ビタミンD不足は妊活に影響する?
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監修者|橋田修医師
本記事は、ひよりレディースクリニック福岡博多の院長で、日本専門医機構認定産婦人科専門医・母体保護法指定医の橋田修医師が監修しています。(2026年8月時点)

目次
はじめに
患者さまより、「妊活中はビタミンDを摂ったほうが良いですか?」とご質問いただくことがあります。
海外の論文において、「ビタミンDが不足している女性は妊娠率や出生率が低い傾向にある」という報告がある一方で、ビタミンDを補充しても妊娠・出産の成績に明確な改善はみられなかったとする研究も存在します。
そのため、ビタミンDの補充=妊娠率の向上につながるかどうかは、現時点で明確な結論が得られていません。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、まずはブライダルチェックや、ビタミン検査を受けて、ご自身の身体の状態を知ることが大切だと考えています。
ビタミンDは「骨」だけの栄養素ではない
ビタミンDというと、「骨を丈夫にする栄養素」というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。
たしかに、ビタミンDには腸管からのカルシウム吸収を助け、骨の形成や維持に関わる大切な働きがあります。
ビタミンDが著しく不足すると、カルシウムを十分に吸収できなくなり、骨軟化症や骨密度の低下など、骨の健康に影響を及ぼす可能性があります。
しかし、ビタミンDの働きは骨だけに限られません。
ビタミンDは、ビタミンD受容体(VDR)と結合して遺伝子の働きを調節するなど、ホルモンに近い性質を持っています。
このビタミンD受容体は、卵巣や子宮内膜、胎盤など、生殖や妊娠に関わる組織にも存在することが報告されています。
そのため、ビタミンDが卵巣機能や子宮内膜の状態、胚の着床、妊娠の維持などに関係している可能性が考えられ、研究が進められています。
ただし、これらの組織にビタミンD受容体が存在することと、サプリメントでビタミンDを補充すれば妊娠率が上がることは、同じではありません。
生物学的に関係している可能性があっても、実際の妊娠率や出生率にどの程度影響するのかについては、別に検証する必要があります。
妊活の分野でビタミンDが注目される理由
妊活の分野でビタミンDが注目されている背景には、ビタミンDが不足している女性では、妊娠に関する一部の指標や不妊治療の成績が低い傾向にあるという研究報告が積み重なってきたことがあります。
具体的には、次のようなテーマについて研究が行われています。
- 自然妊娠のしやすさ
- 排卵や月経周期
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 体外受精や胚移植の成績
- 子宮内膜の状態
- 妊娠後の流産リスク
ただし、ここで区別して考える必要があるのが、「関連」と「因果関係」です。
たとえば、ビタミンDが低い方では、肥満、運動不足、食生活の偏り、日光を浴びる機会の少なさ、基礎疾患など、妊孕性にも影響しうる別の要因が重なっている可能性があります。
そのため、ビタミンDの値が低い女性で妊娠率が低かったとしても、「ビタミンD不足そのものが妊娠率を低下させた」とは限りません。
ビタミンDの補充によって妊娠率や出生率が改善するのかを明らかにするためには、ビタミンDを補充する群と補充しない群を比較する、質の高いランダム化比較試験を積み重ねていく必要があります。
【研究解説】ビタミンDと妊娠・妊孕性に関する研究

ここからは、ビタミンDと妊娠・妊孕性について、近年報告されている研究をテーマごとにご紹介します。
研究結果をすべての方にそのまま当てはめることはできませんが、現時点でわかっていることと、まだ明らかになっていないことを整理するための参考としてご覧ください。
体外受精・胚移植とビタミンD
体外受精や顕微授精などの生殖補助医療を受ける女性を対象に、ビタミンDと治療成績との関連を調べた研究が数多く行われています。
2018年に発表された系統的レビューとメタ分析では、ビタミンDが充足している女性は、欠乏または不足している女性と比べて、体外受精後の生児出産率や臨床妊娠率が高い傾向にあると報告されました。
