの副作用だけで判断するのではなく、メリット・デメリットを全体のバランスで考えることが大切です。
論文の限界
この論文は、避妊インプラントとミレーナを比較するうえで重要な研究ですが、いくつかの限界もあります。
まず、直接比較したランダム化比較試験は6件で、対象者は合計1,503名です。
重要なデータではありますが、すべての方にそのまま当てはめられるほど十分な情報とは言い切れません。
また、出血量や出血パターンを評価する方法が、すべての研究で完全に統一されていたわけではありません。
そのため、不正出血や月経量の比較には一定の限界があります。
さらに、18歳未満の方は対象に含まれていません。
若年層にそのまま当てはめることはできない点にも注意が必要です。
加えて、多くは海外で行われた研究です。
体格、生活習慣、月経や出血に対する感じ方は、国や文化によっても異なります。
そのため、海外データはあくまで判断材料の一つとして考える必要があります。
論文から読み取れること
この論文から読み取れるのは、避妊インプラントとミレーナは、どちらか一方が明確に優れているというよりも、重視するポイントによって適した方法が異なるということです。
たとえば、にきび・体重増加・副作用による抜去・治療への不満足度については、避妊インプラントの方が高い傾向が示されました。
そのため、全身性のホルモン副作用をなるべく避けたい方には、子宮内で局所的に作用するミレーナの方が向いている可能性があります。
一方で、子宮内に器具を入れることに抵抗がある方、内診への不安が強い方、腕の処置で完結する方が安心できる方にとっては、避妊インプラントの方が現実的な選択肢となることもあります。
大切なのは、論文データだけで判断するのではなく、避妊の目的・生理のお悩み・痛みへの不安・出産歴・ライフスタイルをふまえて、医師と相談しながらご自身に合った方法を選ぶことです。
論文で報告された副作用と、当院で多いご相談
今回ご紹介した論文では、避妊インプラントはミレーナと比較して、にきび、体重増加、副作用による抜去、治療への不満足度が高い傾向にあると報告されています。
一方で、当院の診療では、2026年6月時点において、にきびや体重増加でお困りになったという患者さまは多くありません。
当院で比較的ご相談をいただきやすいのは、「少量の出血が続く」「生理のタイミングが読みにくい」といった、出血パターンの変化に関するお悩みです。
研究上、避妊インプラントとミレーナの不正出血には、明らかな差がないとされています。
ただし、これは「不正出血が起こらない」という意味ではありません。
避妊インプラントでもミレーナでも、挿入後しばらくは生理のリズムや出血パターンが変化することがあります。
特に、少量の出血がだらだら続くことにストレスを感じる方にとっては、医学的に大きな問題がない場合でも、日常生活の負担になりやすいものです。
当院では、カウンセリングを大切にしています
ひよりレディースクリニック福岡博多では、処置前のカウンセリングを大切にしています。
起こりうる出血パターンの傾向、どのくらいの期間で落ち着くことが多いのか、そしてどうしても合わない場合には必要に応じて抜去できることなどを、事前に丁寧にお伝えします。
避妊インプラントやミレーナは、毎日の薬の服薬が不要で、長期間の避妊効果が期待できる有用な方法です。
だからこそ、メリットだけでなく、挿入後に起こりうる変化も事前に知っておくことが大切です。
あらかじめ「起こりうる変化」として理解しているかどうかで、処置後の不安や受け止め方は大きく変わります。
避妊インプラントとミレーナの挿入時の痛みを比較

ここからは、論文データだけではわかりにくい「処置時の痛み」についてご紹介します。
なお、痛みの感じ方には個人差があります。
こちらでお伝えする内容は、当院での診療経験に基づく一般的な傾向であり、すべての方に当てはまるものではありません。
避妊インプラントの痛み
避妊インプラントは、上腕の皮膚の下に細いロッドを挿入するため、「痛そう」「怖い」と不安に感じる方もいらっしゃいます。
処置の際には、事前に局所麻酔を行います。
痛みを感じやすいのは、最初に麻酔を行うときのチクッとした刺激です。
麻酔が効いたあとは上腕の感覚が鈍くなるため、ロッドを挿入している間は「押されている感じ」「触られている感じ」はあっても、強い痛みを感じる方は多くありません。
処置時間は比較的短く、子宮内に器具を挿入する処置とは異なり、上腕で完結する点も特徴です。
当院でも、処置前は強い不安を感じていた方が、処置後に「思っていたより痛くなかった」とお話しされることがあります。
痛みに不安がある方には、処置前に流れを丁寧にご説明し、不安をできるだけ軽減できるよう配慮しています。
ミレーナの痛み:経産婦と未経産婦で異なります
ミレーナの挿入時の痛みは、出産経験の有無によって感じ方が異なります。
出産経験のある方では、子宮頸管が一度開いた経験があるため、器具の挿入が比較的スムーズに進む傾向にあります。
そのため、「思っていたより短時間で終わった」「想像していたほどではなかった」と感じられる方もいらっしゃいます。
