中絶手術は安全な医療なのか|2025年の海外論説を解説
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監修者|橋田修医師
本記事は、ひよりレディースクリニック福岡博多の院長で、日本専門医機構認定産婦人科専門医・母体保護法指定医の橋田修医師が監修しています。(2026年8月時点)

本記事では、2025年に発表された論説をもとに、中絶手術の安全性について解説します。
また、ひよりレディースクリニック福岡博多で採用している中絶手術の方法や、平均手術時間、安全性を左右する要素についても、産婦人科専門医の立場から、わかりやすくお伝えします。
目次
中絶手術の安全性に関する海外論文を解説
今回解説する文献は「論説(Editorial)」
今回ご紹介するのは、2025年5月24日に産婦人科領域の国際学術誌「Archives of Gynecology and Obstetrics」でオンライン公開された、 「Advancing knowledge and public health: a scientific exploration of abortion safety」という文献です。
この文献は、掲載誌において「論説(Editorial)」に分類されます。
新たな対象者へ調査・治療・追跡を行い、その結果を集計・解析した原著論文ではありません。
また、あらかじめ定めた方法に沿って関連論文を網羅的に収集・評価するシステマティックレビューや、複数の研究結果を統計的に統合するメタアナリシスとも異なります。
著者らが、過去に公表された研究やガイドラインを参照しながら、人工妊娠中絶の安全性について、医学的な側面だけでなく、法制度、倫理、社会、公衆衛生などの観点も含めて整理・考察した論説です。
本文の「Data availability」にも、今回の研究において新たなデータセットの作成や解析は行っていないことが記載されています。
そのため、文献内で紹介されている数値や見解を、日本国内のすべての医療機関や個々の患者さまに一律に当てはめることはできません。
一方で、人工妊娠中絶の安全性が、どのような医療環境や条件によって支えられているのかを理解するうえでは、参考になる文献といえます。
米国の研究では、妊娠初期の吸引法による重大な合併症は0.16%

今回の論説では、妊娠初期の中絶手術に用いられる吸引法について、重大な合併症の割合は0.16%、重大なものを含む合併症全体の割合は1.3%だったと紹介されています。
一方、薬剤による中絶では、重大な合併症の割合は0.31%でした。
救急外来や中絶を実施した医療機関など、すべての受診先で診断または治療された合併症を含めると、合併症全体の割合は5.2%と報告されています。
ここでいう「重大な合併症」とは、合併症への対応として、入院・追加の手術・輸血のいずれかを必要としたケースです。
論説では、適切な医療環境で行われる場合、吸引法と薬剤による中絶はいずれも安全性の高い方法であるとしたうえで、この研究では、妊娠初期の吸引法のほうが薬剤による中絶よりも合併症の割合が低かったと説明しています。
なお、これらの数値の根拠となっているのは、米国カリフォルニア州の公的医療保険制度であるMedi-Calの診療データを用いた原著研究です。
日本国内の医療機関における合併症の割合を示したものではありません。
合併症について考える際は、合併症全体の割合だけを見るのではなく、その重症度や、どのような診断・治療を必要としたのかを分けて理解することが大切です。
中絶の安全性は、方法の違いだけで決まるものではない
今回の論説で特に重要なのは、中絶の安全性は、薬剤による中絶か、手術による中絶かという方法の違いだけで決まるものではないと論じている点です。
論説では、安全な中絶医療を提供するために重要な要素として、主に次の点を挙げています。
- 中絶医療を担う医療従事者が、適切な訓練を受けていること
- 必要な薬剤や医療機器が準備されていること
- 合併症が生じた場合に、適切に対応できる体制が整っていること
- 中絶後のケアや避妊相談を含む医療体制が整っていること
- 必要な時期に、遅れることなく医療へアクセスできること
- 患者さまの意思決定とプライバシーが尊重されること
このように論説では、中絶の安全性は、処置の方法だけでなく、医療従事者の訓練や医療機関の体制、適切な時期に医療を受けられる環境など、複数の要素によって支えられると説明されています。
特に著者らは、医療従事者が必要な訓練を受けるだけでなく、継続して中絶医療に携わり、合併症が生じた場合に適切に対応できる技術と体制を維持することの重要性を指摘しています。
この考え方は、日本国内で中絶手術を受ける医療機関を選ぶ際にも参考になります。
日本では、人工妊娠中絶は、都道府県医師会が指定する「母体保護法指定医」が行うこととされています。
医療機関を検討する際は、「吸引法を採用している」「手術時間が短い」といった情報だけで判断するのではなく、母体保護法指定医が手術を担当するか、術前検査や麻酔について十分な説明があるか、手術後の相談体制が整っているかなども、確認しておくと安心です。
当院の中絶手術の方法は「吸引法」