ただし、この研究結果には、年齢、体格、生活習慣、不妊の原因など、ビタミンD以外の要因が影響している可能性があります。
そのため、ビタミンDを補充すれば体外受精の成功率が高まることを直接証明したものではありません。
2025年に発表された論文では、凍結胚移植を受ける女性について、ビタミンDが不足していたため治療開始時に補充したグループと、もともとビタミンDが充足しており補充しなかったグループが比較されました。
その結果、継続妊娠率を含む妊娠・出産成績に明らかな差は認められませんでした。
これらの研究から、ビタミンDが充足している女性では良好な治療成績がみられる可能性がある一方、ビタミンDをサプリメントで補充することによって、体外受精や胚移植の成績が改善するとは、現時点では断定できません。
排卵・月経周期とビタミンD
生理不順や排卵障害がみられやすい多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とビタミンDとの関係についても研究が行われています。
2023年に発表された系統的レビュー・メタ解析では、PCOSの女性にビタミンDを補充したところ、補充しなかったグループと比べて、排卵率や妊娠率が高くなり、テストステロンやLHなどの値が低下したと報告されました。
一方で、ビタミンDの投与量や投与期間、併用していた治療、もともとの血中ビタミンD濃度などは、研究ごとに異なります。
結果のばらつきもみられたことから、ビタミンDの効果を明確に判断するためには、さらに質の高い研究が必要とされています。
PCOSでは、排卵障害だけでなく、体重、インスリン抵抗性、男性ホルモン、生活習慣など、複数の要因を総合的に確認することが大切です。
なお、ビタミンDは、PCOSの治療に代わるものではありません。
ビタミンDが不足している場合に、栄養状態を整えるための一つの選択肢として考える必要があります。
くり返す流産とビタミンD
妊娠後の流産とビタミンDとの関係について、気になっている方もいらっしゃると思います。
2022年に発表された系統的レビューとメタ分析では、ビタミンDが欠乏している女性は、ビタミンDが充足している女性と比べて、流産のリスクが高い傾向にあると報告されました。
ただし、この結果だけで「ビタミンD不足が流産を引き起こした」と判断することはできません。
2024年に発表されたメンデルランダム化解析では、遺伝情報を用いてビタミンD濃度と流産との因果関係が検討されました。
その結果、血中ビタミンD濃度の低下やビタミンD欠乏が、流産のリスクを直接高めることを示す明確な証拠は得られませんでした。
流産、とくに妊娠初期の流産には、受精卵の染色体異常をはじめ、子宮の形態、内分泌、免疫、血液凝固、年齢など、さまざまな要因が関係します。
ビタミンDの値が低かったとしても、ご自身の食生活や過ごし方を責める必要はありません。
また、流産を経験された方に対して、「ビタミンDを摂っていなかったことが原因」と、一つの要因だけに結びつけることも適切ではありません。
研究からわかること、まだわからないこと
これまでの研究では、ビタミンDと妊娠・妊孕性との間に、一定の関連が報告されています。
とくに、ビタミンDが不足している女性やPCOSの女性では、ビタミンDの補充によって、一部のホルモン値や排卵率、妊娠率などが改善する可能性が示されています。
一方で、体外受精や凍結胚移植を受けるすべての方にビタミンDを補充すれば、妊娠率や生児出産率が高まるとは証明されていません。
また、ビタミンDの補充によって流産を予防できるかどうかについても、現時点では明らかになっていません。
そのため、ビタミンDを妊活の「特効薬」のように捉えることは適切ではありません。
大切なのは、自己判断でサプリメントを摂取するのではなく、まずは検査によってビタミンDが不足しているかどうかを確認することです。
そのうえで、不足が認められた場合には、食事や生活習慣、サプリメントなどから、患者さまの状態に合った方法で適切に補うことが大切です。
まずはご自身の状態を知ることから
ここまでお読みいただいた方の中には、「自分のビタミンDは足りているのだろうか」と気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
妊活中は、食事や栄養、サプリメントに関するさまざまな情報を目にする機会があります。