一方で、出産経験のない方では、子宮頸管が狭いことがあり、器具が通過する際に痛みや強い圧迫感を感じる場合があります。
特に、内診そのものに不安がある方や、過去に子宮内の処置でつらい経験をされた方にとっては、通常のミレーナ挿入が負担に感じられることもあります。
ただし、痛みの感じ方には個人差があります。出産経験がある方でも痛みを感じることはあり、反対に出産経験がない方でもスムーズに挿入できることがあります。
当院では、痛みへの不安が強い方に向けて、静脈麻酔を使用し、眠っている間にミレーナを挿入する「無痛ミレーナ」もご用意しています。
処置時の痛みが不安な方は、診察時にご相談ください。
痛みが不安な方へ「無痛ミレーナ」という選択肢
「ミレーナには興味があるけれど、痛みが怖くて踏み出せない」
そのような方に向けて、当院では静脈麻酔下でミレーナを挿入する「無痛ミレーナ」をご用意しています。
静脈麻酔を使用することで、眠っているような状態で処置を受けることができます。
処置中の緊張や痛みへの不安を軽減しやすく、通常の挿入処置に強い不安がある方に選ばれている方法です。
無痛ミレーナは、次のような方に向いています。
- 出産経験がなく、挿入時の痛みが不安な方
- 内診に強い不安がある方
- 過去に子宮内処置で強い痛みを感じたことがある方
- 痛みに敏感な方
- ミレーナを希望しているものの、挿入時の痛みが理由で迷っている方
ミレーナは、避妊だけでなく過多月経や月経困難症の改善も期待できる方法です。
痛みの不安で諦めてしまう前に、麻酔を使った選択肢があることも知っていただければと思います。
静脈麻酔を使用する際の安全管理
静脈麻酔は、適切な管理のもとで行うことが大切です。
当院では、処置中に血圧、脈拍、酸素飽和度などを確認しながら、安全に配慮して処置を行います。
処置後は麻酔から十分に覚醒し、状態が安定していることを確認したうえでご帰宅いただきます。
なお、静脈麻酔を使用した当日は、車や自転車の運転を控えていただく必要があります。
その他の注意点についても、事前に詳しくご説明いたします。
どちらを選べばよいか迷う方へ
避妊インプラントとミレーナは、どちらも長期間にわたって避妊効果が期待できる方法です。
どちらが一方的に優れているというよりも、何を重視したいかによって、適した方法が変わると考えることが大切です。
避妊インプラントが向いている方
避妊インプラントは、次のような方に選ばれています。
- 子宮内に器具を入れることに抵抗がある方
- 腕の処置で完結する方が安心できる方
- 内診や子宮内処置への不安が強い方
- 毎日のピル服用が負担な方
- エストロゲンを含む薬剤を避けたい方
- 避妊を主な目的としている方
避妊インプラントは、上腕の皮下にロッドを挿入するため、子宮内に器具を入れる必要がありません。
そのため、内診や子宮内処置に強い不安がある方にとっては、検討しやすい避妊方法です。
ミレーナが向いている方
ミレーナは、次のような方に向いている可能性があります。
- 過多月経や月経困難症の改善も希望している方
- 全身性のホルモン副作用をなるべく避けたい方
- より長期間の避妊効果を希望している方
- 出産経験があり、挿入時の負担が比較的少ないと考えられる方
- 静脈麻酔を使用して、寝ている間に処置を受けたい方
ミレーナは子宮内で主に作用するため、全身性のホルモン副作用をなるべく抑えたい方に選ばれる傾向にあります。
また、避妊だけでなく、過多月経や月経困難症の改善も期待できる点が大きな特徴です。
一方で、子宮内に器具を留置するため、内診や挿入時の痛みに不安を感じる方もいらっしゃいます。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、患者さまのお悩みやご希望を丁寧に伺いながら、お一人おひとりに合った避妊方法をご提案いたします。
避妊インプラントやミレーナについて気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
避妊インプラントとミレーナは、何年避妊効果が続きますか?
避妊インプラントは約3年間、ミレーナは約5年間、効果が持続します。どちらも長期間にわたって避妊効果が続く方法ですが、将来的に妊娠を希望する場合には、医師の処置で取り外すことができます。妊娠を希望する時期やライフプランに合わせて、適した方法を検討しましょう。
不正出血が起こりやすいのはどちらですか?
避妊インプラントもミレーナも、使用開始後しばらくは不正出血が起こることがあります。避妊インプラントでは、「少量の出血が続く」「生理のタイミングが読みにくい」といった出血パターンの変化がみられることがあります。一方、ミレーナでも挿入後しばらくは不正出血が続くことがありますが、時間の経過とともに月経量が減る方もいらっしゃいます。どちらが合うかは、現在の月経量、生理痛の有無、出血に対する不安、今後の妊娠希望などによって異なります。出血パターンの変化について事前に理解したうえで、医師と相談しながら選ぶことが大切です。