ひよりレディースクリニック福岡博多では、妊娠12週未満(妊娠11週6日まで)の初期中絶手術に、吸引法を採用しています。
吸引法には、吸引圧を手動で作るMVA(手動真空吸引法)と、電動の吸引機器を使用するEVA(電動真空吸引法)があります。
MVAとEVAは、いずれも初期中絶手術に用いられる方法です。
安全性や有効性について、どちらか一方がすべての面で優れているというものではなく、それぞれに異なる特徴があります。
その特徴の一つとして、MVAでは、吸引に使用する器具を単回使用(ディスポーザブル)でそろえることができ、患者さまごとに新しい器具を使用して手術を行います。
当院では、こうした衛生面の特徴を含め、MVAとEVAそれぞれの違いについてご説明しています。
そのうえで、現在はMVAを選択される患者さまが多くいらっしゃいます。
ただし、これはEVAの感染リスクが高いという意味ではありません。
EVAも、使用する器具の洗浄・消毒・滅菌など、適切な衛生管理のもとで行われる吸引法です。
当院では、MVAとEVAの安全性に優劣をつけるのではなく、それぞれの特徴を正しくお伝えし、患者さまにご理解いただいたうえで手術方法を選択していただくことを大切にしています。
当院の中絶手術の流れや費用、中絶方法の詳しい内容については、以下のページでご案内しています。
中絶について詳しく見るMVAとEVAの違いを詳しく見る中絶手術にかかる時間は約7分
ひよりレディースクリニック福岡博多で行う中絶手術にかかる平均時間は、約7分です。
これは、2026年7月上旬に当院で行った中絶手術について、診療録に記録された処置時間をもとに算出した院内集計です。
診察・術前処置・麻酔の準備や導入・術後の休憩を含む「院内滞在時間」ではなく、手術そのものに要した時間の平均を示しています。
実際の手術時間には個人差があります
実際の手術時間は、患者さまの状態によって異なります。
妊娠週数、子宮の向き、子宮頸管の状態、出産歴、術前処置への反応などにより、手術に必要な時間は変わります。
また、「手術時間が短いほど安全である」と単純に判断できるものではありません。
必要な確認や操作を省いて手術を急ぐことが、安全性の向上につながるわけではないためです。
当院では、手術時間の短さそのものを目標とするのではなく、必要な確認を丁寧に行いながら、患者さまの身体への負担をできる限り抑えた手術を心がけています。
ご来院から帰宅までは2時間前後が目安です
通常の中絶手術では、診察、術前準備、麻酔からの回復、手術後の状態確認などを含め、ご来院からご帰宅まで2時間前後が目安です。
即日手術の場合は、診察・検査、手術、術後の安静を含め、3時間前後を想定しております。
麻酔からの回復状況や当日の体調などによって、所要時間が前後する場合があります。
ご来院の際は、その後のご予定に余裕を持ってお越しください。
不安なことは遠慮なくご相談ください
今回ご紹介した論説では、初期の吸引法による重大な合併症率は0.16%、すべての合併症を含めた割合は1.3%と報告されています。
ただし、これは海外の集団を対象とした研究結果であり、個人の安全性を保証する数値ではありません。
中絶手術の安全性を高めるために重要なのは、次の点です。
- 妊娠の可能性がわかった段階で早めに相談すること
- 診察と検査によって妊娠週数や健康状態を確認すること
- 母体保護法指定医師が所属する医療機関を選ぶこと
- 手術方法だけでなく、麻酔管理や術後対応も確認すること
- リスクや受診の目安について説明を受けること
ひよりレディースクリニック福岡博多では、母体保護法指定医である院長が、MVAまたはEVAによる初期中絶手術を行っています。
医学的な安全性に配慮することはもちろん、患者さまのご不安や、プライバシーにも配慮しながら診療を行っております。
当院では、中絶手術を受けるか迷っている段階でもご相談いただけます。
手術を受けるように決めてからでなければ受診できない、ということはありません。
「手術はどのように行うのか」「自分の場合はどのようなリスクがあるのか」「費用や当日の流れを知りたい」など、気になることがございましたら、診察時に遠慮なくお申し出ください。
患者さまが必要な情報を得たうえで、ご自身の意思を整理できるように、丁寧にご説明いたします。