中には、「このサプリメントを飲めば妊娠しやすくなる」といった、強い表現で紹介されているものもあります。
しかし、必要な栄養素や適切な摂取量は、すべての方で同じではありません。
まずは検査によって現在の状態を確認し、その結果に応じて必要な対策を考えることが大切です。
当院のビタミン検査でわかること
ひよりレディースクリニック福岡博多では、ブライダルチェックのオプションとして「ビタミン検査」をご用意しています。
当院のビタミン検査では、採血によって次の2項目を測定します。
- 血中25(OH)D濃度
- ホモシステイン濃度
これから妊活を始める方はもちろん、食事や生活習慣、現在使用しているサプリメントを見直したい方にも、ご検討いただける検査です。
ビタミン検査の流れ
ビタミン検査は、採血によって行います。
検査の結果、ビタミンDの不足や欠乏が認められた場合には、食事や生活習慣の見直しに加え、必要に応じてサプリメントの活用をご提案します。
ホモシステインの値が高い場合には、葉酸やビタミンB群の摂取状況を確認するとともに、必要に応じて数値が高くなっている背景についても検討します。
測定した項目に問題がなければ、ビタミンDやホモシステインについて、現時点で大きな問題がないと確認できます。
心配していた項目に問題がないとわかることも、検査を受けるメリットの一つです。
ビタミン検査の費用
| ビタミン検査 | 6,600円(税込) |
|---|
※別途、診察料として初診時は2,200円(税込)、再診時は1,100円(税込)がかかります。
通常ブライダルチェックのオプションとしてご用意している検査ですが、ビタミン検査のみでもお受けいただけます。
ビタミンD不足が見つかった場合の対策

検査によってビタミンDの不足や欠乏が確認された場合には、食事や生活習慣を見直し、必要に応じてサプリメントを活用します。
大切なのは、患者さまの検査結果や生活状況に合わせて、無理なく続けられる方法を選ぶことです。
食事からビタミンDを補う
ビタミンDの不足が見つかった場合には、まず毎日の食事を振り返ってみましょう。
食品に含まれるビタミンDには、主に次の2種類があります。
- きくらげ、干ししいたけなどのきのこ類に含まれるビタミンD2
- 鮭、サンマ、サバ、イワシなどの魚類や卵に含まれるビタミンD3
どちらもビタミンDを補うために役立ちますが、特定の食品だけを大量に食べるのではなく、さまざまな食品を日々の食事に取り入れることが大切です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人におけるビタミンDの目安量は、男女ともに1日9.0μgとされています。
妊婦・授乳婦についても、非妊娠時と同じ目安量が示されています。
ビタミンDは、油に溶けやすい脂溶性ビタミンです。脂質を含む食事と一緒に摂ることで、吸収されやすくなります。
魚を主菜にする、きのこを炒め物や汁物に加えるなど、無理なく続けられる方法を取り入れてみましょう。
また、ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける働きがあります。
乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜など、カルシウムを含む食品もバランスよく取り入れることが大切です。
適度な日光を生活に取り入れる
ビタミンDは、食事から摂取するだけでなく、紫外線を受けることで皮膚でもつくられます。
ただし、ビタミンDの生成に必要な日照時間は、季節、地域、時刻、天候、肌の色、服装、年齢などによって大きく異なります。
そのため、「毎日何分間、日光を浴びればよい」と一律に示すことはできません。
また、紫外線を過度に浴びると、日焼けや皮膚への負担につながります。
ビタミンDをつくるために長時間の日光浴をしたり、無理に日焼けをしたりする必要はありません。
外出や散歩などを通じて、日常生活のなかで無理のない範囲で日光を浴びる機会をつくり、食事や必要に応じたサプリメントと組み合わせて補うことが大切です。
サプリメントで補うという選択肢

食事や生活習慣の見直しだけでは、ビタミンDを十分に補うことが難しい場合があります。
そのような場合には、サプリメントも選択肢の一つです。
ビタミンDのサプリメントは、日々の食事で不足しやすいビタミンDを補い、カルシウムの吸収や骨の形成を支えるために活用されます。
当院では、妊娠を考えている方へ、ベイビー&ミーのビタミンDサプリメントをご案内しています。
ただし、サプリメントは「飲めば妊娠できる」というものではありません。
検査結果を確認し、患者さまの状態に合わせて適切に取り入れることが大切です。
すでにマルチビタミンや葉酸サプリメントなどを使用している場合には、ビタミンDが含まれていることがあります。
複数の製品を併用するときは、成分が重複していないか、それぞれに含まれる量を確認しましょう。
また、ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、過剰に摂取すると身体に蓄積します。
腎臓の病気、カルシウム代謝の異常、尿路結石の既往がある方や、治療薬を服用している患者さまは、自己判断で高用量のサプリメントを使用せず、事前に医師へご相談ください。
ビタミンDサプリメントの詳細妊活を始める方はブライダルチェックもご検討ください
ビタミンDやホモシステインは、妊娠前に確認しておきたい身体の状態の一部です。
妊娠の成立や妊娠中の健康には、栄養状態だけでなく、子宮や卵巣の状態、感染症の有無、子宮頸がん検診の受診状況など、さまざまな要素が関係します。
ひよりレディースクリニック福岡博多では、妊活を始められる方や、将来の妊娠を考えている患者さまを対象に、ブライダルチェックを行っています。
ブライダルチェックにビタミン検査を追加することで、婦人科に関する検査とあわせて、ビタミンDやホモシステインの状態も確認できます。
妊娠に向けて、現在の身体の状態を幅広く把握したい方に選ばれているオプション検査の一つです。
「すぐに妊娠を希望しているわけではないけれど、将来に備えて身体の状態を知っておきたい」という方も、ぜひお気軽にご相談ください。
検査を受けたからといって、妊娠を急ぐ必要はありません。
現在の身体の状態を知り、ご自身のタイミングで今後の妊娠やライフプランについて考えるために、ブライダルチェックをご活用ください。
よくあるご質問
ビタミンDが不足していると不妊になりますか?
ビタミンD不足と妊孕性との関連を示した研究はありますが、ビタミンDが不足していることだけで不妊になるとは証明されていません。妊娠には、年齢、排卵、卵管や子宮の状態、卵巣予備能、精子の状態など、さまざまな要因が関係します。そのため、検査でビタミンDの値が低かった場合も、それだけを不妊の原因と判断することはできません。
ビタミンDのサプリを飲むと妊娠しやすくなりますか?
ビタミンDが不足している女性や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性では、ビタミンDの補充によって、排卵率や妊娠率などが改善したという報告があります。一方で、体外受精や凍結胚移植を受ける女性を対象とした研究では、ビタミンDを補充しても、妊娠率や生児出産率に明確な改善がみられなかったという報告もあります。そのため、ビタミンDのサプリメントを、妊娠しやすくするための治療薬として考えることはできません。検査によって不足が確認された場合に、栄養状態を整える目的で適切に取り入れることが大切です。
検査を受けずにサプリメントを飲んでもよいですか?
製品に記載された摂取量を守って使用することはできます。ただし、すでにマルチビタミンや葉酸サプリメントなどを使用している場合は、ビタミンDの成分が重複している可能性があります。とくに、高用量のサプリメントを使用する場合や、持病・服用中のお薬がある場合は、事前に医師へご相談いただくことをおすすめします。
他院で不妊治療中でも検査できますか?
不妊治療中の方も、当院でビタミン検査をお受けいただくことは可能です。ただし、現在通院している医療機関で、すでに同様の検査を受けている場合があります。検査の重複を避けるため、まずは通院中の医療機関へ、これまでの検査内容をご確認いただくことをおすすめします。当院を受診される際は、これまでの検査結果や、現在使用しているサプリメントの種類・含有量がわかるものをお持ちください。
ビタミン検査だけを受けられますか?
はい、ビタミン検査のみでもお受けいただけます。ビタミン検査はブライダルチェックのオプションとしてご用意していますが、単独での検査も可能です。費用は6,600円(税込)で、別途、診察料として初診時は2,200円(税込)、再診時は1,100円(税込)がかかります。












